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わたしと居眠り少女

41話 わたしと居眠り少女


「クウキさんもお祭りに行ったんじゃなかったんですか?」


「……私、人混みとか嫌いだし」


「なぜここに?」

「寮にいるとエリッタとルーアに無理矢理連れてかれそうだから……」


「ふふ、クウキさんも大変ですね。」

「……笑い事じゃない。大変。」


 地べたに座るクウキさん。

 

「ハルの予定って剣の練習?」

「やらないと落ち着かなくて。」


「……すごいね。」

「そうですか?よかったらクウキさんも一緒にどうですか?」


 なんてね。

 一応聞いただけ。


「……いいの?」


「そうですよね。……え、今なんて?」

「いいの?ハルの邪魔にならない?」


「じゃ、邪魔なんてとんでもないです。是非よろしくお願いします。」

 

「やった。」


 立ち上がり壁際に向かうクウキさん。


 ぴょこぴょこ足音が聞こえるようだった。


 なんとなく後を追う。


「ハル……この木刀使っていいかな?」

「大丈夫だと思いますよ。」


「はいこれハルの。」


 長い木刀を手渡される。


「私はこれ……」


 短刀が2本……


 そういえば双剣使いでしたね。


「模擬戦ですか?」

「そうだよ。いやだった?」


 わたしとクウキさんでは実力に差が……


「遠慮しないでかかってきて……」


 一方の短剣を向けてくる。

 目が淡く光っているように見えた。


 クウキさんってどんな闘い方をするんだろう。

 

「わかりました。少しだけ本気でいきます。」


 クウキさんの伸ばした木刀のギリギリで構える。


 コツンッ

 剣先が当たる。


 開戦の合図。


 最初は軽く……


 両手で握りしめて振り下ろす。


 スッ……


 空を切るわたしの木刀……


 目の前にはなにもない。


 あれ?

 頬をつたう汗……


 気づいたら短刀が喉に触れていた。


「……参りました。」

 喉から剣が離れる。


「ハル、手抜いたでしょ。」


 膨れるクウキさん。


 手は抜いた。

 しかし違う……何かが違う。


「すみません。最初は軽くと思いまして……」

「そうなんだ。でもそれじゃ意味ない。ハルの鍛錬にならない。」


 構え直すクウキさん。


「全力できて、私は大丈夫だから。」


 守るべき対象だと思ってた存在が目の前で剣を構えてる。


 入学試験最下位の生徒に手招きされてる……

 少しだけ嬉しかった。


 剣を握る手に力が入る。


「いきますよ!」


 さっきとは違う本気の振り下ろし。

 短刀が受ける。


 カンッ!


 木刀同士がぶつかりしなる。


 次は横から……


「ふん!」


 バシンッ!


 また防がれた。


 ……硬い。


 次はこっちから……ここから……ここ……


 一歩も引かないクウキ。


 わたしより一回り小さい少女が一歩も引かない。


 ……こわい?

 

 一回距離をとる。

 一瞬で詰められる。


 汗が飛び散り、後ろにバランスを崩す。


「やばっ」


 脇腹に短剣が掠る。


「くっ……」


 脇腹を抑えるわたし……


 目の前で構えるクウキさんの表情は、変わらない。


「すごいですね。こんなの初めてです。」

「……ありがと。」


 淡く光る瞳がこちらを見てる。


 引いたらダメだ。

 押し切る。


 一歩踏み出す。

 

 カンッカンッカンッカンッ……


 一心不乱に剣を振る。


 ——


「はぁはぁ……」


 気づいたら数十分……

 汗で髪が張り付く。


 折れた木刀を下ろす。


「……やっぱりすごいね。隙がなかったよ。」

「クウキさんこそ……」


 流されなかった。

 受け止められた。


 手が痺れてる。


「どうして模擬戦なんか?」

「なんとなく、ハルのこと知りたいと思って……」


「わたしのこと?」


「いつも1人でどっか行っちゃうから……でも今日少しだけハルのことわかった。」


「それはよかったです。わたしもクウキさんのこと少しだけわかりましたよ。」


 クウキさんはただやる気のない天才。

 わたしとは真逆の存在。


 少しだけ……苦手です。

 

「次はスキルを使って、やりたいですね。」

「それは嫌。」


「あっそうですか……」


 夕日が沈み月明かりが2人の間を照らす。

 祭の花火が微かに聞こえる。


 そういえば今日お祭りでしたね……


「実は最近、ハルに似てる人に会ってね。」


 似てる人?


「その人が弟子がこの学校にいるって言ったの。」

「……それって」


 憎たらしい赤髪がチラつく。


「マイヤさんっていうんだけど……?」


「それ、わたしの師匠です。」

「やっぱり、すごい冒険者だったよ。」


「はは、そうですか……」


 顔がひきつる。


「じゃあ行こうか……」

 いきなり手を引かれる。

「ちょっと……」

 

「皆んなお祭りに行ってるから空いてるはず……」

 引っ張られるままついて行く。


「クウキさんどこへ行くんですか?」

「どこって、大浴場だけど……」


「え?どうして?」

 クウキさんが止まる。

「え?模擬戦の後は2人でお風呂でしょ?」

「……そうなんですか?」


「うん、ママがそう言ってた。」


「……まま?」

「そうママ。」


 クウキさんとお風呂……

 

 この胸の高鳴りを、わたしはまだ知らない。

 


 

 


読んでいただきありがとうございます

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