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「鷹志とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第13巻)  作者: サナダムシオ


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⑤ コレクター

 モーツァルトの作曲の邪魔にならないよう、二人は早々に退出した。

「いかがですか?コレが証拠の一つですが。」

 サン・ジェルマンが鷹志に尋ねる。

「彼は確かにあのモーツァルトにしか見えませんね。」

 そう答えるしかない鷹志。 


「それはそうと、コレクションとは、どういう意味なんですか?」

「言葉通りの意味ですよ。私の趣味なのです。歴史上に散らばった才能を収集することが。」

「死んだ人間を生き返らせる?」

「いえ、連れて帰るです。」

「!?」


「各人物の生きた現場に行き、生死不明か、亡くなったのに遺体が見つからない人物を、です。」

「⋯…。」

「さらに言うなら、私の嗜好に合う人物だけを選定しています。」

「⋯…そんな。」


「ですから、その人物たちが、文字通り私のコレクション、という訳なのです。」

 サン・ジェルマンは、涼しい顔でとんでもない事を鷹志に語るのだった。


 二人はまたエレベーターに乗り、さらに上の階に上がった。

 扉が開くと、そこは地下駐車場のようだった。

 サン・ジェルマンは鷹志を一台のクルマの前に案内した。

 それはシルバーの車体色の、旧式のワーゲンビートルだった。


「そしてこちらがもう一つの証拠。私自慢のタイムマシンです。」

「えっ?」

「まあ、乗って下さい。」

 そう言うと、サン・ジェルマンは助手席のドアを開けた。

 続いて彼自身も左ハンドルの運転席に乗り込んだ。


 鷹志が車内を見ると、確かに見慣れない機器がセンターコンソールに並んでいた。

「実はバック・トゥ・ザ・フューチャーと言う映画に感銘を受けましてね⋯…。」

「ああ、その映画なら僕も観ました。でも、まさか⋯…。」

「その、まさかなんです。」

 サン・ジェルマンは、愉快そうだった。


「少しドライブに行きましょう。」

 彼はそう言うと、エンジンを始動した。

「いったい、どこへ?」

「どこへでも。何しろ、"道は必要無い"のですから。」

 彼はニヤリと笑った。


 ビートルはゆっくり駐車場から出ると、すぐにその場で垂直上昇した。

「ああ、そうそう、先程貴方にぶつけてしまったのは、このクルマです。重ねてお詫びします。」

 サン・ジェルマンは、今さら思い出したかのように鷹志にそう言ったが、今彼はもう、それどころでは無かった。

 

「クルマが空を飛ぶなんて!⋯…と言うか、目撃者多数ですよ?いいんですか?」

「大丈夫。光学迷彩で外部からは探知不能です。」

 そう言いながらサン・ジェルマンは、コンソールのボタンを何やら操作して、ギヤをドライブに入れた。


 車窓から眼下に見える、名護屋市栄町の風景が、滲むように流れ出した。

 クルマは確かに時空を越えつつあるようだった。


挿絵(By みてみん)

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