強く生きる。
シャランと、入口の鈴が鳴る。
「カインさん、頼んでたもの出来てるでしょ?早く試したいから今日こそ持って行く。」
カウンターの奥からゆっくりやって来たカインは頭をがしがしとかきながら言う。
「だから、あれはお前のカツカツ魔力じゃ危険だって言ってんだろうが。」
三年の月日で二人の距離は縮まった。それは男女の話ではなく仲間としてだ。
満月の夜、背後を刺され致命傷を受けたアリアだったがその傷を癒したのはカインであった。
カインは二足の草鞋、調合屋と治癒師をしていたのだった。
「お前の背中の穴治してやった俺が言うんだから諦めてそのままのカスタムでやれよ。」
アリアは魔法銃のカスタマイズを頼んでいた。
それは使用者の魔力をぐんぐん吸い取る分威力が格段と上がる仕様になる。が、普通の魔力量では扱いきれない代物となる。
どうしてもその仕様でSランクを狙うアリアは譲らない。
「魔力量が不足してるのはわかってる。けど、今のままじゃ成長しない。……それにこのままじゃ、アイツに近づけない。」
〝アイツ〟とはシルヴィア。それを知りながらカインはやめとけ、という。
カインとて打ち解けた仲だと思っていたが、この店に顔を出すことも無くなったシルヴィアは一体どこにいるのか不明であった。
「噂で聞いた話じゃどこぞのお嬢様と結婚してるぞ。」
ガチャりと、銃口がカインに向く。
「だったら何だって言うのよ。」
仄暗い瞳、アリアは復讐心でいっぱいになってしまっている。同じ傷を負わせてやるのだと。
まぁ落ち着け、とカウンター前の椅子に無理矢理座らせる。
カインは忠告をした仕様の魔法銃をそらよ、とアリアに投げ渡した。
「…ありがと。」
無茶な事をしていると分かっていた。
たまたま、お貴族様が気の迷いや悪戯心で揶揄われただけなんだと何度も自分を納得させようとした。
それでも私の心は前を向けなくて、アイツの笑顔をこの魔法銃で撃ち抜く想像でしか自分を慰められなかった。
あの愛しい日々はそんな呪いを残した。
「まぁ、あんまり無茶なことするな。」
「アイツを探し出すには、普通の人間が無茶をしなくてはいけないのよ。」
そうか、とカインは煙草に火をつけて深く吸い込んだ。そしてアリアに態と煙を吹きかけた。
げほっと咽せたアリアを一笑いしてもう一つ魔法銃をカウンターに置いた。
「ちょっと何するのよ!」
「上に行きたきゃ最果ての洞窟マラソンだな。これも持っていけ。」
2丁の拳銃。今まで右手でしか銃を持った事がないアリアは迷いながらも受け取る。
もし扱えるようになれば火力は2倍だ。魔力量で考えるとこれもまた無茶だが試したくもあった。
「やってみる…行ってくるね。」
シャランシャランと入口の鈴が鳴りアリアは出て行った。
カインは彼女の背中を見つめながら煙草の灰を小さな皿に落とす。
どうにかアイツを諦めさせてやれないか、色々考えた結果三年もの月日は彼女を病ませてしまった。
治癒師として、彼女の心の傷も治してやりたかったがもうどうにもならない。本当にSランクにまでなってしまえば彼女はアイツの捜索を本格的に始めるだろう。
愛憎とはよく言ったものだ、とまた煙草を深く吸い込む。
今日は雨だ。
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