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死刑囚、中二になる  作者: 凛1129
ナイス・ガイの一学期
13/47

一章 12 少年闇バイト探偵団

 五月十八日 木曜日

 

 中間テスト一日目が終わり、一息ついていると、尊くんがまた僕の席へやってきた。

「獅子丸くん……これ」

 小さなメモとミニメモリーカードを差し出す。

 

「盗聴から実行日も分かった。日曜日、午後十時」

 

「日曜?」

 

「ああ。あと、オペレーターは悠真先輩のさらに上。たぶん高校生じゃない」

 

「へぇ……」

 

「溝口くんを連れて行けないのを結構怒ってた。『十三歳が一人いれば、もっと良かった』って」

 

 嫌な言い方だ。

 

「だから悠真先輩、番人から叩きに回された」

「……終わったね、あの人」

 

 そう言うと、尊くんはいつものように不敵な笑みを浮かべ、自分の席へ戻っていった。

「う〜ん……」

 

 (番人?叩き?オペレーター?)

 何を言っているのか、さっぱり分からない。

 あとで調べるか。


「……?」

 席に着いた尊くんが、こちらへ向かって親指を立て、ドヤ顔をしている。

 

(……どういう意味だ?いつも龍馬さんは何やってたんだ)

 とりあえず僕も、親指を立て返しておいた。


 ◇


「闇バイトか!?」

 検索すると、闇バイトの用語で、悠真先輩が絡んでいることがわかった。

 集合場所が【運動公園の第二駐車場】

 あそこか……ちょっと遠い。

 叩きなんて実際に強盗したりする人じゃないか。

 

 (澪が昔、慕っていた人……だから龍馬さんは)



 五月十九日 金曜日

 

「ふぅ……何十年ぶりだ、中間テストなんて」

 テストが終わってもしばらく机に突っ伏していると、豪樹と優希が教室へ入ってきた。

「どうだったよ、テスト」

「ねっ、これから遊びに行かない?」

 

「あームリムリっ! 忙しいのだよ、俺様は」

 

「悠真くんのこと〜?」

 

「んっ? 優希らに言ったっけ?」


 豪樹と優希が、そろって教室の後ろを指差した。

 尊が親指を立てている。

 

「尊〜、今回は結構ヤバい橋だぞ?」


「アタシも聞いたよぉ〜」

 

「はぁ? 水樹まで?」

 いつの間にか水樹まで席へ寄ってきていた。

「獅子丸が疲れて帰ってきたら、癒やす係をしようかな〜」

 

「はぁ? なんで水樹が? それならアタシがやるし!」

 水樹と優希が、俺を挟んで睨み合う。


「アタシは小六から知ってるし」

 

「早けりゃいいってもんじゃないしー」

 

「ちょい待て! 俺様の話を聞け!」

 皆の視線が集まった。

 尊も、いつの間にかすぐ近くまで来ている。

 

「今回、奴がやろうとしているのは強盗だ。しかも、武器を持った素人集団がやる」

 

「素人なら大丈夫じゃない?」

 

「違う。素人だから、関係のない奴まで巻き込むんだ」

 机に手をつき、少し声を落とす。

「プロは対象だけを、気づかれずにやる。尊に頼るのだって、今回は憚ったくらいだぞ」

 

「憚った?」

 

「ああ、いや、躊躇した」

 

「躊躇?」

 

「いや、それくらい分かるだろ!」

 思わず机を叩いた。

「だから、子どもが関わる問題じゃないの!」


「?」

「獅子丸、お前も子どもじゃん」

「そうだー、子どもだー」


「わかった、わかった」

 なだめるようにとりあえず落ち着かせた。


「尊、ボツ案にしたあれ、まだある?」

「あるよ、ちょっと待って」

 尊は一度自分の席に戻り、一枚の用紙を持ってきた。

「澪ー」

 

 澪がこちらへ振り向く。

 

「ちょっと来い」


 澪が席に集まると、美月もやってきた。

「はい!先生も見ましょうかね」

 

「えー?」

 

「ムリー」

 

「生徒が危険なことしないか、チェックしないと」

 

「終わったー」

 

 美月は笑顔で言った。

()()()でしょ?獅子丸くん……」


 美月と視線を合わせ、目で頷いた。

「明後日だ!」


    五月二十一日(日) 作戦


 俺様   説得・最終判断(殴る)

 澪    悠真が家を出たら尊へ連絡

 尊    位置確認・情報収集

 豪樹   悠真の監視

      高校生以上とは戦わない

 優希   澪の安全確保

 水樹   尊の指示で自由に動けるようにしておく


「実はこれさっきも言った通りボツ案なんだ」

 

「なぜ?それに澪なら私が……」

 

「澪の気持ちがわかるからだ」

 

「優希の役割は澪を止めること」

 

「……」

 澪は黙って俯いている。

 

「豪樹はともかくとして、優希と水樹を関わらせるのも憚っ……躊躇した理由は、失敗した時も、自責の念を感じさせてしまうからな」

 

「そして、豪樹はともかくとし……」

 

「おい、なんで俺だけ『ともかく』なんだ」

 

「バカそうだからだ」

 

「かー相変わらず口がわりぃなぁ」

 皆、少し綻んだ。

 

「相手は闇バイト集団」

「だが、尊の能力がないと失敗した時のリスクが大きいから、尊だけには、手伝ってもらうことにした」


「ん?ちょっ待てよ、結局、獅子丸は、なにがしたいんだ?」

「警察に言えば済むだろ」

 豪樹は首を傾げて言った。

 

「闇バイトは本当に闇だ。実際に金を奪っていなくても、見張りや運転をしただけで、強盗の共犯として扱われることがある」


「見張ってるだけでも?」

 豪樹の顔から、さっきまでの軽さが消えた。

 

「十五歳の悠真が狙われたのは、成人より操りやすく、捕まった時には罪を押しつけやすいからだ」

 

「え〜でも十五歳なら、大人と同じにはならないっしょ?」

 

「へ〜水樹、詳しい〜ねぇ」

 優希が感心したように水樹を見る。


「そこまで知らんけどぉ」

  

「必ずそうなるとは限らねぇ。十四歳を超えていれば刑事責任はある。事件が重大なら、家庭裁判所から検察へ送られることもある」

 

「どーいうことぉ?」

 優希はこちらを見て首を傾げている。

 

「じゃあ、溝口が狙われたのは?」

「十三歳だからだ」

 机の周りが、一瞬だけ静かになった。

 

「そうか。十四歳未満なら、刑事罰には問われない」

 美月は手をポンッと叩いた。

「だからって、何をしても無事で済むわけじゃありませんけどね。家庭裁判所や少年院の問題になっちゃいますよ〜!皆さんも気をつけて!」

 

「それでも使う側からすれば都合がいい。捕まっても、自分たちまで辿り着きにくいからな」


「でもなぁ〜美月先生も聞いてるだろ?今、大人でどうにかなんねーの?」


 豪樹は美月に聞いた。

 

「それは……」

 

「動くと思うよ。俺様が知る限り、最低限はな」

 

 美月がわずかに眉を寄せた。

 

「悠真へ注意する。危険なら、施設の中で隔離する。だが、それ以上は難しい」

 

「警察は?」

 

「まだ事件は起きていない。警察は、起きるかもしれない強盗だけでは簡単に動かん」

 

 豪樹は納得できないように口を曲げた。

「じゃあ、施設でずっと見張ってもらえばいいだろ」

 

「いつまでだ?」

 

「えっ?」

 

「今日を防いでも、明日がある。明日を防いでも、一週間後、一か月後がある」

 

 机の上の作戦表を指で叩く。

「闇バイトの連中は、悠真が一人になる隙を待つ。諦めず、何度でも落としに来る」

 

 誰も口を挟まなかった。

「そこまで面倒を見続けられる大人はいない。それが現実だ」

 

「——獅子丸、悠真先輩と仲良かったっけか?」


「いや、想い出を守るため……」


 澪は少し離れたところで、そっと俯いた。

 その姿を、水樹が横目で見ている。


「やっ……やろうよ!」

 水樹が手を広げみんなに聞いた。

 

「ちょっ、水樹さん、この計画はボツ案だって獅子丸くんがっ」


「お〜やろぉー!」

 それに乗っかり、優希も手を上げた。


 尊はなにも言わないが、微笑んでいる。

 

「見る限り、アタシたちは闇バイトの連中と直接会わないんでしょ? だったら、やれるっしょ?」

 水樹はみんなを一瞥して焚き付けていた。

 

「夜中出歩いて怒られるのは、豪樹だけだしねぇ」

 優希もニヤついて豪樹を見ながら、言っている。

 

「俺はいいのかよぉ……ひでぇな」

 そう言いながらも、笑っている。


「許可はできません!」

 美月が皆へ言った。

 

「許可はできませんが……」

 そこで一度、全員の顔を見渡した。

 

「先生が駄目と言って、皆さんが本当に何もしないなら、それが一番です」

 

 誰も答えない。

 そんな美月を見て、口角が思わず上がってしまう。

 

 美月は小さく息を吐いた。

「でも、勝手に動くつもりなんでしょう?」

 

 水樹と優希が、気まずそうに視線を逸らした。

 

「だったら、何か困ったことがあった時は、すぐに私へ連絡すること。自分たちだけで抱え込まない。これだけは約束してください」


「「「おおおおお」」」

 

「流石、先生わかってるー」

「いやいや」

「カッコイイー」

「どうもどうも」

 

「今夜は寝かせねー」

 

「「「えっ?」」」

一瞬で空気が凍りつく。


 俺様の前に相変わらずエロッいボディを近づいてきて、腕を組んで見下ろしてきた。

 

 

「いいわよ?()まで! できるのね?」


 

「「「えーーー」」」

 

 澪も少しだけ笑っているように見えた。

 

 

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