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「鷹志とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第13巻)  作者: サナダムシオ


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④ アマデウス

「このフロアには……。」サン・ジェルマンがまた話し出した。

「一種のゲストルームが並んでいます。」

「ゲスト?」

「別の言い方をすれば、私のコレクション・フロアなのです。」

 鷹志には、❝コレクション❞という言葉のニュアンスが何となく引っかかった。


「見たところ、歴史上の偉人たちの名前が連なっているようですが、ニックネームか何かですか?」

 鷹志が当たり前の疑問をぶつける。

「いいえ。とんでもない。各人のれっきとした本名ですよ。」

 サン・ジェルマンが"当然だ"という顔で答える。


「……そんな?」

「ただ、実はまだ空室が多くて。今後来ていただいた時に、くつろいでいただくために用意しているのです。」

 何だ、そうなんだ……って、今後呼ぶ気満々じゃないか!と心の中でツッコむ鷹志。


「……そうだ。モーツァルトは在室してますよ。お会いになりますか?」

「ええっ!?」

 サン・ジェルマンが躊躇なくドアの前に行き、ノックした。

 すると中から操作されたのか、自動で扉が開いた。


 部屋の壁には、完璧な防音設備がなされているのだろう。

 ドアが開くのと同時に、ピアノのような音色……いや、チェンバロだろうか?……美しいメロディが奏でられているのが聞こえてきた。


 そして、ブラウンを基調とした、落ち着いた雰囲気の部屋の中央で、鍵盤を叩いている人物は、35、6歳の白人男性……それはまぎれもなく、あの音楽室の肖像画でよく見たモーツァルトだった!

 ……いや、待て。まだソックリさん、てことも有りうる。鷹志が往生際悪く、そんな事を考えていると、その人物が手を止めて振り返った。


「ああ、お帰りなさい。サン・ジェルマン伯爵。そちらの若い方は?」

 それは訛りの有るドイツ語だった。

 鷹志は大学でドイツ語を専攻していたので、どうにか意味を掴めた。


「ただいま。アマデウス。こちらは杉浦鷹志君。彼も新しいゲストですよ。」

「はじめまして。どうぞよろしく。Herrスギウラ。」

「こちらこそ、どうぞよろしく。ああ、タカシでいいですよ。」

 鷹志は、かろうじてドイツ語で返す。


「今、ちょうど、新しいメロディが降りて来たところなんだよ。続けても良いかな?」

「どうぞ、どうぞ。おかまいなく。」

 鷹志はドギマギしてしまった。


 モーツァルトは再びチェンバロを弾き始める。

 聞こえてくる調べは新しい……でも紛れもなくあの、モーツァルトのメロディだった。今や鷹志は、この状況を信じるしかなかった。


挿絵(By みてみん)

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