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乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった【第三章◇進行中】  作者: かみながあき
第二章◆初等部編

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四話◇歩けば棒に当たる

僕ってヒロインポジションだったりする……?

 

 放課後になって。

 クラウスたちとの交流を深めるために、僕は約束通りクラウスとゼノを連れて学園内の図書館を案内しに来ていた。

 クラウスの攻略に『知力』のパラメータが必要だった事から、彼が学ぶ事に関心があるのは分かっているし、まずはここから攻めるのが鉄板だと思う。

 図書館でも、クラウスが目当ての本を探そうとするたびに、ゼノは音もなく背後からそれをサポートしていた。

 

(うーん。やっぱりこの二人を見てると、どうしてもアレな感じに見えてきちゃうな。いま以上にゼノの過保護ぶりがエスカレートしていったりしたら、クラウスはヒロインと結ばれるどころじゃない気がする……)

 

 僕がそんな妄想をしていると、いつから図書室にいたのか、フェリクスが話しかけてきた。

 

「アシェル、クラウス王子。楽しそうにしているな」

 

「フェリクス殿下。はい、アシェル君のおかげで、この学園の図書館の蔵書がいかに優れているかを知ることができました」

 

「それは良かった。それにしてもアシェル、転入初日からいきなりクラウス王子と交流を図るなんて、どういう風の吹き回しなんだ?」

 

 と、フェリクスは僕に話を振ってきた。初手で核心を突いてくるのはやめて頂きたい……。

 友人として攻略中です、なんて言えるわけないじゃん。

 

「……どういう、って、言われても。単に仲良くなりたいと思ったからだよ。別におかしくないでしょ」

「なるほど。確かにお前が突拍子もないことを始めるのはいつもの事だから、何らおかしくは無いな」

 

「ちょっとフェリクス……!それ僕が変人だって言ってる?やめてよ、クラウス王子の前で……」

 

 言いながらクラウス王子に視線を向けると、彼は酷く驚いたような顔で固まっていた。

 僕と目が合うと、ハッと正気を取り戻してぎこちなく笑った。

 

「え……と、二人は、その……随分と仲が良い、みたいですね?垣根を越えているというか……」

 

 戸惑いながら話すクラウス王子に、フェリクスは面白いものを見つけたというような顔で語りかけた。

 

「うむ、そうなんだよクラウス王子。アシェルは優秀だが、少々変わったところがあってな?」

 

「ちょっ!フェリクス、何を、」

 

 抗議をしようと開いた僕の口に、フェリクスがそっと手を当てて言葉を堰き止める。

 思わず黙ってしまったけど、本当に何を吹き込むつもりなんだ……。

 

「……例えば、ぼくが初めて会った日に『フェリクスと呼んでいい』と言ったら……。こいつはいきなり様もつけずに、本当に『フェリクス』と呼び捨てにしたんだ!なあアシェル?いまだにぼくはあの時以上に笑った事は無いぞ」

 

「…………もぉ…………ほんと勘弁してよ……」

 

 出会った頃の失態を、今日が初対面の二人の前で、笑い話として晒された僕は。

 片手で顔を半分ほど覆って、赤面という恥の上塗りを隠そうと、無駄な足掻きをするしかなかった。

 

 半分になった視界で確認してみれば――

 フェリクスの暴露に、クラウス王子は目を丸くして固まり、ゼノは「そんな無礼な!」とでも言うように僕を鋭く睨みつけていた。

 

「あの、ですね?クラウス王子、これは……」

 

 しどろもどろに、言い訳をしようと言葉を探していたら。

 クラウス王子は、堪えきれなかったのか、手の甲で口元を押さえながらも笑い声を漏らした。

 

「……ふっ、ふふ!…………失礼。アシェル君は、常識にとらわれない人のようですね。興味深い。あらためて言いましょう。僕のことは、ぜひ『クラウス』と呼んでください」

 

 そう言ってクラウス王子は、警戒心の強い彼のキャラクターには珍しく、僕に親しみのこもった笑みを向けた。

 

「クラウス……様…………」

「おいっ、何でそうなる。この流れで言われたんだぞ?意思を汲んでやれ……!」

 

 さすがに躊躇ってしまった僕の肩を、フェリクスが横から小突く。地味に痛い。

 ほんとに良いのかなぁと様子を窺うと……。

 クラウスは期待するように煌めいた黄金色を、そしてゼノは怨嗟が聞こえて来そうな血の色を、それぞれ僕に向けていた。

 

「…………それじゃ、クラウスと、あと良ければゼノも。これからよろしくね……?」

 

 ちょっとゼノにビビりながらも何とかそう言うと、クラウスははにかんだように笑って。

 ゼノは、予想外だったのか、ほんの少し目を見開いた。

 

「うん。よろしくね、アシェル君」

「……………………」

 

「ゼノ」

 

「…………直接関わる事は少ないでしょうが、仕方がないのでよろしくと言っておきます」

 

 どうやら無言を貫こうとしたらしいゼノは、クラウスが名前を呼ぶと渋々僕に返事をした。

 フェリクスはそんな僕らのやり取りに"かろうじて"笑いを堪えながら、軽く挨拶して図書室から去って行った。

 

 

 ◇    ◇    ◇

 

 フェリクスに続くようにして図書館を出たあと。

 僕らは、そのまま中等部の裏庭へと向かっていた。

 

「クラウス、裏庭には薬草や観賞用の花が植えられた花壇があるんだ。リラックスしたい時とか、また来てみるといいよ」

 

「それは良いなぁ。僕としては花や薬草の種類が気になるところだね」

 

 そんな会話を交わしながら花壇に近づくと、どうやらそこには先客がいたらしい。

 一人の女生徒が、植えられた花の前で俯いていた。

 

 生徒は生徒でも、中等部とは制服が違う。

 よく見るとそれは高等部の制服で――

 僕の知っている数少ない高等部の女生徒である、オリアナ・ブルクハルト公爵令嬢だった。

 

「どうして……この月涙草の花びら、こんなに色がくすんでしまっているの……?」

 

 そんな小さな呟きとともに、オリアナ嬢はいかにも困った様子で花を眺めていた。

 

「ブルクハルト公爵令嬢。どうされましたか?」

 

 僕が声をかけると、オリアナ嬢は驚いた顔で振り返った。

 そして、『よく知らない中等部の生徒』として僕らを一瞥した。

 

「……あら、わたくしをご存知なのね?それは当然かしら。でも残念ね、わたくしはあなた方のことを知らないわ。覚えて差し上げるかは分からないけど、名を名乗りなさい」

 

 さっきまでのしょんぼりした雰囲気は霧散して、気高い公爵令嬢として振る舞うオリアナ嬢。

 この人こそ悪役令嬢なんじゃないの?と思う高位貴族的な上から目線に、『クラウスにこんな態度とってゼノは大丈夫か』とちょっと心配になった僕だった……。

 

「失礼致しました、ブルクハルト令嬢。こちらは本日転入生として学園にいらした、隣国キンダーガルのクラウス・キングズリー王子です」

 

 内心で焦りながらも、まずはクラウスから紹介する。

 

「まあ……!隣国の王子殿下とは露知らず、大変失礼を致しましたわ。わたくしはブルクハルト公爵家のオリアナと申します」

 

 オリアナ嬢は、少し驚いたもののすぐさま持ち直し、美しく洗練された礼とともに丁寧な挨拶をした。


「王子と言っても名ばかりなので、どうかお気になさらず。こちらは僕の従者です」

 

「そうですの………………それで、あなたは?」

 

 チラリと探るような視線を向けられ、僕は姿勢を正して礼を執る。

 

「ガルブレイス侯爵家の次男、アシェルと申します。ブルクハルト令嬢におかれましては……」

「……なんですって…………!?」

 

 僕の挨拶は、クラウスの時よりもはるかに驚いたオリアナ嬢の悲鳴によってかき消された。

 

「あなた…………カーティス・ガルブレイス様の、弟さんでいらっしゃるの……?」

 

「は、はい。なので、僕の方はオリアナ嬢のことを知っていたというか……」

 

 戸惑うオリアナ嬢につられて、なぜか僕も戸惑いながら話していた。

 

(……あれ?……えっ、やばい!さっきの悲鳴で驚いて、丁寧な言葉がどっか飛んじゃってた……!)

 

「それってどういう意味ですの?ガルブレイス様はわたくしの話を?…………有り得ませんわ。そうですわ!アリシア嬢なら何度も社交の場(お茶会)でお会いしましたもの。きっとそうですわ……」

 

 なにやら小声で呟いているオリアナ嬢に、改めて声をかけてみる。

 

「あの……ブルクハルト令嬢、重ねて失礼を働いてしまい申し訳ございません……」

 

「…………よろしいですわ。先程のようにオリアナと呼んで、あなたの普通の口調で話すことを許してあげる」

「なんで!?」

 

(えぇぇ……?どうしてまたそんなことに……?)

 

 一体今日はどうなってるんだ……と。

 まるで僕自身が乙女ゲームのヒロインになったみたいなご都合主義な展開に、いっそ呆れてしまいそうになる。

 

「理由なんて…………と、特に有りませんわっ」

 

 とりあえず今は、深く考えるのはやめにしよう……。

 開き直った僕は最初の疑問を解消することにした。

 

「……では、お言葉に甘えます。早速ですがオリアナ嬢、花壇がどうかしたんですか?僕らがここに来た時、なにか落ち込んでましたよね?」

 

 隣から「……わぁ……これがフェリクス王子の言っていた…………」とかなんとか聞こえたけど。

 もう、なんとでも言ってくれって感じ……。

 

 

「あなた…………ねぇ、わたくしもお名前で呼んで良いかしら。よろしいですわね?」

 

「あ、はい」

 

 どう考えても失礼な態度だと思うんだけど、オリアナ嬢は本当に怒ることもなく普通に話を進めた。

 

「アシェルさん?これをご覧なさい。この花は、わたくしが中等部生だった頃にここへ植えた『月涙草(げつるいそう)』という名前の薬草なんですの」

 

 へぇ、この花も薬草なんだ。

 ていうかオリアナ嬢って、自分でお花植えたりするんだなぁ。公爵令嬢なのに。

 口に出したらさすがに怒りそうな気がするので、黙って聞き役に専念してる風に頷く。

 

「この花びらは、本来なら中央は真っ白で、外側に向けて段々と濃い青色へと変化しているのが正しい状態なの。それなのに…………」

 

「なんか、全体的に色が濁ってますねぇ……」

 

「そうなんですの……」

 

 ここへ来た時と同じように、シュン……と効果音が付きそうな顔をしたオリアナ嬢は、僕ら三人の視線に気付くと、ごまかすように軽く咳払いをした。

 

 そして、ほんのりと頬を染めた彼女は、僕の目を見据えて高らかに告げた。

 

「アシェルさん。事情を聞いたからには、見て見ぬ振りだなんて……されませんわよね?わたくしの大切な花壇のために、手をお貸しなさい!」


 その言葉の裏に、"紳士なら当然ですわよね?"という本音が聞こえた気がした。


「……は、はぁい……よろこんでぇ……」


 圧に負けた僕は、気の抜けた声で居酒屋みたいな返事をしていた。

 

 こうして僕は、交流を広げるだけじゃなく、新しい『やることリスト』を増やしてしまったのだった……。

 

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(ヒロイン体質だけどヒロインじゃないです……)

よければまたアシェルに会いに来てくださいね!


☆乙兄の更新は週2回(火・土 20:00)の予定です。

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***

 

【 SYSTEM MESSAGE 】

2-4:フローレス伯爵家 の update 申請を受諾。

【資料保管庫:02】 の update 申請を受諾。

 

 

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