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乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった【第三章◇進行中】  作者: かみながあき
第二章◆初等部編

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五話◇元気な花を咲かせて

調べるの、普通に楽しかったな

 

「アシェルさん……わたくしの大切な花壇のために、手をお貸しなさい!」

 

 

 高らかにそう告げたオリアナ嬢から、半ば押し付けられるような形で引き受けた、"月涙草の異変"についての課題。

 僕は早速、その日の放課後にクラウスとゼノを連れて例の花壇をもう一度見に行って、植物の様子を観察してみることにした。

 

「クラウス……。この花弁のくすみってさ、単なる水やりとかの問題じゃなさそうだよね?」

 

「そうだね。水は十分に行き届いているようだし、日当たりも悪くない。花壇の土壌を魔法で温めることも可能ではあるけど…………このくすんだ青色は……魔力の淀みなのかもしれない」

 

 僕の何気ない問いかけに、クラウスは質問以上の鋭い考察を返してきた。

 さすが『知力』パラメータが必須条件の攻略対象なだけあって、彼自身も博識なんだなぁと感心する。

 

 ゼノは、僕たちが土を触るたびに清潔な布を差し出してきたり(クラウスに至ってはゼノが手ずから拭っていた)。

 邪魔にならないようにさり気なく周囲を警戒したりと、相変わらずの献身ぶりを発揮していた。

 

 僕は花壇の隅のほうの土を少しだけ採取して、簡易的な魔力測定の術式を組んでみた。

 たしか月涙草って、前世のゲーム設定では"月光の魔力を好む特殊な薬草"だったはず。

 そして、この学園の魔法理論は『魔力は土壌を通じて植物にも吸収される』という考え方が主流だから……。

 

 そんなことを考えているうちに、測定結果が分かった。

 

(やっぱり変なところがある……)

 

「ねえクラウス。この花壇の土壌、周囲と比べて光属性の魔力が極端に欠乏してるみたい」

 

「……光属性の魔力だけが極端に少ない?土壌の魔力バランスが、そんなに偏るなんて……なんだか不自然だね」

 

「うん。この花は月光を浴びることで、必要な魔力を土壌から取り込んでるよね?だけどこの中等部のエリアは、初等部よりも周囲の生徒たちが使用する魔法の属性が多様化してて…………特に、土属性や闇属性の魔法の影響が、無意識に土壌のバランスを崩しちゃってる可能性があるんじゃないかな」

 

 この世界の魔法理論と、ゲームの設定として得ていた月涙草の知識。

 それらを合わせた僕の分析を聞いたクラウスは、目を見開いて、穏やかな笑顔の下に隠されていた研究者としての好奇心を覗かせた。

 

「アシェル君、君は本当に興味深い人だね。ただの座学だけでなく、実地での分析力も素晴らしいなんて」

 

「……褒めすぎじゃない?でも、ありがとう。クラウスの最初の考察のおかげで、早く原因にたどり着けたよ。ゼノも色々とサポートしてくれてありがとう!」

 

 そして僕は、解決策として『魔力バランスを整えるための微弱な光属性の魔法を定期的に土壌に施すこと』を提案した。

 この作業は、クラウスの得意属性である光属性の魔力が活かせる作業で。

 もともと植物にも強い関心があるらしいクラウスは、自らその役目を買って出てくれた。

 

「アシェル君、僕は君と友人になれたことを幸運だと思うよ。君は、僕が知りたい世界に、こうして手を引いて連れ出してくれる」

 

 僕は、握手を促すように差し出されたクラウスの手を握り返す。

 ゼノはそれを見て一瞬顔を顰めて身じろいだけど、クラウスの嬉しそうな顔に、静かに見守る姿勢に戻った。

 

 クラウスの好感度が上がるとゼノの好感度は下がるんだろうか。

 それとも、本当は地味に上がっているんだろうか。

 別にゲームのつもりでもないし、そういう意味で攻略してるつもりもないけど、ふとそんなことを思ってしまった。

 

 

 ◇    ◇    ◇

 

 翌日。

 僕は高等部の校舎前でオリアナ嬢が通るのを待って、いち早く分析結果を報告した。

 

「オリアナ嬢。月涙草のくすみは、土壌の光属性魔力の欠乏が原因でした。クラウス王子が定期的に魔法を施してくれるので、すぐにでも元に戻ると思いますよ」

 

 僕の報告を聞いたオリアナ嬢は、驚きと、どこか安堵の入り混じった表情を浮かべた。

 

「そう……今回は完全にあなたの手腕に救われましたわ。本当に、ありがとう。でも、まさかたったの一日で原因を見つけ出してしまうなんて…………アシェルさん。あなた、あの方の弟御なだけあって、とても優秀なんですのね」

 

 そんな風に、彼女は僕が予想していたよりずっと素直なお礼の言葉を述べた。

 そして僕を単なる「中等部生の後輩」ではなく、オリアナ嬢にとって、カーティス兄様の弟として相応しい「優秀な人物」として認識してくれたらしい。

 これって実は結構すごいことかも……。

 

 オリアナ・ブルクハルト公爵令嬢という、あらゆる面で強い影響力を持つ人が、アシェル・ガルブレイスを個人として認めてくれた。

 この事実は、僕が少しでも早くダリルさんに意識してもらえるような一廉(ひとかど)の人物になるために、きっとプラスに働くと思う。

 

(別にそんな下心で動いたわけじゃないけど、棚ボタ的な……?えへへ、ゲームだったら『名声ポイントアップイベント』みたいな感じかも……)

 

「お役に立ててよかったです。ところでオリアナ嬢、わざわざ中等部まで様子を見に来るなんて、あの月涙草になにか特別な思い入れでもあるんですか?」

 

 ふと、気になっていた事を聞いてみると。

 オリアナ嬢は怒っているみたいに唇を引き結んで、わずかに視線を背けた。

 ほんのり頬が赤くなっているところを見ると、実際には照れ隠しなのかもしれない。

 

「…………っ……た…………確かに、わたくしにとって大切なものであるのは、事実ですわ」

 

 やっぱり大切なものなんだ。

 それならと、ふと昨日思い付いたアイデアを提案してみることにした。

 

「もしよければ、生育条件も分かって株分け出来そうなので、小型の鉢植えにしてお持ちしましょうか?」

 

「そんなことが可能なんですの?…………嬉しい」

 

 最後の言葉は、無自覚に漏れたような囁きだった。

 こんなに喜んでもらえるなんて、お手伝いした甲斐があったなぁ。

 

「それじゃ、明日の放課後にでもまた持ってきますね!僕、もともと明日は高等部の図書室に行くつもりだったから」

 

「……あら、至れり尽くせりで悪いわね。でしたら、わたくしが図書室でお待ちしておりますわ」

 

「あ、助かります」


 そんな感じで、オリアナ嬢に月涙草を届ける約束をして。

 今日はまだ居残って実験室を使うつもりだった僕は、中等部に向かって走って行った。

 

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(オリアナちゃんもお気に入りです……)

よければまたアシェルに会いに来てくださいね!


☆乙兄の更新は週2回(火・土 20:00)の予定です。

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