② ファーストコンタクト
次に鷹志が目覚めた時は、眩しい光の中だった。ついさっきまでコガネムシになった夢を見ていたような……。
あれっ?僕はこの物語の主人公のはずなのに、登場するなり早々に、天国に来ちゃったのかな?……ああ、でも❝ドラゴンボール❞の例もあるし、すぐに生き返って、どうのこうの……というストーリーも有り得るな。
などと混乱する頭で、彼はアレコレと想像を巡らせていたが、すぐにソレが手術室の照明だと察しがついた。ああ、コレ、ドラマでよく見るやつだ。中二のころに見たなあ……確か❝白い巨塔❞だっけ?
すると彼が寝ている足元から、人影が覗き込んできた。
銀髪で色白の……白人の男性かな?
年齢は30代半ばくらいか?
照明が眩しくてよく見えないな。
鷹志は素早く、相手の様子を見極めようとする。
この場面にも既視感があった。
確か❝ウルトラマン❞か❝仮面ライダー❞の第一話だったか……。
「目が覚めましたか。良かった。一時はどうなることかと……。」
その男が喋り出した。
「あなたには大変申し訳ないことをしました。打ち所が悪かったのでしょうか?しばらく意識が戻らないので、仕方なく、特別な処置をさせていただきました。」
「貴方は誰なんです?それに……僕に何をしたって?」
鷹志は慌てて、事態を把握しようとする。
「私はサン・ジェルマンと申します。貴方は…⋯先程無断で免許証を拝見しました…⋯杉浦鷹志君でよろしいですね?ここで難しい化学式を申し上げても、理解に苦しむと想像されるので、平たく端折って言うと、先ほど貴方に、イモリの細胞分裂の原理を応用した、ワクチンを一本打ちました。」
「えっ!?」
鷹志は驚いた。いや、驚きの二乗だった。
「サン・ジェルマンて、あのサン・ジェルマン?タイムトラベラーで、不老不死の……。」
「はい。そうです。私がその、サン・ジェルマンです。」
まるで❝変なオジサン❞みたいな口調で言うんだな、と鷹志は思った。
「それで…僕に何を打ったって?イモリの細胞?」
「……を元にしたワクチンです。急速に細胞を修復する効果があります。まあ、❝プチ不死身❞になったと思ってください。」
「へえ~そうなんだ。って、ええっ!?」
驚きと恐怖の波状攻撃のせいで、鷹志は思わず飛び起きてしまった。
「すっかり元気なようで何よりです。」
サン・ジェルマンはニコニコしている。
今や鷹志は、状況をしっかりと把握した。
交通事故に遭ったあげく、得体の知れないガイジンに、得体の知れない処置をされてしまったぞ?
コレは訴訟案件では?と、鷹志は考えを巡らせた。
「ひょっとして、私の事を警察に突き出しますか?」
まるで鷹志の考えが読めたかのように、サン・ジェルマンが言った。
「でも、もう貴方はすっかり元気だし、目撃者の記憶も……いえ、何でもありません。」
「……?」ナニか引っ掛かる鷹志。
「それでは、こうしましょう。貴方が読んでいた本から察するに、生命科学が御専門でしょう?それなら、私の研究所でアルバイトとして採用しましょう。
給料は手取りで月々30万円。現金でいかがですか?」
「……ずいぶん高給じゃないですか。口止め料も兼ねているとか?」
「解釈は自由です。」
相変わらず笑顔を絶やさないサン・ジェルマンである。
資金が必要な鷹志には❝渡りに船❞の話だった。
それに正直に言うと、彼は幼少期からサン・ジェルマンの伝説を知っており、そのファンでもあったのだ。




