さんかん
全ては思い付きと勢いだけ……。
ここは美術室。美術部員が絵を描いたり、粘土細工をする美術部員達にとっては大変神聖な場所だ。
「今日は、近々各学年で行われる参観をテーマに絵を描いて欲しいと思っている」
「さんかんですか?」
「そうだ参観だ。橘君、参観くらい知っているだろう?」
「工藤先輩、僕を馬鹿にしないでください。さんかんくらい知ってますよ」
「じゃあ、みんな始めてくれ」
「「「はい!」」」
元気の良い返事と共に絵画に取り組む美術部員達。その光景を見ながら、工藤は『みんな良い子達ばかりだな』と心底思っていた。
部員の描く絵を順に見ていた工藤だったが、一人の部員の絵を見て固まった。
「橘君……。何を描いているんだい?」
「何って、さんかんですよ」
「本当に参観かい?」
「当たり前じゃないですか。これがさんかんじゃなくて、何に見えるんですか!?」
他の部員達が授業風景を描いている中、胴上げされて喜ぶ野球選手を描いている橘がいる。
「橘君? 今回のテーマは……」
「さんかんですよね? さんかんと言えば、三冠王に決まっているじゃないですか!?」
「橘君。僕の言っているのは参観で、三冠じゃないんだよ……」
「先輩。それ、言葉で言ってもわかりませんよ」
『それをわかっていて、君はこれを描いたのかい……』
橘の言動にため息しか出ない工藤であった。




