伝えられない言葉。
アリアはユリヤが泊まっている宿屋で寝かされていた。彼女の魔力酔いによって、フェンリルはアリアの体から追い出され、足元に丸くなって眠っている。
無防備なその姿に悪戯心が芽生え、アリアの唇をちょん、と触れる。まだ起きやしない。
ユリヤは自分を恐れないアリアを気に入っていた。
それは男だから、女だから、という性別の垣根を超えた思い。
アリアが復讐に燃えていた頃に出会った為、いつ心が折れるだろうかと心配していたが、心配を他所に彼女の成長の速度に何度も驚かされたものだ。
時折出てくる仄暗い瞳が痛く悲しかった。それを取り去ってやりたいと願ったがアリアの胸にはまだ居座っている男がいた。
「…私にしとけばいいのに。」
しーんと静かな部屋でぽつり、呟く。
眠ったままのアリアの髪を撫でて額にキスを落とす。
今はこれが精一杯。
んっ、と身じろぎ目を覚ますアリア。
アリアは自分が久しぶりに魔力酔いを起こした事を思い出す。
「ユリヤ、…ごめんなさい、迷惑かけた。」
「別に。まさかあそこで現れるとは誰も思わなかったはずよ。お城に居ればいいのに、ね?」
ウインク一つ、戯けて見せた。
内心キスに気づかれたかと心配したが杞憂であった。
「…ちゃんと殺してくれたらこんな思いをしなくて済んだのにって、叫んでも叫んでも声が出ない夢を見た。」
光が映らない目、仄暗い闇の瞳からぽろぼろと涙が出てくる。シーツをぐっと握り締め何かに堪えるように唇を噛む。
ユリヤはそんな痛々しい彼女の頭を撫でて、背中を優しく叩く事しかできない。
「そんな顔させる男、忘れちゃいな。」
私を選んで手を取って、なんて言えやしない。
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