援軍来たる?(3)
「リュセ、私がマークした相手の……」
「相対位置をナビオペに送るん。ハユミは監視に集中すればいいん」
「お願い!」
実映像と違って模式化されているので全体の流れはつかみやすい。その中で流れと違う動きをしているのが危うい敵になる。皆が不意をつかれないようにするには、そういう敵の接近を事前に教えてあげること。
(と言っても、慣れてないから全部を見続けるのは無理ー!)
心の中で悲鳴をあげる。
リュセルにサポートを頼むべきかと思うが、彼女も突っ立っているようで複雑な処理を裏側でしているはず。他の誰かにと思うが、手空きの者など……。
(いた!)
「ネリネ、ニッケ! 先生を手伝って!」
忙しい少年少女を切なげに見つめていた二人を呼ぶ。
「手伝うー!」
「やるやるー!」
「分割したパネルを送るから、おかしな動きをするマークがあったら全部タッチしていって」
その言葉でリュセルが全部処理してくれる。あまつさえ、シミュレート映像を作って要領を伝えてもいた。
(難しく考えることはないのね。判断だけすれば、ちゃんと段取りはしてくれる)
彼女はそう教えてくれていた。システムは判定はしても判断はしない。判断するのは人間で、指示さえすればいくらでもサポートはしてくれると。
(馬鹿だった。いっぱいヒントはくれていたのに気付けないなんて)
一人焦って悩んで堂々巡りをしていたのだ。今思えば本当に愚かだった。
「ありがと、先生! シュカ、右!」
「助かります、ハユミ先生。エイマ、左後方に注意を」
「コウヤ、前ばっかり見てないで上を見なさい。先生、お願いします」
役に立てているのが嬉しかった。ひいては生徒を無事に迎える助けになっている。これこそが自分のすべきことだったと実感できた。
「どんどん送るから伝えてあげて。みんなで戦場にいる人を助けるのよ!」
「はい!」
綺麗な唱和が返ってきた。いっそう気を引き締めて戦況パネルを注視する。
(なにかできあがった感じ)
ハユミは一体感に高揚を覚えていた。
◇ ◇ ◇
(なんだ? 戦場の空気が完全に変わった)
デレイフ・クアンは奇妙な感覚に襲われる。
整然と機能していた部隊の動きが突如として崩れはじめた。確実にリザードを追いつめ、逃げ道を塞いでいたはずが穴だらけになっている。
母艦が来ていないのでフォローもない。損傷した機体は帰すしかなく、場合によっては小破機が中破機の随伴をしなければならない始末。穴はみるみる拡大していっている。
(侮れない新型。これほどの性能差)
まるで寄せつけない。
(いや、これほどの戦闘能力というべきだ。相乗効果と考えろ。読み違えれば大敗する)
彼の戦闘勘はそう告げている。
特にシルバーラインを持つ新型は脅威でしかない。すでに十機近いフェルシムが離脱を余儀なくされている。
「すでに読み違えているか。相手は一機と侮り、母艦の随伴を不要と判断した時点で計算が狂ってる。今は無理するとこじゃないな」
彼は手控えする。
全体を見る指揮系統がない。それぞれが独自の判断で行動している。唯一機能しているデータリンクも自軍機同士を繋げているにすぎない。
「誤ったな」
「どうします、隊長。こいつはちょっと難しくなってきちゃいましたよ?」
部下にも読めるような悪い流れだ。
「そうは言ってもな、同盟国機を放り出して撤退するわけにもいくまい? 連中に連絡する手段もない」
「ハイパワー無線くらいしか」
「いや、そもそも現場の奴らには言葉も通じんときてる」
それでいてターゲットとは意志疎通できるのだから皮肉としか言いようがない。いったい誰のために戦っているのか分からなくなってくる。
(文化の違いでジェスチャーさえ通じないんだからな)
ビームランチャーを上に振る撤収動作もメタリヤ航空機には理解されない。
(そもそも別系統の命令で動いている時点でおかしな話なんだよ。上層部もいいかげん地位協定でも結んで縛りつけにいってくれ。邪魔されてるようなもんじゃないか)
あまり機動性を活かすとミサイルが飛んでくる。航空機とアームドスキンでは旋回性能に差が有りすぎて偏差計算が追いついていないようだ。
「あー、もう。手を結ぶ相手を間違ったんじゃないのか?」
愚痴りたくもなる。
「どうにもならんでしょう。第四惑星一の大国がメタリヤで、連中が諸外国を制してみせると言ったんですから」
「ビッグマウスもいいとこだ。子供の集団さえ制しきれてないじゃないか」
「全部が狂ったんですよ、あの緑の戦闘艦の存在で。いったいどこのどいつがあんな厄介なのを送り込んでくれたんですかね?」
それを調べるのが彼らの第一の任務である。
「どこの運命の女神か知らんが、もてあそぶのはやめてくれと言いたい」
「美人なら歓迎ですけどね」
彼らもまさか幼女だとは知る由もない。
諦めモードで時間稼ぎしているとメタリヤ航空隊が帰投していく。どうやら弾切れらしい。
「よーし、退くぞ。対応の練り直しだ。これ以上、つき合ってられん」
デレイフは全機に呼びかけさせた。
◇ ◇ ◇
後退するフォルセアのアームドスキンを見送る。タイキは一気に力が抜けた。思えばずいぶんとシェイクされてそこかしこが痛い。
「追い払ったぞ!」
「おー!」
生徒は盛り上がっている。
「意気軒昂なのはいいが、戻ったら話がある」
「うひ! 疲れたでしょ、タイキ先生。ゆっくり休んだら?」
「ゆっくりできないのは誰の所為だ?」
大きな問題がタイキを待ちかまえていた。
次回『緑の戦隊(1)』 「そんなの酷だよ!」




