援軍来たる?(2)
(これが子供の柔軟性か)
タイキは驚愕する。
コウヤとアスホが前に出るのに合わせてシュカが続く。少年が右手、少女が左手にブレードをかざして接近し、フォルセアのアームドスキンを左右に撫でながら通り過ぎる。
リフレクタとブレードでいなした機体は正面でシュカが照準しているのに気付くが遅い。右のショルダーユニットを吹き飛ばされて錐揉みする。
「牽制だけじゃなく、もっと確実にいってよ」
とどめを刺した少年の声が震えている。
「なんだよ、花道を譲ってやったのに」
「あんなもんでしょ。早く、次つぎ。周りは敵だらけなんだから」
「急ぎすぎだって!」
シュカはまだ怖ろしいようだ。
一方、タイキの傍にはエイマとフユキ。防御に難の出ているライバーンを守護するように位置している。
「うるさい」
フユキがぽつりとつぶやく。
接近する構えを見せていたメタリヤ戦闘機の翼が切り離されると回転しながら逸れていく。対物レーザーで焼き切られたらしい機はパイロットを放出して墜落していった。
それを見たメタリヤ航空隊は接近を躊躇する。そうなれば遠距離からのミサイル攻撃ばかりになり、ものの数ではない。
「ライバーンの機体状態を……、って、あんまり良くないじゃん」
モニターしたエイマが苦言を呈する。
「冷却ジェル残量30%切ってるし、対物レーザー何ヶ所か死んでるし、左前腕装甲にダメージね」
「退かないぞ、俺は」
「はいはい、解ってる。フユキ、そのつもりでね」
少年は「うん」と答えるのみ。
「リシュ・クルも移動をはじめた。フォルセアだってもう少し削れば撤退判断を強いられる」
「相手が動揺しているうちに戦闘不能にしてくよ」
「近付けない」
かすめるようにデレイフ機が迫る。対処に困っているようでリフレクタを撫でていくだけ。
くるりと旋回したフユキがほぼノールックで両手で二射。回り込もうとしたデレイフを突き放す。
「くっ! ぬおぁ!」
リフレクタの反動でたたらを踏んでいる。
「タイキ、お前、子供を盾に。見損なったぞ!」
「そんなことするか! あんたの相手は俺だ!」
「おおお!」
突き出されたビームランチャーを蹴り上げる。横薙ぎの一撃を平手で受けながら踏み込んで脇に取る。折ろうとしたが噴射でついてきた。
左手を組みつかせ絡み合う。膝を打ち上げて浮かせようとするが膝同士で相打ちになっている。
「やってくれる!」
「そうかよ!」
そのままではどうにもならないので、どちらからともなく離れた。
「よけて」
「でっ!」
「うおあっ!」
横っ飛びしたライバーンの後ろからフユキの斬撃。なんとか弾いたかと思えばエイマの狙撃が待っている。
「くぅっ! 援護を!」
「あんたこそ音をあげてる」
「それは本当に子供なのか?」
それには同意する。
タイキは生徒のコンビネーションの良さに舌を巻いていた。
◇ ◇ ◇
「なにをしているか解っているの、あなたたち!」
「解っています。でも、今はタイキ先生の援護が優先されますのでのちほど」
ハユミは立ち上がって注意するもザイハに説得されてしまった。二の句が継げず口をパクパクさせて結局着席する。
(どうすればいいの? アームドスキンに乗っていってしまった生徒にもしものことがあったら親御さんにどう説明すればいいか。黙って行かせてしまってタイキ先生にも申し開きができない)
責任者の義務を放棄したようなものだ。足を引っ張るだけでなく子供になにもかも負わせてしまうのか。本当にそこにいる意味がなくなってしまう。
「私、こんなにも駄目だったなんて……」
顔を伏せて小さくつぶやく。
「一人前の教師になったつもりだったのに。父兄の前でも教育者として恥じることのない人間になれたと思ったのに。こんなところでお荷物になってる」
守ることもできない。導くこともできない。手本になってあげることもできない。どうしようもない役立たずだ。
(せめて助けになることを……)
懸命に見回す。
ナビゲートしている五人の生徒たちは目一杯働いている。練習はしていたようだが実戦となるとコンビを組んだ相手の命をも背負っているのだ。必死になるのも当然。
(目の前しか見えてない?)
彼らは目前に表示したパネルにかじり付きになっている。
(危ない状態。視野が狭くなってるんだわ)
速やかな対策が必要である。即座に止めさせるのが一番だろうが、そうするとすでに出撃している生徒を見殺しにするようなもの。絶対に避けなければならない。
「誰かが教えてあげないと。私が?」
教えてどうするのか? 危ないからやめろと言うのか? では、どうすればいいというのか? なんの対策もなしに口だけ挟めば邪魔なだけではないのか? 葛藤だけがハユミの中で膨らんでいく。
「わ……たし……」
プレッシャーに泣きそうになる。視界がゆがんで見えてきた。
(あれ?)
霞む視界の中になにかヒントを見つけたような気がした。見られている。艦長席の前にいるリュセルにだ。彼女はまた意味ありげな目つきでハユミを眺めている。不要品を見るような、と思ったのは卑屈になっていた所為だ。
(今は私だけが戦場を広く見ることができる!)
「リュセ、中継子機で戦場全体を観測して大型パネルに表示させて」
「了解なん。模式化して表示するのん」
最高の笑顔で応じてくれる。
(これ! 正解だった!)
ハユミは目を皿のようにして大型パネルに見入った。
次回『援軍来たる?(3)』 (難しく考えることはないのね)




