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現役の勇者様!

また、更新が遅くなって申し訳ありません。

 

 薄暗い部屋の中、床には人の背丈ほど積まれた本や紙の塔があり、机の上には、実験器具や高級な魔結晶マナクリスタルが無造作に散乱していた。

 そして、部屋の隅のソファーには、この世界には見慣れない白衣を着た女性が本を顔の上に乗せて気持ちよさそうに寝息をたてていた。


「えへへ~そんな食べれないって~」


 そんな意味不明な寝言を吐く彼女に近づいていく、女性もソファーに寝ている女性と同様、白衣を身に纏っていた。


「起きてください」

「起こせないで~」


 何度も呼びかけて起こそうとするが、いっこうに目覚める気配はない。

 あきらめてため息を吐くと、白衣の彼女は何やら呪文のようなものを呟き始める。


「彼の者に電撃をもたらせ――『ショックボルト』」

「ぴぎゃっ!」


 バチッという音の後に物が落ちた衝撃が床に伝わった。


「お尻が……」


 ソファーから落ちたであろう彼女はお尻をを押えながら自分が落ちた原因を作ったであろう人物を睨む。

 そして、当の本人は素知らぬ顔で睨み返している。


「魔法で起こすのはやめてってと何度も言ってる――」

「私も何度も言っています。ソファーで寝るのはやめてくださいと」

「下手して、ショック死したらどうする!?」

「教授は殺しても死なないでしょうに」


 彼女は首を左右に振り、ため息をついた後で教授という女性に手紙を見せる。


「これは?」

「教授宛に届いた王城からの手紙です」


 それを聞くと一瞬渋い顔をするがすぐに手紙に目を通したが、ずっと手紙を睨んだまま動こうとしない。


「教授……眼鏡をかけてませんよ」

「あ、ああ、そうだった。なんかぼやけて見えると思った!」


 本日二回目のため息をつくと、本の上に無造作に置かれた眼鏡を教授に手渡す。


「へぇーー」

「彼女たちが王都にへ来たようです」


 最初、王城からの手紙と聞いていい顔をしなかった彼女だったが、手紙を最後まで読むとその顔には、不気味な笑みがこぼれていた。

 その姿を見ていたいた、もう片方の女性は、本日一番深いため息をこぼさずにはいられなかった。




 昨日の夕食時の話でハロルド達は今日、学校の見学に行くため、ユウキ達の護衛としての任務はお休みということになる。

 基本的にここ王都に来てからのユウキ達の護衛の仕事はほぼないと言っていい。

 

「ユウキ様、今日はどうされるのですか」

「今日は、大人しくこの家でのんびりさせてもらかな」

「わかりました」


 金の装飾が施されていティーカップをを慎重に持ちながら口に運ぶユウキ。

 シャルロッテ達は学園見学に行くための支度があるので、今は席を外していてる。

 この場にはユウキとアリシアと屋敷の使用人しかいない。


「アリシアも今日は自由にしてていいぞ――ここじゃお前の仕事はあまりないからな」


 アリシアもここに来てからは、お客様というカテゴリーに入るため、メイドとしての本分を果たせていない。


「非常に残念ですが、そのようなので、今日はメイドギルドの方に顔を出してこようと思います」

「俺はここでもお前がメイドの仕事無理やりするかと少し心配してたぞ」


 ここでのアリシアは、ユウキの予想に反してしっかり奉仕される側に徹していた。

 昨日の食事の時も素直に引かれる椅子に着席して、ハロルドやシャルロッテと一緒に夕食を共にしたのだ。


「私がここに来られたのは、ユウキ様のメイドという立場より冒険者としてユウキ様のパートナーとしてついてきた側面が強いです」

「そうだな」

「ユウキ様のパートナーとして、賓客対応してくださるなら、ここはもう奉仕される側に徹するべきだと考えました。」


 アリシアの正論すぎる意見にただ首を頷かせる。


「それにこの屋敷の執事もメイドもレベルが高くて私もいい勉強になります。今後、ユウキ様の――」


 なにやらスイッチを押してしまったらしく熱心に語り始めてしまった。

 最初はユウキも話題を振った責任を感じて聞いていたが、何やらメイドとは、というユウキにとては、どうでもいい話になったところで耳に入れるのを断念した。

 

 アリシアの貴重?な話が終わたところでシャルロッテ達が支度を終えて食堂に姿を見せた。


「私達はもう出かけるよ。外出する際は、執事のバチスに一言かけるようにしておいてくれ」

「わかりました。何から何まで助かります」

「ユウキさん、寛いでいてくださいね」


 シャルロッテ達をを玄関まで見送った後は、すぐに後を追うようにアリシアもメイドギルドの方に出かけていった。


 久々に一人でのんびりできる時間を過ごせると、自分に貸し与えられた部屋の扉を開けると、部屋の真ん中にわざとらしく黒い手紙らしきものが落ちていた。

 少し警戒しながら、手紙を拾って外装を確認してみても、魔力の反応はなく、黒と言う色以外、極普通の手紙に見えた。差出人は不明だがユウキ宛てであることが封の表にかかれている。


「おいおい、勘弁してくれよ」


 こういう怪しげな手紙がくる心当たりは、ありすぎてこまるが、隠遁生活を送っているユウキの所在をしているのは、王家のかぎられた人物だけある。もし、それ以外からだとするとかなり厄介な相手ということだ。


 念のため防御魔法を部屋に張って慎重に封ををあける。

 しかし、手紙の最初の一文に目を通した瞬間ユウキは覚めた表情になり一瞬で手紙を破り捨てた。


「フンッ!」


 何をなかったことにして、本を読もうと椅子座ると、さっき手紙を捨てた屑かごが、揺れ始めた。

 少し、驚きながら様子をうかがっていると何かが、屑かごから飛び出してきた。最初は何かの虫かと思ったが、それは体が紙でできた妖精だった。


『やっぱり、手紙を破ったな。勇樹』


 紙で作られた妖精からかすれた声がユウキに向って放たれた。


『勇樹の事だからこの黒い手紙に警戒して、防御魔法なんかを展開したんじゃないのか? 全く、こういう事しそうな相手の第一候補に私を入れとかないと』

「で、何の用なんですか?」


 苛立った声で妖精に質問するが、


『ちなみにこの妖精は質問答えることができないから、勇樹が破った手紙の内容以外喋れないのからね』


 爆発しそうな怒りを眉間によったしわを揉みながら抑える。


『ちょっと勇樹に頼みたいことができちゃって。その件について話したいから私の研究室に来てほしいんだ』


 ユウキは絶対に無視しようと、この妖精を燃やそうとすると、


『あ、これ先輩命令だからもし、無視したり断ったりすると……ソフィーに勇樹の黒歴史をばらす』

「は、はあ?」


 今の発言で先ほどの怒りがどこかにすっ飛んでしまった。


『その妖精を国立魔法研究院所まで持ってきてくれれば助手を迎えに出すからよろしく。お昼前に来てね』


 ユウキは無言で立てかけてある剣を腰につけ、浮いている妖精を袋に入れるとて部屋を出た。


「ユウキ様、お出かけですか?」


 後ろから声をかけられたユウキは振り返り、満面の笑みでこう答えた。


「ええ、ちょっと一人狩り行ってきます」

「狩りですか……」


 ユウキの満面の笑みに引いているメイドは、ドアを出ていくユウキに帰る時間や昼食の事を聞けず後ろ姿を見送ることしかできなかった。



 王立魔法研究所は第二層西区の膨大の土地使って王立魔法学園と同じ土地に建てられている。当然、国にとって機密情報や重要人物が多い研究所と学園の敷地は、高い塀に囲まれていて門は学園に通じる物が一つと、研究所につながる門の二つだけ。

 優秀な賢者や魔導士が各分野に分かれて魔法や魔法技術について研究する機関である。

 近年、勇者の協力で目覚ましい成果をあげているせいか、他国の魔法研究者もこの研究機関に高い興味を持っているという。


「ユウキさんですか?」

「そうです」


 研究所の門前で出迎えてくれたのは、この世界では珍しい白衣と丸眼鏡をしていたユウキと同じくらいの年齢の女性だった。

 髪型は濃い茶色にボブカットで適度に愛想を振りまくアリシアとは違い、少し吊り上った目じりからは、常にクールで冷静な印象を受ける。


「私は助手のイザベルです。これが本日の入場許可書なので、無くさないでください」

「はいよ」


 ユウキもこの世界に五年居るが、この研究所の敷地に入るのは初めてだ。

 門番に許可書を見せ、門を潜ると目の前は広々とした敷地が広がっていた。王都ではここまで、開けた場所はユウキの記憶にはない。


「……広いな」


 あまりの広さにいささか呆気にとれていると、


「何そこに突っ立居るんですか?」

「いや、想像以上に広いなと」

「そうですか」


 ユウキを気に掛ける素振りも見せずに前を歩く、彼女に溜息をつきつつ頭をかいた。


「研究所と学校っ中で区切られてたのか」

「はい、研究所には極秘な研究も数多くありますし、危険な研究施設も多いので勝手に学園の生徒が来てしまわないようにと、研究所が立てられた時に塀と門が設けられました」


 半ば独り言だったが、イザベルは意外にも顔は前に向けたままだが、返答をしてきた。


「なるほど」

「……」

「いつから、この研究所で働いているんですか?」

「私は去年からこの研究所で働いています。なので、あまり詳しいことを聞かれてもあまり答えられません」

「なるほど」


 それから、あたりさわりのない質問をして会話をつなげていると、目的地であろう大きな建物が目の前に見えた。


「あれが王立魔法研究所ですか?」

「そうです。ですが、教授がいるのはあそこじゃおりません」

「えっ」

「こちらのです」


 彼女は研究所の道からそれた道に入っていく。

 ユウキが歩いている道は木々が多く、ここが王都だということを一瞬忘れそうになる。


 後をついて行くしかないので黙ってついていくが、それた道に入ってから大分たっても着く気配がない。


「まだ、かかりますか」

「もう、つきます」


 っとイザベルは前方に指を差す。

 指の差す方向を見ると、そこには普通の一軒家と大き目の工房が木々の中間にたたずんでいた。


 イザベラが鍵を開けて家の中に入るが、どこもこれと入って変わった様子がない。

 ユウキが家の中を観察していると、

 

「あちらの部屋で教授が待っています。私は飲み物を持ってくるので先に入っていてください」

「わかりました」


 ユウキは改めて顔を引き締めて扉を開けると、そこには偉そうに足を組み、椅子に座る女性がいた。


「ようこそ我が家へ! 元勇者、せ――」

「水よ弾丸になりて、敵を穿て!――『アクアバレット』」

「ぶへっぢゃ!」


 ユウキが唱えた水魔法が目の前に座る女性に直撃したのだ。

 直撃した女性は、後ろに吹き飛びながら三回のバウンドをえて、ようやく止まった。


「……痛ったー! いきなり、攻撃魔法を繰り出すなんて、私が死んだらどうする!」

 

 乱れた髪を直さず、赤くなったおでこを擦りながらユウキに非難の声を上げる。


「チッ」

「しかも、先輩に舌打ちとか、この礼儀知らずめ~!」

「なら、こんな挑発的な手紙を寄越すな!」


 ユウキは体が妖精の姿をかたどった手紙を床に倒れている彼女めがけて投げつけた。


「せっかく頑張って最新の魔法技術で作った手紙なのに、そんな乱暴に扱っちゃって」

「人を挑発するのに頑張る必要ないわ!」


 彼女は床にうつぶせのまま、口を尖らせる。


「ちょっとしたジョークなのにー」

「ふ ざ け る な !」


 初級の魔法だが、ユウキの放つアクアバレットは岩をも貫通する威力を誇る。つまり、普通の人間なら無事なはずはない。

 

 彼女はここに召喚された勇者してユウキの一個上の先輩でゲーム部副部長の大高おおたか あずさ

 近年、この国の魔法文明が大きな発展しているのは彼女の貢献が大きい。


「で、俺をここに呼びつけた用件は何なんですか?」

「久しぶりに会った先輩に本当冷たい後輩だな~。よよよ~」


 乱れた髪のままで白衣の袖で口元を隠す仕草はとても退廃的だが、ユウキの精神は一切揺るがない。


「それは、自業自得ってやつですよ」

「それに、倒れてる美女に手を貸す素振りも見せないなんて、それでは立派な紳士にはなれないよ」

「紳士なんてものになる予定はないんで」


 彼女はやれやれとぼやきつつ、立ち上がった。


「美女というのは、否定しないと」

「先輩の性格が残念じゃなきゃ、褒め称えてあげてましたよ」

「いやーそんな褒めないでよ~」

「褒めてません」


 確かに、彼女は客観的に見て、美人に入るだろう。

 すらっとした足、服の上からでも分かる隆起した胸、腰まである綺麗なダークブラウンの髪を一本の三つ編みで結っていて、整った顔にある泣きぼくろは彼女の魅力を際立たせていた。

 元の世界のユウキの学校では、間違えなく校内で一番人気があった人物だった。


「ユウキさん、教授イライラするのには激しく同意できますが、教授のペースに合わせるとこちらが損をしますよ」


 この騒ぎにも動じず部屋の入り口に立つイザベラが冷静に発言する。


「そうですね、ありがとうございます」

「いえ、とりあえず紅茶を持ってきました」


 ユウキはいつも苦労しているであろうイザベルに今日初めて共感を覚えたのだった。


「イザベラさんもこんな先輩の助手なんて続けられますね」

「教授の下にいれば貴重な魔法が学べるので、その代償とおもえば安いものですよ」

「ベルも勇樹もひどいな。私はただ面白くなればいいなと思ってるだけなのに~」

「「それが悪いんだ(です)」」


 口を尖らせて文句を言うアズサをイザベラとユウキは同時に反論して封殺した。


「で、俺を呼んだ用件ってなんですか」

「まあ~そんな焦らない。少し長い話になるからベルが持ってきた紅茶を飲みながらゆっくり話すとしよう」


 そういうアズサの口元は不気味にニヤリと笑っているのを確認して、ユウキとイザベラはお互い溜息をつかずにはいられなかった。



次回の話は仕事をしたくないユウキにまた仕事の依頼がきてしまう話です。

早く更新できるようがんばります。


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