第13話 Run Away(武器……武器?)
!超危険任務発生中!
『レベルアップを解決せよ』
大森林 “フォレステスト” ……
ここは大森林の中でも、木漏れ日差し込む暖かな区域。
【 シリト VS ??? 】
ペラ…ペラ…
「ふむ……人と同じ言語を体得して殊更感じるのは、人間の愚かさだよ。弱い癖に煽るしか脳がないのか?自分を大きく見せようと必死になっている所悪いがね、我々は君たちで言うところの『レベルアップ』というものに当たるのだろう?生まれ持ってして「格別」と称される我々に、君達が敵うはずもないだろうに」
「猿公の癖に的を射たことを言うじゃんか。前半は否定できないかもしれないが、後半…とくに最後の一文には異議ありだ。お前たちが「レベルアップ」だろうが関係ない。こちとら “別格” なもんで、お前たちは必ずオレの仲間が倒す」
「…………『嘘みたいな強者』か…………。随分大層な名を貰ったものだね」
ペラ…ペラ…
「文句があるならオレのことを捻ったあとに『不正評価』だったと笑えばいい。笑えばいいんだが……………………一つ聞きたい」
ペラ…ペラ…
「お前がさっきから捲ってるそれ…………本、じゃないよな。そんなもの手に入るはずもないしそういうサイズじゃない。なんだ?」
「これかい?さぁ…………殺した人間から奪い取ったものなんだが…………手帳……とでも言うべきかな。言語や習慣の知識の習得に丁度良いのでね、拝借してるよ」
「そうか……………………」
「…………そう殺気立たないで欲しいね。そうだ、どうやら危険度の高い強いマモノには識別子……異名が与えられるそうじゃないか。試しに自分自身に付けてみようと思うんだが………………、 “文武両究極” こと『霊公』だ」
「ここで消えんのにダセェ異名なんか付けて何の意味があんだよ……!!猿公で充分だろ……!!」
【 シリト VS 霊公 】
「霊長のさらに長たる公に向かって……無礼な名を付けるな……!!」
ざわざわと逆立つ毛はその量を増し、身体が一回り大きくなったように見え…………
いや、なっていた。イリュージョンのように腕は太くなり胸板が厚くなっていた。筋肉という名の暴力の鎧を身に纏い、何より恐るべきはあまりにも大きな………………掌。
「おいおい……何だよその姿……、猿丸出しじゃねーか」
「美醜を語りたいなら人間の尺度で勝手にやってもらって構わない。が、生物として、この姿を測れば自ずと解るはずだ……この掌にかかれば、オマエの腕も……脚も……頭も……——バッ——好きなところを握り潰せるぞ」
ギュ……!!!
「……?」
「会話ができるんなら、お前には二つの選択肢がある。まず一つは話し合いでの解決、そしてもう一つ…「話し合いなどするものか!!!」
ギュ……!!!
「…………そうか、残念だ。なら交渉は決裂だな」
(なんだ……さっきから何なんだ?!この男…………、
避けている!!
いや、そんなことは普通のはずだが、この男のそれは少し違う……!!?)
「話し合いで解決できないのなら、この勝負の決着はたった今決まった」
「勝負が……決まった……?まさか!もう勝った気でいるのか?!」
「勝った気も負けた気もしないさ。この勝負は『引き分け』でケリが着いたんだからな」
「何を奇怪な…………黙らせてやる……!!」
猿……もとい霊長類・類人猿は、樹上での生存に適し強靭な握力を持ち合わせる。勿論、霊公とて例外ではない。
彼の者の一握りは骨を砕き肉を潰す。
素手による残虐な狩猟は、その手を血により紅く染める。
当の本猿は言語能力すら容易に取得するその知能に焦点を当てたが、真に人が恐るるは其処ではない。
もし本当に異名が与えられてたとするなら…………
“握辣大掌軍” こと『獲手紅』
…………だが、たらればの話に意味はない。この勝負は引き分けで決着だ、とシリトが言ったのだから、きっとそうなるだろう。
“能無し”
この世界においては文字通り能を持たない者を指す言葉だが、同時に最上級の軽蔑と罵倒と差別を含む言葉としても使われる。
ましてやギルドの、
ましてや戦闘を行うパーティーの、
ましてや最強の更に上の、
ましてやリーダーが、
最悪の意味の “能無し” でありながら何故務まるのか。
それは彼の最強の武器、『逃げる』という点における極上の才、それ故である。
(腕を思い切り伸ばした。指先だけでも肉を掴めれば、そのまま抉り取れるという自負があった。
だが、奴はそれを読んでいたかの如く後ろに一歩……、確かに一歩だけ退がった。避けたのだ。実際それで充分だった。我の腕の間合いから外れるのには。
ので、更に身を乗り出し不恰好に我も歩を進めた。極限の集中……というやつだろうか。奴の動きは鮮明に捉えられていたし、頭はそれを一切の遅れもなく処理できていたし、身体はそれに一瞬たりとも抵抗する事なく従った。
全身がベストなパフォーマンスを発揮した。
その上で奴は、もう一歩だけ退がった。
解った。解ってしまった。これは極限の集中なんかじゃない。これは言うなれば走馬灯に近い。
能無しの奴に攻撃の手段はなく、我には攻撃を当てる手段がない。
この攻防は無限だ。
たった一回で無限を見せられたが故の、絶望を見たのだ、我は…………………………)
「引き分け……引き分けか…………はっ……。
貴様本当に人間か……?」
「猿に見えるか?」
「は……はは……ははははは…………!!思考が邪魔だ精神が邪魔だ!!考えるより先に掌を出そう!!感じるより先に握り潰そう!!
……感謝する。貴様を殺せば、我モ随分マモノらシく成レソウだ!!!!」
「おいおい……何だよその姿……、猿丸出しじゃねーか」
逃げ上手のパクリじゃないです。規格外のバケモノ連中のリーダーがなんの能力も持ってなかったらやっぱ面白いよな、というありきたりな発想からです。つまり、もっと色んな作品の発想のパクリです。




