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Cheatahs!!  作者: 樹祕朶椏
14/19

第14話 Cheaters(逃げるが勝ち)

超危険任務デンジャラスミッション発生中!

【 シリト VS 霊公エテこう 】

 大森林 “フォレステスト” ……

 少し、この森について話そう。


 端的に言って、この森は広大デカすぎた。

 海の限りなさとも空の果てしなさとも比べたって遜色ないと言い切れる。それほどまでに広大だった。

 “広大な森” は、等しく “莫大な資源” だ。

 人は貪欲に……いや強欲にそれを欲しがった。

 基地ギルドを構え手を伸ばせる範囲を広げ、その当時最も優秀だった事務員カーラトップとおいて、先遣隊としての準備は万端いざ行かんと勇んだところで、気付いてしまった。

 木を隠すなら森の中………………

 いや、を隠すなら森の中………………

 いや、を隠すなら森の中………………

 ということに……。

 森を少し行けばマモノ、マモノマモノマモノマモノマモノ……………………………………………………

 魑魅魍魎ちみもうりょう跋扈ばっこし、悪鬼羅刹あっきらせつ跳梁ちょうりょうし、百鬼夜行ひゃっきやこうがのさばる、開けてはならない(パンドラの)箱…………それこそがこの森 “フォレステスト” であった。


 開拓など進まず疲弊しきったギルドに、ある一組のパーティーが現れた。

 不思議な雰囲気を纏った彼らは、その雰囲気そのままに、常識に疎いところが多くあった。非常識にあちこちを炎上させたり、非常識にあちこちを凍結させたり、非常識にあちこちを感電させたり、非常識にあちこちを吹き飛ばしたり……………………。

 だが、そんな常識知らずの迷惑発生装置が怒らすでも呆れさすでもなく、まず初めに他を驚かせ(・・・)たのは、こと戦闘において何よりも彼らが、非常識なほど強かったから。

 あんなにも悪戦苦闘させられた、絶えることないマモノ討伐の任務ミッションが、ついぞ一片も残さず解決しきってしまったではないか。

 この頃から、流石に周囲は彼らを訝しみ始める。

彼奴あいつらは本当にマモノを倒しているのか?』

と。つまりは「不正チート」の疑惑である。故にこのパーティーは「チーターズ」と揶揄やゆされることとなる。

 ……………………まあ、不正疑惑だけが彼らを爪弾つまはじき者にしたのかと問われれば…………


『どうしてまたギルドが壊れてるんですか!!この前直してもらったばかりなんです!!業者さんだって暇じゃないんですよ!?』

『何のための討伐任務(ミッション)か分かってますか!?居住区の確保のためですよ!!その予定地の惨憺さんたんたる状況見ましたか!?土地を使い物にならなくしてどうするんですか!!!』

『本部から苦情が来ましたよ…………『森を死滅させる気か』って!!毎度毎度(ことごと)くを破壊しないと気が済まないんですか!!?あなたたち損害率100%の自覚あります!?!?』


…………それだけではない気もするが…………。

 舞い込んだ任務ミッションがチーターズによって即解決に向かう日々を繰り返す中で、その実態を暴いてやろうと企む男が一人いた。のちにこの男は語る。


「俺は見たんだ!!こっそり後を尾けていってみたら!!見たんだよ!!!!」

「何をだよ?」

マモノの屍体の山(・・・・・・・・)だよ!!!!」


『なんか今日多くないか?』

『確かに。任務ミッションは一体だったよな?』

仕方しょうがないだろ。任務ミッションになるのは脅威が確認されたマモノだけだ。この森にはそれ以上がいた。それだけだ。オレらは別に困らない』

『『 お前は戦ってないけどな 』』

戦力外なかまはずれにするなよ!!?』


「あいつら “不正してる” だなんてレベルじゃないんだ!!討伐数を多く見せるための、実力を盛るためのイカサマじゃなくて、討伐数を少なく見積もられて、それでも充分と言い張れる実力の逆詐欺師だったんだ!!!!」


 そんな欠点だらけの最強集団「チーターズ」は、今もなおマモノを屠り続けるのだった。


--------------------------------------------------


 さて、少し話が逸れてしまったが、結局のところ何が言いたかったのかを伝え忘れていた。


 人類史に残る危険地帯—— “フォレステスト” ——

 人類史に類を見ない最強—— “チーターズ” ——


 『能無し』月常つきなみシリト


 最も死地に近く、

 最も死から遠い力を手に入れた男の、

 本気の逃走劇が、

 今、


 始まる——。


--------------------------------------------------


「何だぁ……その姿……、猿や大猩猩ゴリラじゃいよいよ説明つかなくなってきたなぁ…………」

 体躯に見合わぬ巨大な腕が歪に、禍々しくその凶器をぶら下げる。一体何が “それ” から逃げ仰せれるのだろう。てのひらは、形だけそれらしいものをすんでのところで保ちながら、その圧倒的な存在感と威圧感、何よりも死の予感をばら撒いていた。


(アレはまずい…………アレだけはまずい…………)


 冷や汗零こぼれる。この緊張だけが、両者に “静” を与える。

 一触即殺。沈黙を破るは開始の合図ゴング


「じゃあ行こうか……。よーーーーーー……い」



 ドン



 言うが早いか動くが早いか、霊公エテこう急接近

(脚も速いのかよ……っ!!)

ガバ——ッ!!!

「…………?…?」

「上だよ、間抜け」

(かなりギリギリだったけど、樹上もある立体迷路だいしんりんなら逃げる方が有利だろ)


 三次元的逃走……それが可能ならば確かに発想としては及第点だろう。ただ…………、


「ヴヴヴヴヴォォォォ!!!!」

「言語はどこ行っちまったんだよっ!!」


 場所と相手が悪い。


ビョンッッ!!!!!

跳躍ジャンプ力は認めるが、浮いちまったのは悪手だなァ!!」

(俺ならその隙に距離を取れる……!!)

ギュン————「え」



ギュ



ブラーン,ブラーン,ブラーン……


「っ……はあ……っ!……はあ……っ!」

(今のはギリギリだった……!浮いてると思ったら急に加速してきた……!!)

「タネは……ブラキエーション(・・・・・・・・)か…………!!」


 ブラキエーションとは——、

  腕渡りとも称されるそれは、樹上性の霊長類が枝を掴んで振り子のように移動することを指す。

 霊公エテこうのそれは、この森において加速と方向転換をあまりに簡単に行うための兵器であった。


ブラーン,ブン!!!!!!!!!!


「出たな!!インチキ機動力!!!」

(尋常じゃない握力と腕力が、猿 × 森の方程式に代入されて天然の超加速装置になってやがる!!)


ブン!!!!!!!!!!ブン!!!!!!!!!!


(すげぇ……思いっ切り木の枝握ったら折れずに圧縮されるんだ……)

「……言ってる場合か……っ!」

 ブランコを思いっ切り漕ぐみたいに、枝を握れば加速、また加速、加速、加速、加速加速加速加速…………

(追いつかれた……!)

「く…………そぉっ!!」

(間一髪!!横に逸れられた!!そのままの勢いで飛んでっちまえ!!)

ギュルン——!!!!!

「な……!?」

「ヴヴォォ!!」

スカ——ッ


ドサッ——「ってて……そう簡単に捕まってたまるかよ……!」

(またもすんでのところ……!!咄嗟に落っこちてなかったら握り潰されてた!!ヤツも木から落ちるだなんてことがなくてよかったぜ……。

 しかし考えれば当たり前のことだった……回転の中心があればどんな方向にでも加速できんだよな……そして幸い、ここにはそれが山ほどある……!!)


「行くしかないな……あそこに……!!」


ダッ——!!!

「ヴヴォ……」

(今サラ……ドコに……)


 急に逃げ出したシリトと追う霊公エテこう、両者が向かうは上、さらに上…………木の葉を抜けた先の空…………

——至る、樹冠のいただき。


「最後の賭けだ。ここなら加速はできないだろ」

(何も掴むものがなければ単純な速度スピード勝負……!!オレの最高速なら……)


ビュン——!!!!!


(オレは逃げ足だけなら一級品なんだ……!!さあ、どう出る!!)

「——な!?!?……流石は大森林……資材の宝庫だ……!!アリかよそれ!!」


ギギギギギ…………


(あんの猿…!!木のてっぺんを掴んで引っ張ってやがる!!)

「パチンコ玉みたいに吹っ飛んで来る気かァ!?」

(木の弾性はどこまで持つ?速度はどれぐらいに?軌道は?避ければどこまで飛んでくれる?避けられる?)


ギ…ギ…ギ——(避けるしか…… ドヒュン!!!!!!!!!!!!!!!


(無理だ、疾すぎる)

「捕マエタぞォォォォォ!!!!」


 ……何故だか不思議と、その声はゆっくり、確実に響くように聞こえた。


——追いかけっこは勝てなかったか。——

——だけど言ったろ?『決着は引き分けだ』って——

——悪いな……。情けない話だが……——


「助けてくれぇぇぇぇ!!!!!!」

 それは森中に響く、

「今更命乞イかァァ!!ソンナモノにィ意味など


ナイ……ぞ…………——!?


(何故だ……何故ここに……何故私は……)

「四方から囲まれている!?」



〈焼燬〉〈冰凝〉〈大字雷〉〈風戯〉



(炎?氷?雷?風?何だこいつら?この男の仲間か?なぜこの場所で?示し合わせたのか?そんな様子はどこにもなかった。偶々(たまたま)?さっきの呼び声か?わからない。ここからどうしたらいい?避けきれる?無理。なんとかしないと。なんとか………………)


「仲間諸共殺す気かぁぁぁぁ!!??」

…………あ


 本来だったらそんな悪手・・は打たなかっただろう。が、戻りかけの最善とは言えぬ脳が選んだのは、想像しうる限りの最悪手・・・


ニィ…!!

「オレなら全部避けられる」

「う……、うわああああああああ!!!!!!」


--------------------------------------------------


「危ねえなお前ら!!オレごと殺す気か!!」

「え、それ俺らが悪いのか?」

「避けられない方が悪い」

「 “殺す気” を否定してくれ!!

 というか!なんで4人バラバラの方向から来るんだよ!?集団行動出来ないのか!?」

「シリトのせいだろ」

「置いてかれただけだ」

「カミドは片時だってカミラと離れなかった!!ですよ!」

「はあ…………もういいよ……。じゃあ帰るか」


イヤー大変だったー!お腹痛い… カミラ帰ったらなにするですー?遊んでばかりはダメだからねお姉ちゃん!


「なあ……猿。お前は強かったよ。オレが逃げ切れなかったのなんて久しぶりだ……。そんでもってオレは……逃げ切れなければ助けを呼ぶぐらいしかできることのない能無しだ……。

 だけどな…………それでも…………強いお前と相対して尚、オレは負けるだなんて微塵も思わない…!

 だって、オレの仲間は強かったろ?」


 笑って、そう言って、超危険任務デンジャラスミッションは、幕を閉じた。


 シリト VS 霊公エテこう ——勝者、シリト

長くなりましたね。シリトは逃げ一辺倒なんで戦闘が書きづらいです。読みづらかったら飛ばしちゃえ

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