一章 26わりと最近!銀河系のこの辺りで
六月十九日 月曜日
「えー今日は、気づいている人も何人かいらっしゃるようですが、担任の三日月先生が体調不良から回復されました」
「ご心配をおかけしまして、すみませんでした」
「嘘つけ!うちの母ちゃんが先生を、まいばすけっとで見たって言ってたよ!」
「マジ?」
「なんかビールをケースで買ってたって」
クラスのみんなは、大笑いしているが、美月は恥ずかしそうに俯いている。
(あ〜ビールは俺様のせいだー)
「はい、はい、静かにね」
「というわけで、今日から三日月先生が担任に戻ります」
「「「「おーー」」」」
クラスメイトから拍手はしばらく続いた。
「待ってたぞー」
「ビール飲みすぎるとまた体調不良になんぞー」
「おかえりーせんせー」
歓声と共に、美月は生徒たちへ受け入れられていった。
美月は「ありがとう」「みんなありがとう」と、涙をハンカチで押さえながら何度も頭を下げた。
昼休みになると豪樹や優希、綺羅羅も美月の元へやってきた。
「配信してたらいきなり酔っぱらいでしょ?マジであんときは、終わった〜って思ったよ」
「先輩の所についた時の美月っちの顔、マジヤバかったんだけど〜」
今回一緒に動いた六人が、それぞれの思い出話を美月と花を咲かせていた。
(尊があんなテンションたけーの初めて見たな……)
そんな様子を後ろで黙って見ていた。
◇
放課後
学校を出る時には小雨が降っていた。夜中に台風が近づくと、誰かが言っていた。
放置されていそうなビニール傘を拝借して、家路へ向かった。
グラウンドには誰もいない。
朝から響いていた生徒たちの笑い声も、雨音に溶けるように消えていた。
(終わったな……)
美月。悠真。澪。 いろんなことがあった。
六月も、もうすぐ終わる。
角を曲がると、家の前に一台の車が止まっていた。
(誰だ……?)
車の横で一人の女が傘を差している。
「……」
美月だった。
「美月ぃー!復帰直後で忙しいんじゃねーの?」
「今日は一日中『先生、大丈夫ですか?』しか聞かれませんでした。ついには『もう帰って休んでください』って……」
美月は「えへへ」と照れ笑いを浮かべた。
「あとは悠真の結果だけだな……」
「君はなんでも解決しちゃうからね」
「……?」
「まだ解決できていないことも……」
「解決してくれたらいいのに……」
(泣いた?)
ゆっくりと美月が近づいて俺の前に歩いてきた。
傘を美月の後ろへ落とし、くちびるを重ねてくる。
美月の口が離れると胸元に寄せられ抱き締められた……
力強く、震えながら彼女の精一杯の力で。
そして耳元でそうささやかれた。
「夜中にビール飲みたくなったらいつでも来いよ」
「んっ、ああ、まぁ……」
「!?」
(ぬあっ!)
美月に抱きしめられながら、ふと、自宅を見たらリビングの窓からコイツの親父が母親の肩を抱き、銀河系の映画のエンディングみたいになって見ているぞ!
(うわぁ……目を潤ませて何度も頷いている!)
さらにその横で下着姉ちゃんが、ポテチ食いながら、冷めた目で俺らを見ているだと!?
気づかない美月はもう一度俺にくちびるを重ねた。
「待っているね」
「ああ……また」
そして美月は車へ乗って帰っていった。
とんでもなく……ゆっくりと……
一章【ナイス・ガイの一学期】 おしまい




