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第3話:掃き溜めの玉座、絶望の軍団

魔王の力を継承してから数ヶ月。俺は『黒界の森』のさらに奥、魔族すら近寄らない呪われた廃都にいた。

 そこには、人間社会から「不要」と断じられ、群れを追われた亜人や魔族たちが泥を啜って生きていた。


「……ひっ、人間!? なぜこんな場所に……!」


震える声の主は、片翼を失った鴉族レイヴンの少女だった。

 周囲を見渡せば、角を折られた鬼族、魔力を失い衰弱した夢魔……。

 誰もが、光り輝く勇者アリスが守る「平和な世界」の影に隠され、捨てられた者たちだ。


「俺は人間じゃない。……今はな」


俺は背中の黒翼を広げ、圧倒的な威圧感プレッシャーを放つ。

 彼らは恐怖に身を竦ませたが、俺はその場に膝をつき、少女の失われた翼に手を当てた。


「『深淵の再生アビス・リバース』」


黒い霧が傷口を覆い、瞬時に漆黒の翼が再生する。

 それは神の奇跡ヒールではない。魔王の力による、理を書き換える「強制的な修復」だ。


「翼が……戻った……?」

「お前たちに選ばせてやる。ここで静かに朽ち果てるか。それとも、俺の配下となり、この腐った世界を裏側から支配するか」


俺の声が、廃都の隅々にまで響き渡る。


「俺の目的は、世界を救う『光の勇者』を殺すことだ。世界中を敵に回す過酷な道だ。だが、俺に従うなら、二度と誰にもお前たちを虐げさせない。俺が、お前たちの新しい『神』になってやる」


静寂が流れた。

 やがて、片翼を再生させた少女が、真っ先に俺の前で膝をついた。


「……あなた様が、私たちを見てくださるというのなら。この命、漆黒の炎に捧げましょう」


次々と、絶望の底にいた者たちがこうべを垂れていく。


——こうして、後に世界を震撼させる『魔王軍・影の円卓』が結成された。


第一軍:空龍大将・レイヴン(再生した翼で空を統べる少女)


第二軍:剛鬼王・バロウ(折れた角の代わりに魔王の角を移植された巨漢)


第三軍:夢幻の魔女・リリス(精神干渉で敵軍を自壊させる策士)


彼らを鍛え上げ、最新の「魔導技術」と「魔王の加護」を与えていく。

 俺がやるべきことは二つ。

 

 一つは、アリスが戦うべき「小物の魔族」をすべて俺の傘下に収め、戦いをコントロールすること。

 もう一つは、アリスの周囲に潜む「王国の腐敗」を、魔王軍の名の下に掃除することだ。


「……見てろよ、アリス。君が『勇者』として輝く舞台を、俺が血の海で作り上げてやる」


五年という歳月が、静かに、しかし確実に過ぎ去ろうとしていた。

 俺の心臓が、一拍ごとに人間としての感情を凍りつかせていくのを感じながら。




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