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「鷹志とサン・ジェルマン」(セーラー服と雪女 第13巻)  作者: サナダムシオ


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12/13

⑫ ポーカーフェイス

「杉浦鷹志君という友だちが居ることは、昔、お兄ちゃんから聞いて知っていたの。」 

 よく喋る少女は話し続ける。

「⋯…でもまだ名前と顔が一致していなかったから、さっき貴方が名乗った時は、正直、驚いたのよ。」

「⋯…そうだったんだ。」

 この子、実は中々のポーカーフェイスなんだな、と鷹志は思った。


「ウチのお兄ちゃん、当時つきまとわれていた、雪子さんのことまで相談したらしいじゃない?あなた、余程聞き上手なのね?」

 確かにそうなのだった。鷹志はあの頃、一緒に勉強する合間に、雪村からよく、謎の少女雪子の話を聞かされていたのだ。


 ただあの頃は、受験勉強の疲れから、半ばノイローゼ気味の妄想話かな、とも思っていたのだが⋯…その後も中学校を卒業するまで、彼が似たような話を繰り返していたので、鷹志としても、気にはなっていたのだった。


「まあ、私もベラベラ喋っちゃったけど⋯…だって貴方はイイ人よね?私には分かるの。」

「⋯…さあ、どうかな?」


「ねぇ。サン・ジェルマンなんかの言いなりにならないで。私の味方になって。」

「僕だって、そもそも彼の言いなりになんか、なるつもりは無いよ。」

「ホントに?もうすっかり、彼の術中にハマっているのに?」


 そう言われてみれば、確かにそうかもしれない。何だか、あれよあれよと言う間に、ここで働くことになってしまった。鷹志はあらためてそう思った。


「ねぇ。貴方が遭遇したアクシデントって、どんなモノなのかしら?そこからもう、彼の仕業かもしれないのよ?」

 ⋯…あの交通事故か。確かに自分らしくない、注意力散漫な感じだったな。由理子に言われて、鷹志の心の中にも、違和感が出て来た。


 そうだ。彼は時間の魔術師、サン・ジェルマンなのだ。その気になれば、止まった時の中で、好きなように活動することもできるはず⋯…?


「⋯…ずいぶん仲良くなったようですね?」

 突然、背後から声をかけられて、二人ともビクッとしてしまった。

 いつの間にか、サン・ジェルマンがフロアに戻って来ていたのだ。


 彼は相変わらず、笑顔だった。

 今となっては、その微笑みも何だか怖い。

 油断していた。まったく気配を感じなかった。

 鷹志は心の中で舌打ちした。


「このフロアでの仕事は覚わりましたか?」

「…⋯え、えぇ。何とか。」

 鷹志はどうにか平常心を装った。

「バッチリです!」

 由理子がウインクして答える。

 やっぱり、この娘のポーカーフェイスは凄いな。

 鷹志はあらためて、そう思ったのだった。


挿絵(By みてみん)

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