↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
となりのスタートライン  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/56

世界一でも、授業は待ってくれない

## 第42話「世界一でも、授業は待ってくれない」後半


 アトランタから帰ってきて数日。


 学校では、相変わらず早苗と直樹を取り囲む人が絶えなかった。


 金メダルを見たい。


 海外の選手はどんな感じだったのか。


 アメリカの食事はどうだったのか。


 梅ジュースは本当に6\.5リットル持っていったのか。


 早苗としては、最後の質問だけはそろそろ忘れてほしかった。


「なんでそこだけみんな細かく覚えちょるの」


 昼休み。


 早苗が机に突っ伏す。


 前園が笑う。


「そりゃインパクトが強すぎたからじゃろ」


 早苗。


「11秒39の方を覚えてよ」


 迫田。


「それも覚えとる」


 上原美月。


「でも梅ジュースも覚えとる」


「なんでセットなの!」


 直樹が隣で弁当を食べながら言う。


「もう諦めろ。世界記録級のセット販売じゃ」


「誰がセット商品よ」


 教室が笑う。


 だが。


 その日の放課後。


 早苗は、いつもより少し長く教室に残っていた。


 机の上には。


 英語。


 国語。


 数学。


 そして進路資料。


 いつもの早苗なら、課題の山を見ただけで、


「僕、100メートル走って逃げていい?」


 くらいは言うところだった。


 今日は違った。


 直樹が鞄を肩にかけながら立ち止まる。


「まだ帰らんの?」


「うん」


「珍しいな」


「失礼じゃな」


「いや、事実」


 早苗は頬を膨らませた。


「僕だって勉強するよ」


「世界一になってから急に?」


 少しだけ間が空いた。


 早苗は進路資料を指で押さえる。


「前から考えちょったんだけどね」


「何を?」


「将来」


 直樹が椅子を引いて、早苗の前へ座った。


「幼稚園の先生?」


「うん」


 早苗の表情から、さっきまでのふざけた感じが消える。


「僕、やっぱり子どもと関わる仕事がしたい」


「知っとる」


「小さい頃からずっと思っちょったし」


「うん」


「でも、なりたいって言うだけじゃ駄目じゃん」


 早苗は資料をめくる。


 保育。


 幼児教育。


 児童教育。


 大学。


 短大。


 資格。


 実習。


 必要科目。


 今まで漠然としていたものが、初めて文字になって並んでいた。


「大学に行くなら、ちゃんと成績も取らんといけんし」


 直樹。


「そうじゃな」


「陸上だけで何とかなるわけじゃないし」


「まあな」


「僕、走るのは好き。でも、それだけで人生全部決めたくない」


 直樹は少し驚いた。


 早苗は続ける。


「100メートルは、いつか走れなくなるかもしれんじゃん」


「……うん」


「でも子どもと関わる仕事は、その先もできる」


 窓から夕方の光が入っていた。


 グラウンドでは、別の運動部が練習を始めている。


 早苗。


「アトランタで世界一になった時、僕、すごく嬉しかった」


「そりゃそうじゃろ」


「でも帰ってきてから思ったんよ」


「何を?」


「金メダル取っても、人生終わらんのだなって」


 直樹。


「当たり前じゃ」


「いや、分かっちょるよ」


「今の言い方だと人生最終回みたいじゃったぞ」


 早苗が吹き出す。


「そうじゃなくて」


「分かっとる」


 直樹も笑った。


 そして少し真面目な声になる。


「次があるってことじゃろ」


「うん」


「じゃあやればいい」


「簡単に言うね」


「簡単じゃないよ」


 直樹は早苗の数学のプリントを見る。


「まずこれ全部やらんといかん」


 早苗。


「現実持ってくるなぁ!」


 教室に声が響いた。


## 勉強開始


 それから。


 早苗の放課後に、新しい習慣が増えた。


 陸上部の練習前。


 少しだけ自習。


 練習後。


 家へ帰ってから課題。


 休日。


 競技の調整が軽い日は、図書館へ。


 最初の数日は。


「分からん!」


 早苗の声が何度も上がった。


 数学。


「なんでxが急に出てくるの!」


 直樹。


「最初からおるわ!」


 英語。


「現在完了って、いつ完了したの?」


「そういう意味じゃない!」


 古文。


「昔の人、もっと普通にしゃべって!」


「千年以上前に言ってくれ!」


 早苗。


「勉強って100メートルより難しくない?」


「競技と比べるな!」


 それでも。


 早苗は投げなかった。


 分からなければ聞く。


 間違えたらやり直す。


 できなかった問題には印をつける。


 次の日、もう一度解く。


 走る時と同じだった。


 すぐに結果が出なくても。


 一つずつ積み重ねる。


## 福留先生との進路面談


 数日後。


 放課後。


 福留千鶴先生の前に、早苗が座っていた。


「大石さん、本当に幼児教育の道へ進みたいのね」


「はい」


「競技推薦だけで大学を選ぶつもりは?」


 早苗は首を横に振る。


「それだけでは決めたくないです」


「どうして?」


「陸上が強いところも大事です。でも、僕が勉強したいことがちゃんと学べるところがいいです」


 福留先生は少し笑った。


「ずいぶん具体的になったね」


「アトランタ行ってから、ちょっと考えました」


「世界一になったから?」


「逆です」


「逆?」


 早苗。


「世界一になっても、僕まだ何にも知らんなぁって思って」


 福留先生はしばらく黙った。


「いい気づきだと思うよ」


 早苗。


「だから大学行って、子どもの発達とか、教育とか、ちゃんと勉強したいです」


「保育だけじゃなくて?」


「はい。子どもがどういう時に笑って、どういう時に困るのかとか」


「大石さんらしいね」


「あと、運動遊びも勉強したいです」


「陸上経験を生かせそうね」


「子どもに100メートル11秒39は要求しません」


 福留先生。


「当たり前です」


 二人とも笑った。


## 大石家


 その夜。


 夕食。


 早苗が家族へ進路の話をする。


「僕、大学行きたい」


 父の恒一が箸を止める。


「大学?」


「うん」


 母の美紀。


「幼稚園の先生になるため?」


「それもある」


 翔太。


「それも?」


「幼児教育とか、子どもの発達とか、ちゃんと勉強したい」


 恒一は娘を見る。


「陸上は?」


「続ける」


 陽斗。


「両方やるの?」


「やる」


「大変じゃない?」


 早苗。


「大変だと思う」


 美紀。


「それでも?」


「やりたい」


 しばらく静かになった。


 恒一。


「なら、頑張れ」


 早苗。


「いいの?」


「自分で考えて決めたんじゃろ」


「うん」


「だったら途中で大変になっても、自分で投げるなよ」


「うん」


 翔太が笑う。


「大学行ったら、梅ジュース持って講義受けそう」


 早苗。


「何が悪いの!」


 美紀。


「教室に6\.5リットルは持っていかないでね」


「持っていかんわ!」


 陽斗。


「アメリカには持っていったじゃん」


「いつまで言うの!」


 家族全員が笑った。


## 直樹の進路


 翌朝。


 通学路。


 早苗が聞く。


「直樹は?」


「何が?」


「進路」


 直樹。


「俺?」


「僕だけ話したじゃん」


 直樹は少し歩いてから答えた。


「鉄道の仕事したいのは変わらん」


「JR九州?」


「うん」


「車掌?」


「最初から車掌になれるかは分からんけど、乗務員になりたい」


「大学は?」


「それも考えちょる」


「じゃあ一緒に勉強じゃん」


「そうなるな」


 早苗が嬉しそうに笑う。


「じゃあ放課後、一緒にやろ」


「勉強を?」


「うん」


「ちゃんとする?」


「するよ!」


「途中で梅ジュース休憩三回くらい入らん?」


「二回」


「入るんじゃん!」


 早苗。


「集中力には休憩が必要です」


「都合のいい理論を作るな!」


 朝の道に笑い声が響いた。


## 走るだけじゃない


 その日の放課後。


 グラウンド。


 早苗はスタートブロックへ足を置いた。


 直樹はトラックの外側でストレッチしている。


 有馬監督が言う。


「今日は流し三本」


 早苗。


「はい」


 号砲。


 走る。


 風が横を抜ける。


 100メートル。


 短い。


 一瞬。


 でも人生は、その何万倍も長い。


 早苗はゴールを越えて、ゆっくり歩き始めた。


 その先には。


 陸上。


 大学。


 幼児教育。


 子どもたち。


 まだ見たことのない未来がある。


 直樹が近づいてくる。


「どう?」


「何が?」


「今日の走り」


 早苗。


「まあまあ」


「珍しく控えめ」


「今、別のことで頭いっぱいだから」


「勉強?」


「うん」


「数学?」


 早苗。


「言わないで」


「一番嫌そうな顔したな」


「100メートル十本の方がいい」


「勉強から逃げるな!」


 早苗が笑った。


 世界一になった。


 でも、それはゴールではなかった。


 むしろ。


 次のスタートラインが見えただけだった。


# 次回予告


## 第43話「走る未来、学ぶ未来」


 早苗。


 大学進学を見据え、本格的に勉強開始。


 直樹も鉄道業界への夢を実現するため、進路を調べ始める。


 だが。


 放課後の図書館。


 早苗。


「直樹」


「何?」


「五分休憩」


「さっき休んだ」


「脳が梅ジュースを要求しちょる」


「そんな脳ない!」


 さらに。


 進路資料に並ぶ大学名。


 学部。


 資格。


 競技環境。


 二人は初めて、


「同じ大学へ行くのか」


「別々の道を選ぶのか」


という現実とも向き合い始める。


 早苗。


「別々になったら、両隣想いできんの?」


 直樹。


「隣って、距離だけの話じゃないじゃろ」


 次回、第43話「走る未来、学ぶ未来」。


 世界一の次に始まったのは。


 自分たちの未来を選ぶための、新しい競争だった。## 第42話「世界一でも、授業は待ってくれない」後半


 アトランタから帰ってきて数日。


 学校では、相変わらず早苗と直樹を取り囲む人が絶えなかった。


 金メダルを見たい。


 海外の選手はどんな感じだったのか。


 アメリカの食事はどうだったのか。


 梅ジュースは本当に6\.5リットル持っていったのか。


 早苗としては、最後の質問だけはそろそろ忘れてほしかった。


「なんでそこだけみんな細かく覚えちょるの」


 昼休み。


 早苗が机に突っ伏す。


 前園が笑う。


「そりゃインパクトが強すぎたからじゃろ」


 早苗。


「11秒39の方を覚えてよ」


 迫田。


「それも覚えとる」


 上原美月。


「でも梅ジュースも覚えとる」


「なんでセットなの!」


 直樹が隣で弁当を食べながら言う。


「もう諦めろ。世界記録級のセット販売じゃ」


「誰がセット商品よ」


 教室が笑う。


 だが。


 その日の放課後。


 早苗は、いつもより少し長く教室に残っていた。


 机の上には。


 英語。


 国語。


 数学。


 そして進路資料。


 いつもの早苗なら、課題の山を見ただけで、


「僕、100メートル走って逃げていい?」


 くらいは言うところだった。


 今日は違った。


 直樹が鞄を肩にかけながら立ち止まる。


「まだ帰らんの?」


「うん」


「珍しいな」


「失礼じゃな」


「いや、事実」


 早苗は頬を膨らませた。


「僕だって勉強するよ」


「世界一になってから急に?」


 少しだけ間が空いた。


 早苗は進路資料を指で押さえる。


「前から考えちょったんだけどね」


「何を?」


「将来」


 直樹が椅子を引いて、早苗の前へ座った。


「幼稚園の先生?」


「うん」


 早苗の表情から、さっきまでのふざけた感じが消える。


「僕、やっぱり子どもと関わる仕事がしたい」


「知っとる」


「小さい頃からずっと思っちょったし」


「うん」


「でも、なりたいって言うだけじゃ駄目じゃん」


 早苗は資料をめくる。


 保育。


 幼児教育。


 児童教育。


 大学。


 短大。


 資格。


 実習。


 必要科目。


 今まで漠然としていたものが、初めて文字になって並んでいた。


「大学に行くなら、ちゃんと成績も取らんといけんし」


 直樹。


「そうじゃな」


「陸上だけで何とかなるわけじゃないし」


「まあな」


「僕、走るのは好き。でも、それだけで人生全部決めたくない」


 直樹は少し驚いた。


 早苗は続ける。


「100メートルは、いつか走れなくなるかもしれんじゃん」


「……うん」


「でも子どもと関わる仕事は、その先もできる」


 窓から夕方の光が入っていた。


 グラウンドでは、別の運動部が練習を始めている。


 早苗。


「アトランタで世界一になった時、僕、すごく嬉しかった」


「そりゃそうじゃろ」


「でも帰ってきてから思ったんよ」


「何を?」


「金メダル取っても、人生終わらんのだなって」


 直樹。


「当たり前じゃ」


「いや、分かっちょるよ」


「今の言い方だと人生最終回みたいじゃったぞ」


 早苗が吹き出す。


「そうじゃなくて」


「分かっとる」


 直樹も笑った。


 そして少し真面目な声になる。


「次があるってことじゃろ」


「うん」


「じゃあやればいい」


「簡単に言うね」


「簡単じゃないよ」


 直樹は早苗の数学のプリントを見る。


「まずこれ全部やらんといかん」


 早苗。


「現実持ってくるなぁ!」


 教室に声が響いた。


## 勉強開始


 それから。


 早苗の放課後に、新しい習慣が増えた。


 陸上部の練習前。


 少しだけ自習。


 練習後。


 家へ帰ってから課題。


 休日。


 競技の調整が軽い日は、図書館へ。


 最初の数日は。


「分からん!」


 早苗の声が何度も上がった。


 数学。


「なんでxが急に出てくるの!」


 直樹。


「最初からおるわ!」


 英語。


「現在完了って、いつ完了したの?」


「そういう意味じゃない!」


 古文。


「昔の人、もっと普通にしゃべって!」


「千年以上前に言ってくれ!」


 早苗。


「勉強って100メートルより難しくない?」


「競技と比べるな!」


 それでも。


 早苗は投げなかった。


 分からなければ聞く。


 間違えたらやり直す。


 できなかった問題には印をつける。


 次の日、もう一度解く。


 走る時と同じだった。


 すぐに結果が出なくても。


 一つずつ積み重ねる。


## 福留先生との進路面談


 数日後。


 放課後。


 福留千鶴先生の前に、早苗が座っていた。


「大石さん、本当に幼児教育の道へ進みたいのね」


「はい」


「競技推薦だけで大学を選ぶつもりは?」


 早苗は首を横に振る。


「それだけでは決めたくないです」


「どうして?」


「陸上が強いところも大事です。でも、僕が勉強したいことがちゃんと学べるところがいいです」


 福留先生は少し笑った。


「ずいぶん具体的になったね」


「アトランタ行ってから、ちょっと考えました」


「世界一になったから?」


「逆です」


「逆?」


 早苗。


「世界一になっても、僕まだ何にも知らんなぁって思って」


 福留先生はしばらく黙った。


「いい気づきだと思うよ」


 早苗。


「だから大学行って、子どもの発達とか、教育とか、ちゃんと勉強したいです」


「保育だけじゃなくて?」


「はい。子どもがどういう時に笑って、どういう時に困るのかとか」


「大石さんらしいね」


「あと、運動遊びも勉強したいです」


「陸上経験を生かせそうね」


「子どもに100メートル11秒39は要求しません」


 福留先生。


「当たり前です」


 二人とも笑った。


## 大石家


 その夜。


 夕食。


 早苗が家族へ進路の話をする。


「僕、大学行きたい」


 父の恒一が箸を止める。


「大学?」


「うん」


 母の美紀。


「幼稚園の先生になるため?」


「それもある」


 翔太。


「それも?」


「幼児教育とか、子どもの発達とか、ちゃんと勉強したい」


 恒一は娘を見る。


「陸上は?」


「続ける」


 陽斗。


「両方やるの?」


「やる」


「大変じゃない?」


 早苗。


「大変だと思う」


 美紀。


「それでも?」


「やりたい」


 しばらく静かになった。


 恒一。


「なら、頑張れ」


 早苗。


「いいの?」


「自分で考えて決めたんじゃろ」


「うん」


「だったら途中で大変になっても、自分で投げるなよ」


「うん」


 翔太が笑う。


「大学行ったら、梅ジュース持って講義受けそう」


 早苗。


「何が悪いの!」


 美紀。


「教室に6\.5リットルは持っていかないでね」


「持っていかんわ!」


 陽斗。


「アメリカには持っていったじゃん」


「いつまで言うの!」


 家族全員が笑った。


## 直樹の進路


 翌朝。


 通学路。


 早苗が聞く。


「直樹は?」


「何が?」


「進路」


 直樹。


「俺?」


「僕だけ話したじゃん」


 直樹は少し歩いてから答えた。


「鉄道の仕事したいのは変わらん」


「JR九州?」


「うん」


「車掌?」


「最初から車掌になれるかは分からんけど、乗務員になりたい」


「大学は?」


「それも考えちょる」


「じゃあ一緒に勉強じゃん」


「そうなるな」


 早苗が嬉しそうに笑う。


「じゃあ放課後、一緒にやろ」


「勉強を?」


「うん」


「ちゃんとする?」


「するよ!」


「途中で梅ジュース休憩三回くらい入らん?」


「二回」


「入るんじゃん!」


 早苗。


「集中力には休憩が必要です」


「都合のいい理論を作るな!」


 朝の道に笑い声が響いた。


## 走るだけじゃない


 その日の放課後。


 グラウンド。


 早苗はスタートブロックへ足を置いた。


 直樹はトラックの外側でストレッチしている。


 有馬監督が言う。


「今日は流し三本」


 早苗。


「はい」


 号砲。


 走る。


 風が横を抜ける。


 100メートル。


 短い。


 一瞬。


 でも人生は、その何万倍も長い。


 早苗はゴールを越えて、ゆっくり歩き始めた。


 その先には。


 陸上。


 大学。


 幼児教育。


 子どもたち。


 まだ見たことのない未来がある。


 直樹が近づいてくる。


「どう?」


「何が?」


「今日の走り」


 早苗。


「まあまあ」


「珍しく控えめ」


「今、別のことで頭いっぱいだから」


「勉強?」


「うん」


「数学?」


 早苗。


「言わないで」


「一番嫌そうな顔したな」


「100メートル十本の方がいい」


「勉強から逃げるな!」


 早苗が笑った。


 世界一になった。


 でも、それはゴールではなかった。


 むしろ。


 次のスタートラインが見えただけだった。


# 次回予告


## 第43話「走る未来、学ぶ未来」


 早苗。


 大学進学を見据え、本格的に勉強開始。


 直樹も鉄道業界への夢を実現するため、進路を調べ始める。


 だが。


 放課後の図書館。


 早苗。


「直樹」


「何?」


「五分休憩」


「さっき休んだ」


「脳が梅ジュースを要求しちょる」


「そんな脳ない!」


 さらに。


 進路資料に並ぶ大学名。


 学部。


 資格。


 競技環境。


 二人は初めて、


「同じ大学へ行くのか」


「別々の道を選ぶのか」


という現実とも向き合い始める。


 早苗。


「別々になったら、両隣想いできんの?」


 直樹。


「隣って、距離だけの話じゃないじゃろ」


 次回、第43話「走る未来、学ぶ未来」。


 世界一の次に始まったのは。


 自分たちの未来を選ぶための、新しい競争だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。