1-3 魔王、初めての依頼を受ける。
「…この辺りか?」
ウルカの街から少し離れた平原まで来た。
自称神様の勧めで、冒険者ギルドにて魔物討伐の依頼を受けたからだ。
依頼内容はスライムの討伐。
初心者冒険者用に冒険者ギルドが常設している最低ランク(難易度)の依頼の一つだ。
『…そろそろその『自称神様』呼びはやめてほしいかな』
「そう入ってもなぁ。
そもそも名前教えてもらってないし」
『…エリス。
それが私の名前よ。
魔と夜を司る女神、エリス』
「じゃあエリス。
とりあえず俺の心の中を読み取るのを止めてくれないか?」
この女神エリス様と心の中会話が出来るのは、こいつが俺の意思を読み取っているからだ。
つまり今の俺にはプライベートというものは存在しないのだ。
異世界の万能ナビには非常に助かっているのだが、この点はいずれ改善しなければならないだろう。
『そうだねぇ…貴方の魔力が増えて、それに乗じて私の魔力量も増えたら、私が魔神として独り立ちする形で顕現できるよ。
そうしたら自分の身体を構成するくらい出来るだろうし。
だから頑張って強くなってね』
「でも俺は魔力量を増やせないんだろ?」
『通常の手段ではね。
普通ではない、魔王である君だけの手段で強くなっていくしかないね』
「どういうことだ」
『魔王である君は従えている魔物のレベルが上がる度にその魔力量が増えていくんだ。
つまり君が強くなるには、魔物を仲間にして、仲間となった魔物に強くなってもらうことが当面の目標になるだろうね。
そのためにも、テイマーというクラスを持った冒険者という身分が必要だったんだ』
「そして、俺が強くなる第一歩が、この依頼か?」
『そう、この世界における最弱かつ鬼門たる魔物であるスライム。
これを仲間とするには、この依頼が丁度よかったんだ』
そうこうしている間に、目の前に魔物が飛び出してきた。
半透明な粘液の塊で、その本質は魔力の煮凝りと言える魔物の原点。
まるで生物がそうして進化したように、魔物の原初もまた、単細胞の原生生物に似通った姿形と性質を持っている。
『とはいえスライムという魔物も侮れないよ。
物理的にも魔力的にも脆弱ではあるものの、その行動原理は魔物そのものだ。
あらゆる生命に襲いかかる上、その生命力は通常の生物とは比較にならない。
初心者冒険者が容易に討伐依頼を受けて返り討ちにあう定番ですらある。
決定的な攻撃力と、その他様々な能力が欠けているだけで、紛れもなく彼等も人類の天敵たる『魔物』なんだよ』
目の前で威嚇するようにプルプルと震えている粘体が、どうやら俺の仲間第一号らしい。
『…一応、私は君の仲間のつもりなんだが?』
神様を仲間と呼ぶのは恐れ遠いなぁ…
『そんな寂しいことを言わないでくれ。
私の眷属は今のところ君しかいないんだ。
私にとって君だけが頼りなんだよ』
「分かったよ、仲間第一号。
それで、ここからどうすればいいんだ?」
『そうですね!
まずはある程度弱らせてから、動きが鈍った隙に貴方が魔力を与えれば仲間になると思います!
要はポ◯モン方式ですね!』
なんだかはっちゃけてきたな。
思ってたよりもチョロい女神なのかもしれない。
『なんだか失礼なことを考えられてる気がしますが…
とにかく適当に殴りつけてみてください』




