援軍来たる?(1)
衝撃で視界に星が散る。気付くとライバーンはデレイフのエテルギームに組み付かれていた。
(しまった!)
タックルを引きはがす前に次が来てしまうとタイキは悟る。
(集団で押さえ込まれるくらいならビームガンで?)
苦渋の決断が必要だと考えた瞬間、集まりつつあるフォルセア機がビームで追い散らされた。思いがけない援護に次のアクションをためらう。
「ぼくらの先生を放せー!」
(な、この声!?)
無口であまり聞くことがないが印象的な響き。
「フユキ?」
まだ九歳の少年の声。
「まさか」
接近してくるのは見慣れない機体。ライバーンと似たフォルムを持つがふた回りは大きい。20mくらいある標準的なボディ。
ベースは緑色に彩色されていて黒のラインを配したものと黄色のラインを配したものが混じっている。そして唯一銀色のラインを施された機体が先頭に立っていた。
「新型!? 五機も!?」
デレイフが驚いている。
「待て! あの戦闘艦にはタイキ以外の男はいないと聞いている。まさか子供が乗っているのか?」
彼と同じ結論に達した相手を引きはがす。お互いに動揺していてそれ以上の行動をためらっていた。
「全機、撃破は禁じる!」
鋭く指示を飛ばしている。
「不慣れな子供だ。押さえ込んで鹵獲!」
我に返ったフェルシムが始動する。ところが前後に長い方形の頭部がぬるりと動いて見逃さない。
ライバーンのように切れ込みに配されたレンズアイが二つ並ぶ。金色に瞬いたかと思うと、いつ動いたかと思うような自然な動作でビームガンを持った腕が突き出された。
「げ! 回避!」
困惑するデレイフ。
流れるように放たれたビームが一機の頭部を破砕した。同時に他の新型機もビームガンを手に砲撃を開始。予想外の事態に対応の遅れたフォルセア機の手足を貫いていく。
「フユキ、突出しない! ちゃんとフォーメーションを守る!」
エイマの声。
「うん、お姉ちゃん」
「他もよ。タイキ先生に心配させるようじゃ意味ないんだから」
「任せとけって!」
コウヤが吠える。
「あんたが一番心配」
「マジか!」
「ほんとほんとー」
アスホの声まで割り込む。
「僕には突っ込む度胸なんかないからね」
「練習どおりフォローよろしく、シュカ」
「って、こらー、フユキ!」
ライバーンの脇を縫って銀色ラインのアームドスキンが前に出る。ほとんど無挙動から撃つビームをデレイフ機が避ける。死角へと回り込もうとしたエテルギームをフユキの銃口は正確に追っていた。
「冗談はよせ!」
思ってもいなかったらしい狙撃にデレイフがリフレクタをかかげて後退。ライバーンは新型機に囲まれて、この戦闘で初めてと言っていい安全が確保されていた。
「君らは……」
有ってはならないことが起こっている。
「話はあと、先生。今は撃退するのが先」
「それでもな!」
「なにができるの? そんなボロボロの機体で」
痛いところを突かれる。
「危ない目に遭わせるわけには……」
「空き時間にはずっと練習してたんだから大丈夫」
「見えてなかったのは俺なのか」
守っているつもりが守られた。そんなことをしようとすればタイキが止めると分かっているから内緒にしていたのだ。彼の身を削る激闘は、それほどまでに生徒の心をさいなんでいたのかと悔やむ。
「分かった。まずは逃げ延びるぞ。それからだ」
「うん、それそれ」
エイマは嬉しそうに答える。
(ここまでして無事に帰せないようでは自分を教師だなどと言えない)
タイキは気を取り直した。
◇ ◇ ◇
「コウヤ、警戒して」
セリナがインカム替わりのσ・ルーンに呼びかける。
「フォルセアも態勢を立て直しはじめてる。来るから」
(なにをやっているの、この子たちは? あのアームドスキンは?)
ハユミは呆然と艦橋の様子をうかがう。
少し前に緑の家底部から発進したと思われたアームドスキン五機が戦闘しているあたりへと向かっていった。引きずられるように近辺のフォルセア機やメタリヤ戦闘機も追っていく。
「エイマ、もうちょっと見回すように意識を」
ザイハが指示している。
「こちらで状況がつかみやすくなるので」
少年の冷静で丁寧な言葉遣いがハユミの心までも鎮めていく。ようやく見回す余裕ができてきた。
「気合い入れなさいよ、シュカ!」
タマテは檄を飛ばしている。
「ほんとなら、先生を助けにそこに行きたいのはぼくのほうなんだから!」
あの軽佻な少女とは思えない口調。本気であると感じさせる。
「アスホ、ぼくからも見えてるから落ち着いて」
クストは穏やかに言い聞かせている。
「君が見えてないところはフォローするからね」
とても十歳の少年とは思えない振る舞いだ。驚くほど慣れた感じをかもしだしている。
「フユキ、そんなに速く動いたら目が回っちゃうよ」
ササラは困惑した様子。
「うん、こっちで広く見てるから安心して行っていいよ」
意気込んではいるが、なぜか空気に調和を覚える。手慣れた感じがそう思わせているのだろう。
(この子たちはコンビで?)
先ほど駆けだしていったエイマたちがあの新型アームドスキンに乗っているのだと解った。
(いつの間にこんなふうに? こそこそしていたのはこれのこと?)
疑問は解けたが、異常な状況にハユミは立ち上がった。
次回『援軍来たる?(2)』 「タイキ、お前、子供を盾に。見損なったぞ!」




