王立魔法学園
遅くなってもうわけありません。
本当に仕事が忙しく書いている暇がありませんでした。
次回は7/24に投稿予定。
仕事の予定によっては早まるかもしれません。
王立魔法学院の学園長といえば、王国内でも指折りの魔導士で王家からの信頼が厚い人物というのが世間一般の常識である。
先代の学園長ノールソンも王国でも指折りの魔導士で王家からの信頼が厚い者だったが、先の魔王との大戦で長らく勤めていた学園長の職を退かなければならい体になってしまった。
本当なら直ぐにでも次の学園長が決まるはずだったが、大戦で多くの優秀な魔導士が失われてしまい、やっと見つけた候補者も辞退しまう有様だった。その理由は、大きく二つある。
一つ目は、優秀な先代の学園長の後がやりづらいことである。数々の優秀な魔導士を育て彼が直接指導したことがある生徒は大戦時では、その能力を遺憾なく発揮し、『ノールソンの若鷲獅子』と呼ばれ戦場で多くの功績を立てた。
そして、二つ目の理由だがこれが一番の原因だと考えられている。それは、王立魔法学院が運営不振に陥っているということだ。これも大戦の影響だが学園に回せる資金が以前のように潤沢に用意することできなくなってしまったである。優秀な魔導士を育てるには多くのお金がかかるというのに、以前より資金が削減された状況で結果を出せる自信がある者は候補者の中には存在しなかった。
そんな次期学園長選定に難航する中、ソフィーア王女殿下はある魔導士を父である国王に推薦した。
その者は王都魔法学園の卒業生というだけで強大な魔法力を使えるわけでも、特殊な魔法を使えるわけでもない、魔導士としての実績は皆無に等しい者。最初は多くのものに反対されたが、ソフィーアの説明を聞いた国王は条件付きでその人物に学園長の任を命じる結果になったのだった。
魔法学園の食堂のテラスには、お昼時とあって多くの人が席に着いていた。
普段ならここは学生や教師以外が使うことは、滅多にない食堂だが、本日はもう既に来年の入学が決まっている生徒と保護者の姿があった。
「お爺さま、やはり王立魔法学院は広いですね。午前中だけでも半分も周りきれていません」
「ああ、私が通っていたころと殆ど変わっていないよ」
「そうなのですか」
「さすが、王立魔法学園だと言うべきかな。でも、はやりここにも大戦の影響はあるようだね」
というとハロルドは食堂やテラスを見渡す。ハロルドは息子や娘がここに通っていたから、ある程度大戦が起こる前の学園の姿を知っている。
嘗ては室内の装飾は歴史と風格を感じられ、食堂には多くの若くて美しい給仕がおり、テラスから見える花壇は綺麗に手入れが施されていた。
「やはり、王家といえど懐の寂しさは他と変わらないということですか」
「そういうことだ」
ハロルドは今更驚きはしないが、この歳でのシャルロッテの聡明さに感服する。今、この場にいる貴族の子弟の中でシャルロッテと同じように考えられる者は何人いるか。
紅茶を飲みながら自分の孫の優秀さを噛みしめていると、シャルロッテが何かに気付いたように席を立ち上がった。
「いきなりどうしたんだいシャルロッテ」
「いえ、ユウキさんとアリシアさんのらしき人影が見えたものもので……」
「ユウキ君とアリシアさんが王立魔法学園に?」
ハロルドもシャルロッテの目線の先に目を向けてみるがそれらしき人影は見えなかった。
「一瞬だったので勘違いかもしれません」
「ふむ」
基本的にこの学園は関係者以外入れない。一介の冒険者がなんのコネクションなしに出入りすることは、まず無理なはずである。
ハロルドもユウキがただの一介の冒険者ではないことは薄々わかっていたが、もしここにユウキが居るならユウキは名のある貴族に何らかのコネクションがあることは確定である。あるいはもっと……
「……さま、お爺さま! 聞いてますか」
「あぁ、すまんな。聞いてなかった」
「もう、お爺さまは! 考え事をするといつ私を無視します」
「ごめんよ、昔からの癖でな。許してくれ」
少し頬を膨らませるシャルロッテが可愛くて思わず目じりが緩んでしまう。
そんな孫と爺の他愛ない話を遮るように案内役の眼鏡をかけた教授が次の場所への移動開始のアナウンスが食堂に響いた。
ハロルドはユウキのことは、一旦頭の隅に置いてシャルロッテの手を取って歩き始めた。
王立魔法学園学園長室にて。
学園長がするであろう立派な椅子には、ユウキが見知っていた学園長の姿とは違っていた。この学園の学園長といえば、大層な髭を生やし、老練な姿をした老公だった。
ユウキの目の前で椅子に座っているのは、若い女性だった。
「ようこそ、我が魔法学園にユウキ君」
切れ長の目と透き通った白い肌は気品さと理知的な雰囲気を感じる。綺麗な青味がかった髪は彼女の品格をより一層上げていた。歳はソフィーアと同じで20代半ばでこの学校内にいる大人では珍しく教師用のローブを着ていない。
「始めまして冒険者のユウキです」
「こちらこそはじめまして。さ、立ち話もなんだから座ってくれ」
言われるがまま席についたユウキの隣には、ソフィーアが座り対面には、女学園長が座った。
「改めて、私は来期からここの学園長を務めるレニエ・クラドックだ。ソフィーア殿下、彼が殿下の紹介する優秀な人材ですか?」
「そうよ。彼が私の推薦する優秀な人材」
彼女はソフィーアからそう聞くと、値踏みするようにユウキを下から上までじっくりと観察した。
そして、一通り見たあと……
「失礼ですけど、本当に大丈夫ですか?」
本人を目の前に随分歯に物を言わぬ言動、ユウキの覇気のない顔見ればそう思うのも当然といえる反応だ。
「えぇ、実力に関しては、書類で送った通りA級の冒険者で討伐経験も豊富、どこかの貴族に所属しているわけじゃないフリーの冒険者よ」
彼女は再度事前に送られた資料に目を落とす。
大抵の上位冒険者は拠点している場所の貴族と強い繋がりを持っている。だが、書類上目の前のユウキはほとんど貴族的繋がりを持っていない。
「確かに、書類上は極めて優良な人物のようです」
「それに彼は貴女がやろうとしていることに、多分役に立つでしょう」
レニエ学園長は改めてユウキを見据えると、先ほどと違いどこか面白いものを見るような目に変わりユウキに向って手を差し伸べてきた。
「先ほどは失礼しました。来期からよろしく頼むよ。ユウキ君」
「今度から自分の雇い主なるんですからユウキでいいです。あまり過度な期待はしないでもらいたいのですが」
お互いにしっかり握手を交わ終えたタイミングでアリシアが紅茶を皆の前に出した。
「とこでユウキ、今のこの魔法学園がどのような状況下わかっている?」
「自分はただの冒険者なもので王都の魔法学園の状況どうなっているかなんて知りませんよ。ソフィーア王女殿下」
親しい態度で今の学園の状況を話す王女殿下に、あくまで他人行儀で会話するユウキ。
そんな二人の会話聞いてレニエ学園長が疑問に思うことはいくつかあったのだが、過ぎた好奇心は身を滅ぼすことをよく知っているレニエは下手に詮索することはしなかった。
王女殿下自ら、今の状況を説明されたユウキは目の前の人物がどういった経緯でこの魔法学園の学園長に抜擢されたか理解した。
「だから貴女が学園長に選ばれたわけですか。さすが、ノールソンの若鷲獅子達ですね」
「ノールソンの若鷲獅子達と言われるは嬉しいかぎなのだけど、私は少し小遣い稼ぎをしていたにすぎないよ」
彼女がノールソンの若鷲獅子と説明された時点で彼女がどんな人物かユウキにはわかってしまった。
ノールソンの若鷲獅子達の中では女性は二人しかいないその中の一人はユウキの隣に座る勇者一行のメンバーでもあるソフィーア・アルダートン、あともう一人の女性は後方支援のスペシャリストと呼ばれ人脈とその交渉能力で多くの戦で必要な金、武器、人材、食料を用意し、戦線を維持に尽力した女傑。
「私が彼女を父王様に推薦したのは、彼女の運営能力の手腕をこの学園を立て直すために必要だと思ったから。それに、我が王国は大戦のせいで深刻な魔導士不足です。それを補うにはもう以前のように貴族や力ある商人の子弟だけを向かい入れて学ばせる学園ではもはや時代遅れです」
「はい、王女殿下の期待に応えられるように尽力致します」
その後、ソフィーアはレニエ学園長と学園運営に関しての半刻ほど話すとアリシアと一言二言話すと早々に学園長室から退室していった。
「貴方は相当王女殿下に気に入られているようだね」
「こちらからすると迷惑な話です」
「ハハ、王女殿下の派閥の者が聞けば即打ち首と言われてもしょうがない発言だな」
先程と違い足を組んで紅茶をすする姿のレニエ学園長の姿はユウキら地球出身の勇者がみれば仕事ができる女上司っといった具合だろう。
「さて、早速で悪いがこの後見学会で少し、君の紹介をしようと思う。厄介事はやめに片づけてしまうのが私の信条でね」
「厄介事の自覚はあったんですね」
「もちろんだ。過去にも冒険者をこの学園の教師にしたことはあるが、その者は同時に貴族位も同時に持ち合わせていた。ただのAランクの冒険者を学園の教師にした前例はない」
「そうですか、反対意見はなかったんですか」
「もちろん古臭い考えてしか持たない理事や教師共から反対意見はあった。だが、初年度の人事権は王族の名の下にすべて私にある。だから文句を言うやつらにはこう言ってやった『文句を言うようなら私の代わりに学園長になるか、今すぐ無職になるかここで決めろ』とね」
面白そうにそう語るレニエ学園長をよそにユウキは苦笑いを返すしかなかった。
学園の教師のほとんどは研究所に所属している研究員であり、彼らとて研究するテーマがある。そして、研究所から支給されているが資金が足りないのが現実だ。だから、彼らの多くは魔法学園の教師を兼任し研究のための資金稼ぎをしている。それらが無くなれば研究が進まず悪ければ研究所から追い出されることになる。
「では、そろそろ行こうか」
「…わかりました」
「私も講堂まで御供します」
颯爽と歩き出す学園長とは違い、ユウキの足取りは鉛のように重い。今から確実に起こるであろう面倒事を思うと、溜息をつかずにはいられなかった。
真っ白でまっさら空間。そこに漂うものは只の意識。
「やはり世界はまたも勇者を求めますか…」
その呟きは楽しそうであり、悲しそうであり、羨ましそうな、そんな感情が複雑絡みあうものだった。
こうして表舞台から去った元勇者は本人の希望とは沿わない形で、またしても表舞台に上がってしまった。この世界はまだ彼らの退場を許していないかのように。
今回は王立魔法学園の学園長が登場しました。
もうちょっと話しのテンポをあげれるように頑張ります。




