叡王の証
31話 叡王の証
「ちょっと、なんでいんのよ!?」
「……まだ午前中だし。」
「大精霊に合わせて欲しいですの!」
「無理って言ったでしょ!もう帰ってよ!」
転移門が開く……
「なんでよ……」
転移されない……
「もうそんな魔力、残ってないでしょ……」
「アクア、事情があるなら話して欲しいですの。」
「そんなのないわよ……」
「事情を聞くまで私達はここを離れないですの!」
「話してくれたら、帰る。」
「はぁ……わかったわよ……」
「あたしはね、このダンジョンの主と契約してここにいるのよ」
「主?」
「そうよ、大精霊グランとね。」
「この場所は本来、魔力の多い人間や精霊達を閉じ込めて魔力を吸い続ける。いわば、ダンジョンの核なの。」
「今は綺麗な花畑でも、数十年前、あたしが迷い込んだときは、酷い光景だったわ。」
「生きたまま魔力を吸われ続ける人間や精霊がそこら中に転がっていたのよ……」
「それは……酷い……」
「そうでしょ。当時、力があったあたしは塔に行ってグランと契約したわ。囚われる者を解放して今後一切この場所に送らないでって……その代わり私がここに魔力を流し続けるってね。」
「でもあんた達が来たことで契約は破棄される。あたしも自由の身って訳ね。」
「事情は話したわよ。さっさと帰って!」
黙って話を聞いていたエリッタが目を開く。
「クウキさん……私……アクアを救いたいですの……手伝ってくれますか?」
「手伝う……」
「待ちなさい。あんた達、話聞いてた?契約は無効になったの!もうあたしは自由なの!」
「私のスキル〈叡王の証〉は時々、語り掛けてきますの……王としての素質を見せろ……と」
「そして今、私はそれに応えなければならない……
アクア、私はあなたを救わなければならないですの!」
「アクアの本体は塔の中……でしょ?」
「そんなのない……」
「急いで向かいますわよ。クウキさん」
「……いや、その必要はないみたい……」
足元が光る……
「転移門!あんた達逃げなさい!」
「クウキさん!」
エリッタが私の手を握る。
「大丈夫、大精霊が呼んでる……」
転移門が開く……
「アクア、貴様喋り過ぎたな……」
目を開くと鉄格子の向こうに私達の数十倍の大きさを誇るおじさん……
アクアの本体はここにあったんだ……
「グラン……あそこには誰も入れない契約じゃない!」
人間の大人サイズになったアクアが叫ぶ……
「そういえば、そんな契約だったな」
「グラン!アクアさんを解放してしなさい!」
「ほぅ……王族の娘……興味本位で転移させてみたが確かにいい魔力だ。」
……
「いいだろう……契約を破ったのは我だ。アクアを解放しよう。その代わりお前の1番大切な物を置いていけ……」
「いいですの……この剣を置いて行きますの……」
腰にかけていた剣を床に置く……
「貴様……死にたいのか?」
「なんですの……」
「そんな物じゃないだろ!貴様が大切な物、そこの小娘だな?」
「クウキさんは物じゃないですわ!」
「我には関係ない!アクアとそこの小娘……どちらかを解放しよう!」
「さぁ、どうする王族の娘……」
嫌な笑顔……
「エリッタ!気持ちは嬉しいけどクウキと帰りなさい……あたしは大丈夫だから……」
「アクア……」
エリッタの表情が歪む……
「王族ならば選んで見せろ!」
「エリッタ、アクアと行って……」
「クウキさん……」
「エリッタ!クウキと帰りなさい!」
エリッタの表情が王になる……
「私はアクアを選びます!グラン、私達を解放しなさい!」
さすが、エリッタ……
「エリッタ!」
「ふはははは!いいだろう!王族の娘!アクアと帰るがいい!」
転移門が開く……
目の前に見慣れた風景……
「また寮ですか……」
「エリッタ!なんであたしを選んだのよ!」
手のひらサイズのアクアが襟を掴む……
「アクア、落ち着いて欲しいですの。」
「なに言ってんの?クウキ、死ぬわよ!」
「私のスキル〈叡王の証〉は物事の本質を見抜きますの。」
「だからなによ!」
「そのスキルで感じましたの……」
「今まで出会った何よりも、もちろんグランよりも、クウキさんは強い……」
「そんなことありえない……」
「そしてアクア……あなたが私の契約精霊なんでしょう?」
王の目は真っ直ぐ精霊を見ていた。
塔の中では……
「小娘、貴様にはこのダンジョンの糧になってもらおう!」
「いやだけど」
「……え?」
「……いや、貴様に選択肢などないわ!」
無数に飛んできた魔力弾を私の結界が防ぐ……
「グラン、あなたを倒したら、ダンジョン無くなる?」
「……貴様、なにを言っているのだ……」
「無くなる前にキノコ取ろうと思って……」
「……キノコ?」
「えっキノコ知らない?」
……
「貴様、命いらんのか?」
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