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死刑囚、中ニになる  作者: 凛1129
ナイス・ガイの一学期
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一章 5 盗撮魔の流儀

「獅子丸さん!ここにいたのですか?」

 教頭と担任の美月先生がE組の入り口で怒っている。

「美月か、どうだ?これから飯でもいかないか?」

「……はっ?」

「君!なにを言っているのだ」

 教頭が怒りまくっているな。

「え〜獅子丸っち浮気〜」

 優希が袖を引っ張りこっちを見ている。

「優希、君はまだ子どもだ……大人の世界はまだ早い」

 俺様はできる限り優しく、そしてハードボイルド風に告げた。

「え〜ウケんだけどぉ」

 

「君も子どもでしょ!」

 美月先生が俺様の腕をひっぱり、連行されてしまった。

「じゃあな!獅子丸」

「ははっお達者で〜」


 (溝口だけじゃない。教師にも澪へ絡む奴がいるのか)


「獅子丸さん!」

「ん?魅力的だと思うぞ?」

「そんなこと聞いていません!」

「勝手に違うクラスに行っちゃだめでしょ?」

 教頭のおっさんも怒っている。

「そうだぞ。松丸くん、他のクラスの授業を邪魔したりしたらダメだぞ」


 その後、なにか色々教頭は言っていたが、全く記憶に残っていない。

 

 ◇


 B組に戻された……

 澪がこっちを見ている。

 ん?見ている?


 (そうか、本人に聞けばよい。なにも頭の悪そうなパイナップルに聞く必要はない)


 澪の所に歩いていく。

「こら、獅子丸さん、急にウロウロしないで!」

「む?」

「座る!」


 澪が驚いた目で見ているな。


「あと、少しで給食だから座っていなさい」


 ◇


「えっと……」

「なんだ」

「なんで獅子丸くんが富野さんの席に……」

「うむ。変わってもらった」


 (澪……改めて見ると、成長したな)


「なんで、向かい合わせで……」

「そんなことよりな!」

「うん」

「芝岡のことで——」

 (ん?澪の反応が変わったぞ。明らかに目線を逸らした)


「困っていることがあれば、相談に乗ってやろう」

「なにもない……」

「大丈夫だ、俺様がいれば全部解決できる!」

「なにもないって!」


 澪は立ち上がり大きな声で言った。

 クラスの皆の視線が一斉に集まった。

 それを一瞥すると、ゆっくりと澪は座り、落ち着いてこちらを向き話を始めた。


「獅子丸くんこそ……なんか変だよ」

「……」

「いつもの気が弱いけど、優しい獅子丸くんかと思えば」

「……」

「突然、自信満々の獅子丸くんになる」

「最近、変だよ……心配なのは君のほうだよ」


 (見逃せない表情があった。あれは嫌悪じゃない、恐怖の目だ)


「そう。最近どっちが女子ウケが良いか試しているのだ」

「女子ウケ?」

「優しい系獅子丸と、ナイス・ガイ系獅子丸だ」

「ナイス・ガイ?今が?」

「そうだ」

「おっさんぽいけど」

「えっ?マジ?」

「ぷっ、マジ」

 澪は初めて笑った。


 (その笑顔だけは、四歳(あのころ)のままだな)


「さてと、一緒に飯を食えて良かった」

「おっ、これ片付けといて」

 立ち上がって隣にいた女の子に給食を渡した。

「なんで、私が……」

「近くに可愛い子が君しか見当たらなかったからな」

「かわっ……今回だけだからね」

 そう言うと片付けてくれた。

「はー」

 澪が目を丸くして様子を見ていた。

「どこか行くの?」

「あーパイナップルのところだ」

「パイナップル?あぁ、豪樹(ごうき)君のところね」

「ごうきだと!」

「幼馴染でしょ?忘れたの?やっぱ変だなぁ」


 ここにいるべきではないな。ボロを出さない自信がなくなってきた。


 ◇


「!!!!!!」

「獅子丸くん?」

「戻りなさいっ!」


 五時間目、豪樹ことパイナップルに聞きたいことがあったが、まさか美月先生の授業だったとは。仕方がない、放課後に聞くことにしよう。


 その前に!

 技術室に侵入するべきだ。

 これだ、これが近い。

 固定する用の小さなサイコロのような木と、薄い板を物色する。


 ◇


「おう、待たせたな」

「普通聞きたいことある側が遅れてくるか?」

 パイナップルが呆れた顔をしているが、そんなことはどうでもよいのだ。


「澪について詳しく知っているやつは?」

「え〜しらな〜い」

 なっ、いつの間にギャル姉ちゃんが背後に。

「優希か、水樹に聞けばいいんじゃね?」

「ダメだよ〜あいつ澪の話になると機嫌が悪くなるから、しかも最近とくにねぇ……」


 やはり中坊の情報なんてこんなもんか……


「あー!あいつは?」

 優希が突然、校門へ向かう男子生徒を指した。

(たける)かぁ、ぷっ、確かに知ってそう」

 パイナップルが笑っている。

「あんな子どもがなぜ澪のことを?」

「いやね」

 二人は笑って目を合わせている。

 早く言うのだ。

「あいつ、この前まで鑑別入っててね?」

「くはー、笑える!ガッハッハ」

 このガキどもめ!中坊に付き合いきれんぞ。

「要点だけ言え!要点!」

ようやく爆笑していた二人の笑いも少し止み、優希が答えた。

「要点?あーね。あいつ学校中の女の子盗撮して件数多すぎて……プックック——一発で鑑別送られて始業式もいなかったんだよ」

「そうそう!やべーよな?あいつ!」

「あいつなら知ってんじゃね?」


 そうか。一応聞いてみるか。

「おい!そこの少年!」

「えっ?」

 盗撮魔は怯えた顔でこっちを見たと思ったら、突然ダッシュで校門へ向かった。


「おっおい!」

 咄嗟に追いかける。


「わぁーわぁー」

 盗撮魔が大声を上げて逃げてゆく。


「くっ……遅い、この身体じゃ、あんなのにも」

 そう考えていると、横をスッと追い越していくヤツがいた。


 なっ……パイナップル?

「つっかまーえた!」 

 校門の手前で飛びかかり、盗撮魔とパイナップルは、倒れた。


「ハァハァ、なんで逃げんだよ」

 なんて疲れやすい身体だ。そう思いながらもなんとか聞いた。


「すいません!すいません!お金は今、七万くらいしかありません!すいません」

「いやいや、金が欲しいわけじゃないぞ、ってか、お前、コイツから金もらってんのか?」

 パイナップルの顔を見ると、首を何度も振って言った。

「いやいや、やらねーよ。コイツの親、うちの親とも仲いいんだぜ?」

「そうか……すまんかった。尊、お前に聞きたいことがある」

「獅子丸くん?ああ、なんだい?」

「お前、学校中の女子を盗撮してたんだろ?」

「……まあ」

「なら、澪も撮ってるな?」

 

「獅子丸、流石に押収されてんだろ?」

 パイナップルが肩を竦めた、その瞬間。

「そんな素人と一緒にするな!」

 突然、盗撮魔は立ち上がり怒り出した。

「そうか……押収はされてないんだな」

「押収はされたよ。でもバックアップくらいするだろ?素人じゃあるまいし」

 振り向くと二人はイヤイヤというジェスチャーをしている。

「最近のでも昔のでもいい。妙なものが映ってないか確認したい」

「——」

 盗撮魔はピタッと止まり、こっちを真剣な目で見ている。

「どうなんだ!」

「……あるよ」

 

 パシンッ!

 思わず盗撮魔の頭を叩いてしまった。

「ぐはっ!なんだよ!聞いたからちゃんと答えただろ!?」

「すまん、条件反射だ!」

「でも、獅子丸くんが怒るのもわかるよ、ごめん……」

「どういう意味だ」

「見るのかい?いや……見るよね……止めても」

「!?」

「いつも一緒に帰ってたもんね。阪本さんと」

「はっ?コイツがか?」


 三人を一瞥すると、沈黙が漂っている。


「いや、気にしなくてよい、見せろ」

「覚悟してよ、これは押収もされていない、データだから」


 ◇


 盗撮魔の家に四人で行くことになった。親の問題だかなんだかで、今は一人暮らしをしているらしい。

「この端末のことは誰も知らない。これで見るよ」


 そう盗撮魔は電源を入れた。

 タタタッタタタタッ

「コレだよ」


 映像は夜?いや時刻は、季節からして午後六時くらいだろう。

  辺りは暗く、最初は二人の影しか見えなかった。だが、オートISOが働くにつれて、輪郭が浮かび上がってくる。


「いやです、無理です」

「それだと、養護施設の人に言って、転校させるしかないよ」

「本当にやめてください……悪いことしたのなら謝りますから……」

 

 男が一歩、澪へ近付いていく。 

 ガサッガサッ


「キャッ」

「声を上げるな!殺すぞ!」

「うっ」

 まさか……


 ガタンッ


「誰だ!」


 ダッタッタッタッ


 そこから先は、盗撮魔が逃げていく足音と、激しく振り回される映像だけだった。


 四人とも何も言えない時間が続き、最初に口を開いたのは優希だった。


「ひどい……」

 続いて目を背けていたパイナップルも、「見てられねーよ」と呟いた。


「……」

「コイツが、芝岡か?」

「うん」

「なぜ、警察には?」

 

「脅されていたんだ、データを渡せと、芝岡に」

「だけどこうして、予備データが残っている、僕の持っているカメラはメモリーカードが二枚入るタイプ」

「言い出すまでの勇気は、なかったんだ……ごめん」


「いや、お手柄だ」

「因みにこれで抜いてないよな?」

「馬鹿にするな!僕は明るく元気な女の子を盗撮したいのだ!」

「わかった、信じるよ」

 そう言い、盗撮魔の肩をポンッと叩いた。


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