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S級の私と少女

37話 S級の私と少女


 私はマイヤ・マトローナ。

 S級冒険者。


 これまで様々な仕事をしてきた。


 ダンジョン調査。

 ドラゴン討伐。

 要人護衛。

 息抜きに、家庭教師……


 そんな私が困惑していた。


 ダンジョンの最深部に小柄な少女が2人。


 戦士の勘が警報を鳴らす。


「ちょっと!鑑定するんじゃないわよ!」

 この子は良い……優秀な学園生って感じ。

 問題はその後ろに隠れている黒い髪の方。


 鑑定結果は至って普通。見た目も可愛らしい。

 けどおかしい。


 このダンジョンの異常に関わっているに違いない。


 少し仕掛ける……

 (灯火の巫女(ノア)、先導の灯し……)


「ルーアそれを置いて行きなさい!」

 ルーアに私に意識を灯す。


「ルーアごめん……洗脳解除」


 解かれた!?

 スキルも使わずに魔力を干渉して解除した……


 こいつは……やばい。


「……やめてよ」


 ダンジョン内が荒れ始める……


 笑うしかない。

「……戦うの?」

 当たり前でしょ……

「討伐対象だからね。」


 黒い目が初めて私を見る。


「私はクウキ。……ただの女の子だよ。」


「そんなわけないでしょ……灯火の巫女(ノア)、剣戟の纏い火!」


 この剣は触れた所に火を灯す。

 決して消えない赤い炎……


 最初から本気の一撃で首を狙う……


 クウキが腕で首を守る。


 もらった……


 キンッ……


「硬っ……」

「……熱い」


 目の前にいるのは素手で剣を防ぎ、消えない炎を払って消した少女……


「化け物だね……」

「……よく言われる」


 もう一度今度は上から……振り下ろす。


 バギィン!

 荒野に響く嫌な音……


「結界使えるんだ。」

「……そうだけど?」

「私の剣って、普通そんなに受け止められないだけどね。」


「……確かに重い」

 舐めやがって……


 折れた剣を投げ捨てる。


「少し全力出すよ。灯火の巫女(ノア)、方舟……」


 天に届くほどの魔法陣

 凄まじい熱波

 立ちこめる煙……


 汽笛が響く。


「……炎の要塞?」

「まぁそんなとこ……」


 炎の要塞

 そんな船が私の背後に現れ、旗を揺らして威嚇する。


「……大きい」

「大きいだけじゃないよ。」


 腕を向けると無数の大砲がクウキを狙う。


 目を瞑り息を吸う……


「放て……戦火の豪砲!」

「物理結界……」

 結界がクウキを囲む。


 一斉に放たれた火の弾が着弾と同時に視界を塞ぐ。

「どうせ効いてないでしょ、第二波……放て!」


 再び腕を向ける。

 ボンッ……ボンッボンッボボンッ


 これはもう戦いじゃないんだよ……


 弾幕が止み煙が少しずつ霧散する……


「……今のは結構やばかった。」


 服の所々が焦げ

 ボロボロになったクウキが立っていた。


「君すごいね。まだ立ってるじゃん。」

「……ぎりぎりだよ」

 笑うクウキ。

 あとひと押し……


「頑張ったね……でも私は君を排除する。人々の未来のために!」


「……そっか」


「ノア……全力前進!」


 方舟が進む、クウキに向かって……

 速度が上がる……

 もう止まらない。


「逃げても無駄だよ!この船は着弾するまで終わらない!」


 地面を削り

 暴風と豪炎と共に船は進む。

「……私は逃げない。」


 クウキの目光が宿る。

 身体を覆う白いモヤ……


 魔力の可視化……?


「……けっかい」

 

 城ほどの結界……

 ヒビだらけのガラスのよう。


「そんな結界じゃ、防げない!」


 加速した船はそのまま結界に衝突する。


「……ぐっ」

 ボロボロの身体から微かに漏れる悲鳴……

 

 一歩も下がらない少女の魂の叫びが私の耳に届く。


 私も下がれない!


「いっけぇぇぇ!」

 船の出力を上げて押し込む……


 パリィン

 結界が割れる音

 


 爆散する方舟

 これまでで一番大きな衝撃……

 熱波が荒野に吹き荒れる。


 我ながら立っているのがやっとだな……

 なにも見えない……


 煙が引き視界が広がる。


「クウキ……君すごいよ……」


 見る影もない花園には、巨大なクレーターが一つ。


 その中心にボロボロのクウキが倒れている。

 気絶した無傷のルーアを守る形で……


「でも勝ったのは私……S級は負けれないの」

 

 天使のような寝顔の少女

 クウキに上着をかける。

「こんな細い身体で私の攻撃を……」


 荒野に心地よい風が吹く……


 心がなぜか落ち着かない。


 

読んでいただきありがとうございます

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