一章 6今時の文通
「よし!終わった」
「流石は天才A級暗殺者は全てにおいて完璧だ、ガッハッハッハ!」
俺様は、勝利を確信し酔いしれていた。
ガチャ
「ん?」
「獅子丸ちゃん、楽しそうね?ハイ、おビール」
「えっ?ああ、どうも」
「早めに寝るのよ〜それ飲んで」
そう言い残し、部屋を出た。
とうとうコイツの母親は、部屋にまでわざわざ届けるようになってしまった。美酒まで届けに……
五月一日(月)
【龍馬】
> ナイフは隠した。メモはこれで最後。
この紙も燃やせ。
芝岡について知っていることをボイスメモへ残せ。
あのナイフは芝岡に使うつもりだろ?
あの手の人間は刺しても終わらん。
そして俺は澪の父親だ。
人を殺す仕事をしていた。
犯罪者なら何千人と見てきている。
芝岡は俺様が始末してやる。
お前は知っていることだけ残せ。
それと、澪がなにをされたかは今日調べた。
五月二日(火)
【獅子丸】
> あなたは誰ですか。龍馬さんて澪のお父さん……だけどこの前。
本当に父親なんですか。
ネットでは、三人殺して、無職だと。
奇数日に入れ替わる理由は?
芝岡先生を知っているんですか。
ナイフは返してください。
あと、ママがビールを持ってきます。
何故ですか。
あと、優希さんと豪樹がやたらと話しかけてきます。どうすればいいの?
五月三日(水)
【龍馬】
> 奇数日とは考えなかったな。
あと質問が多いぞ。入れ替わる理由は知らんし、ビールは、今日はいらないとでも言っておけ!
優希は適当にケツでも触っておき、豪樹はバカだから気分が乗らんと言ってもふ〜んで終わるだろ?
ナイフは街のどこかに隠した。
お前は澪を守ろうとした。
そこだけは認めるし、親として感謝もしている。
そろそろ芝岡のことを話せ。
俺様は、待つのが嫌いなのだ。
五月四日(木)
【獅子丸】
> ガラス事件の日
芝岡が澪へ言った言葉
水樹が言いふらしたこと
澪が泣いていた意味
自分は何もできなかったこと
そして芝岡の被害者は澪だけでは、ないってこと……
……だから刺そうと思いました。
それと姉ちゃんがアイコスがないと騒いでいました。龍馬さんですか?
五月五日(金)
【龍馬】
> なるほど。芝岡は犯罪者だな。
別の被害者の名前は?知っている限り答えてくれ。それと愛羅のアイコスは俺がパクった。
バレないように、上手いこと誤魔化しておけ。
五月六日(土)
【獅子丸】
> アイコスはやっぱり龍馬さんですね。
吸うのをやめてください。
あと、犯罪者って……証拠なんてありません。
でも、僕の調べた限りですけど、多分水樹さんは芝岡に脅されていると思います。
あと、学校でなにをしてんですか。
俺様とか……キャラ変がキモいって言われて、気分悪いんですけど。やめてもらえますか。
あと、女の子を追っかけ回したりするのも。
五月七日(日)
【龍馬】
証拠がない?水樹だな!
充分だ!でかしたぞ。獅子丸。
あとな?暗いとモテないぞ。
明るく自信満々な男がモテるのだ。
ナイフなんて使わなくても、必ず芝岡は俺様が倒してやる。子どもは勉強でもしてなさい。
五月八日(月)
【獅子丸】
> 水樹さん?でも、どうやって。
まさか溝口くんのようにするんですか?
僕じゃ勝てないですよ?大人ですし。
五月九日(火)
【龍馬】
俺様の仕事は失敗したことがない。
明後日から芝岡を狩る。十日はお前の番だ。学校では普通に過ごせ。堂々としていろ。
聞いたぞ?お前、告白されたんだろ?
良かったじゃねーか。ガッハッハ。
二度言うが、十一日から決行する。
そして明日。恐らくだが、水樹はお前にこう聞いてくる。
「私は被害ないんだよね?」
「本当に終わらせられるんだよね?」
それに近いことをな。
時間をかけたくないのは、お前も同じだろ?
澪のためにも。話しかけられたら、こう言え。
「俺様に任せておけ」
何かあれば、またここへ指示を残す。
それと、獅子丸の身体に負担はかけちまうと思うが、若いから大丈夫だろ。
アラームを午前一時に設定しておけ。
じゃあな!獅子丸。
「ふぅ……」
僕はベッドに行き、バサッと身体を倒した。
時計は○時五十分を指している。
僕にも、できるのかな。こんな風に。
ちょっと変だけど……もしかしたら……って思えるような人のように。
◇
「ねえ」
後ろから、女子の声が聞こえる。
(龍馬さんのように!龍馬さんのように!)
「おお、みっ水樹か?なんだ」
(うわ〜僕らしくねー)
「昨日の話なんだけど、ちと向こう行かない?」
(水樹さん?なんかいつもの強いキャラじゃないぞ?)
屋上の手前の階段にくると、水樹さんは振り返って言った。
「あっあの……件、本当、だよね?」
「あの件?」
「いや、うん。ああ、任しておけ!」
(俺様なんてハズくて言えないよー)
「ホントだね?」
「あっ」
(水樹さん……泣いている?)
「私、親にも相談出来なくって」
(泣いて……あの水樹さんが……)
手が震えている。心臓の音がうるさい……
「……」
でも!
僕は、震える手を止めて、水樹さんの肩をパンッと叩いた。
(龍馬さん……澪のため……)
僕は、くるりと後ろを向き、両手を腰にあてた。
「ガッハッハッハ、俺様に任せておけ!」
(やっぱ、ハズいよ〜)
◇
五月十一日 (木) 午前一時
『テン、テレン、テン、テン♪』
アラームを止めて、身体を起こす。
盗撮魔に連絡をする。
「おっ、獅子丸くん、準備オッケーだよ」
「いくつ付けた?」
「二十四個だ!」
「ははっ犯罪者じゃねーか」
「アートって呼んでほしいね」
「分かった。何度も言うが、記録は残すな。連絡はライン通話だけだぞ。これは徹底しろ」
「オッケィ」
切ったと思ったら今度は優希からすぐにかかってくる。
「優秀だ」
「おう。優希、準備は出来てるか」
「オッケーだよぉ〜。全部じゃないと思うけど、それっぽそうな人は集めておいたしー」
「オーケイ!じゃあ今日学校でな」
「りょ〜かいー!」
あとはパイナップルか。通話を押してと。
「起きてるぞ」
「ああ、例の順番で頼む……大丈夫か?」
「なにがだ?」
「いや、お前バカだから」
「おまっ!協力者をバカ呼ばわりすんなよ」
「わかった、いざとなったらお前の足が頼りになるはずだ。あのタイプは必ずお前が必要になる」
「わかったよ!事前連絡完了〜!おやすみ」
「ああ」
芝岡め。澪につけた傷、その身で償ってもらうぞ。




