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わたしと湯煙の少女

42話 わたしと湯煙の少女


 演習場がある実技区画から寮がある住居区画を目指す。

 

「大浴場楽しみ……」

「……そうですね。」


「いつも混んでるから行けないんだよね。」

「……そうなんですか。」

 

 なぜか手を離してくれないクウキさん。

 模擬戦後から止まらない汗。


 顔が熱いです。


 しばらく歩いて寮の入り口に着く。


 部屋とは反対に歩くクウキさん。


「クウキさん。」

「なに?」

「このまま直接大浴場に向かうつもりですか?」


「そうだけど……」

「一度部屋に着替えを取りに行きませんか?」


「あっそうか。私も着替えない。」

「そうですよね……」


「じゃあすぐ準備して。」


 バタン!

 それぞれ部屋に戻る。

 

 手にはまだクウキさんの体温が残ってた。


 誰かとお風呂に入るのなんて初めてです。

 少し緊張しますね。


 シャンプーとかは常備されてるから。

 タオルとー

 ゴムとー

 下着とー

 着替とー

 こんなものですかね。

 もっとかわいい下着の方が……


 クウキさんはどんな下着を履くのでしょう……


 今わたしはなにを……


 ドンドンドン!


「ひゃい!」

「ん?……ハルー準備できたー?」


「すみません、今行きます。」


 ガチャ


 いつもとは雰囲気が違う、部屋着のクウキさん。

「かわいい部屋着ですね。」

「そう?ママが準備してくれたの。ハルのパジャマも可愛い。」

「わたしのはメイドが……」


 なんだか恥ずかしい。

「行きますか……」

「うん!」


 ——


「広いですねー」

「すごい……」

 

 100人くらいは余裕で入れそうな浴場にシャワーがズラリと並ぶ。

 その中心には噴水付きの湯船。


「こんな大きいお風呂初めて……」

「わたしもです。」


「誰もいませんね。」

「……よかった。」


 素早く服を脱ぎシャワーの前に座る。

 少し遅れて隣にクウキさん。


「クウキさん!少しは隠してくださいよ!」

「……ごめん。」


 傷1つ無い真っ白な肌。

 さっきまでわたしの攻撃を受けていた体とは思えませんね。

 

「ハル……見過ぎ……」

「すみません!」

 

 体を洗い2人でお湯に浸かる。


「ふー……」

「声出ちゃいますよねー」

「気持ちいい。」


 お湯に浸かり。

 湯気に包まれ。


 目を瞑る。


 ポチャン……ポチャン……

 天井から水滴が垂れる。


「今日、鍛錬の邪魔じゃなかった?」

 首を傾げてわたしを見る。

 クウキさんの髪からも水滴が落ちる。

 

「邪魔だなんてとんでもないです!いつもよりいい鍛錬なりました。」


「……よかった。」

 

 いつもの笑顔も少し違く見える。


 ポチャン……

 また一滴。

 

「クウキさん、剣術得意なんですね。入学試験で魔法使ってたのでそっち系だと思ってました。」


「……剣術好き。最近気づいた。」


「最近ですか?」

「そう。ルーアとやったときに知った。」

「あぁ……仲良いですよね。」

「うん、ルーア優しい。」

 

「ルーア……ですか……」


 ルーアと歩くクウキさんを思い出す。


 水面にはわたしの顔。

 

 

「私そろそろ出ようかな……」

「わたしも出ます。」


 脱衣所に行くと祭から帰ってきたであろう生徒がちらほらいた。

「いいタイミングでしたね。」

「そうだね。混む前に早く出よ……」


「そうしましょう。」


 体を拭き着替えをとる、なんとなく気になり隣を見る。


 綺麗な肌ですね……


 あれ……?


「クウキさん……下着はつけないんですか?」

「うん……寝るとき邪魔だからね。」

「あっ……そうですか。」


 レースのついたヒラヒラのワンピース一枚。


 少しだけ濡れた肌に張り付く……


「いやダメですよ!共用部ではつけて下さい!」

「いや……」

「いやじゃないです!」


 窮屈そうな顔したクウキさんと寮に戻る。


「じゃあおやすみ……ハル。今日は楽しかった。」

「こちらこそありがとうございました。おやすみなさい。」


 ガチャ……


「あらハル、おかえり」

「アリージュもう帰ってたんですね。」


「そうなのよ。エリッタが護衛に見つかって強制連行よ。はいこれお土産!」

 部屋が少し焼きそばの匂い。

 

「ありがとうございます。」

 

「そういえば、顔が真っ赤だけど……大丈夫?」

「……あっ、はい。クウキさんと大浴場に行ってたので。」

「なるほどねー」

 

 きっとそうだ……少し長湯しただけ。


 焼きそばを開けて今日のことを思い出す……

「冷めるわよ。」


「あっ……そうでした。いただきます。」

「あなた手で食べるの?」

「あっ……はし……」


「どうしたのよ?なんかあった?」

「……別に何もないですよ。」

 

 焼きそばをただほぐす。

 

「あなた見てるとモヤモヤするわね……」

「……え?」


 アリージュから魔力が漏れる。


冥刻の夜剣(フォルネウス)……星空の帷……」


 部屋に夜が訪れる。

 意識が理性が眠る……


「ハル、少しだけ聞かせて……」


 ——


「ハル、起きない。」

「あれ私……」


 眠っていた?


「明日、遊ぶわよ!」

「えっ……遊ぶ?」


 え?誰と?

 

 


 

読んでいただきありがとうございます

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