傷跡。
ユリヤは任務プレートをアリアに渡す。
〝暴風龍の討伐または捕獲〟難易度S
「Sランク任務ですね、良いんですかAランク連れて。」
「別にいいじゃない。殺るか殺られるかの世界でしょ。」
余裕の笑みでユリヤは言った。
二人と1匹は移動の為に商人の馬車の乗り合いを利用した。近くまで運んでもらう代わりに道中のモンスターは全て片付ける話でまとまる。
「よろしくお願いします。冒険者ギルドの方々がご一緒となれば何も怖くないですな。」
年配の商人は顎の髭を触りながら安心したように笑う。
「こちらこそよろしくお願いします。」
荷台に横並びで座った二人。フェンリルはアリアの腰辺りに座った。ガタガタと揺れて体も時々揺れ始める。出発だ。
「ちょっといい?」
ユリヤは人差し指に炎を灯しながら煙草を吸っていいか遠慮なく聞く。ダメだと言っても吸うのだろう。
「いいですよ。いつも吸ってるじゃない。」
顔を背けるとユリヤが煙草を吸い込む呼吸音がした。すーっと吸い込んで心地良さそうに煙を吐き出す。
そんなに良いものか、カインもユリヤも理解出来ないとアリアは思い耽った。
「…良い事教えてあげる。アイツ、王国の宰相になった。」
腕を組んで顔を俯けていたアリアはバッと顔を上げユリヤを見る。荷台の空間が白んで煙たい。
「どこで知ったの。」
王様参加の社交界に連れてかれて実際に見て聞いたのだという。
背中の傷跡は殆ど綺麗にしてくれたカインの治療なのにアイツの話しをするだけで、ずきんと痛む気がした。
「宰相って、政治に手を出して戦争でもする気か。」
「あったりー!よくわかったね。」
冗談だったのに事実とは。
アリアは胸辺りまで到達した剣を思い出す。痛くて怖くて寂しかった。愛してる人に刺されるなんて。
ヒヒーン!と馬が大きく鳴いてモンスターが出たのを知らせる。
「話はまた後でね。」
ユリヤは咥え煙草のまま余裕たっぷりで刀を鞘からスラリと抜いて荷台から飛び出して行った。
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