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死刑囚、中二になる  作者: 凛1129
腕に書かれたWxY
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二章 5犯人はコントローラーぶん投げるタイプだ!

「失踪?」


「そうね、私たち教師も真相は知らないのよ」

 少し熱気を帯びた屋上前の階段で、美月は扇子でゆっくり扇いだ。


「いつからいなくなったんだ?」


「んーなんともだけど、盆前にいた先生の所に教育委員会の人らが来たらしくてねー、それで、もしかしてみたいな噂が広まったのよ」


「——ちなみに優希のことは」


「E組の優希さん?それは連絡入ってないなぁ」


(関わりは……流石にないか)


「わかった、サンキュー美月」


「……ほほう、それだけですかぁ」


「ん?なんか他にあったか?」

 腕を組み、すべてお見通しと言いたげな笑みを浮かべた。

「夏休み前からなが〜い、お休みとって、お楽しみだったと報告がありましたが」


「お楽しみ?俺様は楽しくなかったぞ」


「澪さん水樹さんがお泊まりに来たとも、私の耳には入っていますが〜真相は、どうなんでしょうねぇ〜」


「なっ、なんで知ってんだ!」


「あ・た・り・前でしょ!あんた達の担任なんだから」


「ああ!なるほどね!」

 手をポンと拳で叩き、感心したように振る舞い——


「でわでわ」


(逃げるが勝ちでござる!)


「ちよっ、待て!獅子丸!私、呼ばれてないっ!」


 ◇


 放課後


 まだ暑い夏が残っている中、澪をはじめ、仲間内全員がB組の教室に集まった。

 七月から始めた俺様のブートキャンプ。その二ヶ月の間にあった、みんなの話を要約すると――


 仲間内で最後に優希から連絡があったのは、八月四日の澪。

 話も特に気になるようなものではなく、施設の外出範囲を聞かれただけだった。

 

 美月から得られた確かな情報は少なかったが、屋上で話したあと調べてもらった限りでは、優希の母親は教育委員会のお偉いさんというのは、間違いないだろう。

 

 尊の話では、八月初旬、最近家出した子どもたちが集まる場所で優希を見かけたらしい。

 近づくと、気づかないふりをしてどこかへ行ってしまったという。


「そりゃ尊が繁華街で出没したら、変質者だと思って女の子は逃げるだろ」


「そこは否定しないけど、なんか慌てた様子があったから、ちょっと気になってはいたんだ」


「……慌てた様子?」


「ん〜主観だけど『ヤバッ』みたいなリアクションあるでしょ?そんな感じがしたんだよね」


「でも、変じゃない?優希ちゃんの性格見てると、尊を繁華街で見かけて、逃げるかな?」


(澪の言うことはもっともだな……)


「ん〜休み明けに学校フけるのは、問題ないとしても、誰も連絡取ってねぇってのはなぁ」

 頭の中で整理しながら、首を突っ込む事なのか、放っとくべき事なのかを考えていた。


「ん、じゃあ行けばよくね?優希んち」


「おお、豪樹、奇跡的にごもっともな答え出したな」


「奇跡的ってなぁ」


「ん?でもそれ気づくのになぜ、豪樹は優希んちに行かない?」


「いやっ、獅子丸が言った通りあそこの親、教育委員会の母ちゃんと、父ちゃんは弁護士だぜ?俺が単独で行ったら通報されんだろ?普通」


「そうだな、犯人が家に来たらまず通報だな」


「とりあえず……みんなで行かね?心配でしたーみたいな?」


 水樹の一言でまとまり、優希の家に行くことが決まった。


 ◇


 住宅街の一角にある『桜木』の表札がある黒い家が優希の家だった。

「弁護士」と「教育委員会幹部」。

 そんな肩書きを、そのまま家にしたような一軒家だった。


「ん、じゃインターフォン押すか」


「豪樹、お前はきっと気づいたら墓の中に行くタイプだな」


「墓って!押して聞くだけだろ?」


 俺はため息をついて豪樹を無視した。


「尊、遠隔のマイク持ってる?」

 

「ああ、持ってる」

 

「それを水樹につけて……それから澪はここの親とメインで話せ」


「うん」


「あと里子は、スマホを出して撮らずに持っておくだけでニコニコして立ってろ」


「綺羅羅ね!でも撮らないの?」


「そう、いるだけで充分、あと俺様と豪樹は窓を見る、豪樹は家の右側、俺様は門扉の正面から二階の窓を見る。尊は隣家との間にある勝手口を見てろ」


「なんで優希の事聞くだけなのに、そんなことすんだ?」

 豪樹は呆れた顔をしている。


「念のためと、これだけ人数がいるんだったら、普通そうするだろ」

 

「普通、しねーよ!」


「いいから行くぞ」


 ◇

 ピンポーン

『はいっ』

 

(出るのが早い)

 

「あの、優希さんと同じ学年の阪本澪です。優希さんと連絡が取れなかったので、心配で来ました」

 

『……』

 

(詰まった?)

 

『ちょっと待ってね。今出ますから』

 

(カーテンに揺れはない)

 尊を見ると、首を振っている。

 

 出てきたのは母親で、優希とはあまり似ていなかった。いかにも『教育関係者です』といった、当たり障りのない格好をしている。歳は四十代半ばくらいだろう。

 

『優希のお友達? わざわざ来てくれてありがとね』

 お決まりの教員のような笑顔を口元に浮かべ、門扉へ寄ってきた。

 

「あらっ、あなたは」

 優希の母親は里子へ目を向けた。

 

「こんにちは! ユーチューバーの綺羅羅でーす」

 

「知ってる。あなたのお陰で私も忙しいからね」

 優希の母親はいたずらっ子のような笑顔で答えた。

 

「それで、優希さんは大丈夫ですか? 連絡が取れなくて」

 

「ごめんねー。優希、今コロナウイルスにかかっちゃってねー」

 

「!?」

 

「治ったら、連絡させるように伝えておきますね」

 

「あっ、そうでしたか……では、優希ちゃんにお大事にと伝えてください」

 

「は〜い。阪本さんね? 伝えておきますね」

 

 ◇

 

「なんだー、優希のやつ、コロナならそう連絡くらいしろっつー話だよな?」

 帰り道、豪樹が頭の後ろで腕を組みながら言った。

 

「いやいやいや、あのオバちゃん嘘っしょ?」

 

「はぁ? うそぉ?優希の親が?」

 

「なんでコロナにかかっている娘の親が、マスクもしないで出てくんのよ」

 

(水樹、気づいたか)

 

「しかも澪が話したのって八月頭っしょ? どんだけ重症なんだっつー話!」

 

「おっ!? また、あるあるネタになるかな?」

 

「いや、今回は優希ちゃんだから、動画はちょっと……」

 澪は里子の袖を少し引っ張った。


 

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