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第118話:【新しい一歩】騎士の休息――自分を救ったら、世界が広がりました


アイリス・ヴォルガの「トリアージ配信」による衝撃は、ましろの時以上に数字として現れました。


これまでの「全肯定してくれるお姉さん」を求めていた層がごっそりと離れ、登録者数は数万人単位で減少。


ネット上では「アイリス終了」「性格が変わってオワコン化した」と叩かれました。


しかし、当の本人は、以前よりもずっと晴れやかな表情で画面の前に立っていました。


現在のアイリスの配信は、きっかり1時間で終わります。 かつてのような睡眠時間を削った深夜配信は一切なくなり、規則正しい生活を取り戻した彼女の肌はツヤを増し、瞳の充血もすっかり消えていました。


「……本日のお悩み相談はここまでです。これ以上は私の集中力が持ちませんし、あなたたちの貴重な時間を奪うことにもなりますから。残りの時間は、有意義に使いなさい」


そう言って配信を切った後の彼女が向かうのは、これまで「自衛官だから」「配信者だから」と自分に禁止していた、趣味の世界でした。



アイリスが新しく始めたのは、意外にも**「お料理配信」**でした。 それも、ただの料理ではありません。


「本日は、災害時でも美味しく作れる『ミリ飯(軍隊食)』をアレンジして、スイーツを作ります。……規律は大事ですが、たまには糖分を摂取して自分を甘やかすことも、生存戦略には不可欠です」


真剣な顔で計量カップを握り、時には分量を間違えて「……くっ、想定外の事態です」と耳を赤くして焦る彼女の姿は、以前の「完璧なマシーン」だった頃には絶対に見られなかった人間味に溢れていました。


コメント欄:  

コメント:「アイリスちゃん、料理してる時の方が楽しそうw」  

コメント:「『想定外の事態(砂糖入れすぎ)』で草。かわいい」  

コメント:「健康そうになって本当によかった……」


数字は減りました。しかし、残ったリスナーたちは、彼女の「幸せそうな姿」そのものを楽しむコアな層ばかりになっていました。


佐藤家のテラスで、アイリスは咲子にお手製のスコーンを振る舞っていました。


「おほほ。少し焼きすぎではありませんこと? でも、以前のあなたの『焦げついた顔』よりは、ずっと美味しそうですわね」


咲子の言葉に、アイリスは照れくさそうに微笑みました。


「はい。誰かを救う前に、まず自分を救うこと……。それがこれほど世界を明るく見せてくれるとは思いませんでした。……咲良様、私、この『自分を大切にする騎士道』を、これからも貫いていくつもりです」


「よろしい。……自分を犠牲にする正義は、ただの自己満足。自分を愛し、余裕を持った者だけが、本当の意味で他者の盾になれるのですから」


アイリスは、胸の「黒いリボン」に手を置きました。 かつては「罪」だと思っていたその色が、今では「自分とリスナーとの適切な距離」を守る、誇り高き境界線のように感じられました。


【実況板】アイリス、最近めちゃくちゃ楽しそうじゃね?

1:名無し

アイリスの料理配信、最高だったわ。 砂糖と塩を間違えてパニックになってるの見て、初めて「あ、この人も一人の女の子なんだな」って思えた。


2:名無しのVオタ

登録者数は減ったけど、同接(リアルタイム視聴者)の熱気がすごい。 スパチャのメッセージも、依存っぽいのが減って「アイリス、今日は何して遊ぶの?」みたいな前向きなのが増えたよな。


3:名無しの考察王

ましろが「本音」を掴み、アイリスが「健康と余裕」を掴んだ。 自分を削ることをやめたライバーは、強い。 さて……次はたぶん「ネットの要塞」に引きこもるHALだ。 一番の難攻不落だけど、咲良さんはどう攻めるんだろうな。



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