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私達の地獄

26話 私達の地獄


 

「皆さん、おはようございまーす……」


「ハルさん」

「はい……」


「あの2人は?」

 

「……まだ来てません」


 演習場の空気が重くなる……


「先生!私が連れて来るわ!」

「大丈夫です。」


「はぁ……ハルさんお願いしてもよろしいですか?」

「はい……いってきます……」


 わたしは保護者じゃないのですが

 しょうがないですね……


 

「エリッタ、クウキさん、入りますよ!」

 とても静かです……


 ガチャ


 下のベッドに入ろうとするエリッタと目が合う……

 

「エリッタ、何をしてるんですか!?」

「いやこれは違うんですの!私寝るときはこの格好ですの!」


 高級感のある下着を隠す。


「いや!クウキさんになにを!」

「なにもしてないですの!ただ見てただけですわ!」

「いやなんで見てるんですか!もう授業始まってますが!」

「そんなのわかっていますわ!ただ……」


「ただ……?」


「……ただ良い寝顔だったので」


 ……

 

「……わかります。」

「ハル!?」


「2人ともうるさい……何時だと思ってんの……ー」

 

 ……

 

「「クウキさん!」」


 引きずるようにして演習場へ運んだ。


「ハルさん、ありがとうございますー」

「いえ……」


「お2人は授業後に罰則です。私の部屋に来てもらいます。」

「はい……」

「はいですわ……」


 ママに似た恐怖を感じた……


 

「では皆さん、これより授業を始めます。」


 生徒達の背筋が伸びる。

「今日から皆さんにはランニングをしてもらいます。」


 えぇ……


「先生昨日のレポートを見て皆さんの気持ちがわかりました。とにかく魔力が足りない……技術が足りない……ですよねー」


「先生、でもそれは、却下されましたが……」

 

「確かにハルさんの言う通りです。あなた達の弱さはそこじゃない。しかし足りないのは事実です。」


「なので今日からは走りましょう。魔力込めて全速力で!」


 演習場のトラックに並ぶ……


「クウキさん……アリージュさん……あなた達も走るんですよ?」

「えっ?」

「せんせ、私は……」

「はやくして」


「先生が終わりの合図を出すまで走ってくださいねー、それではいきます。ヨーイドン」


 一斉に身体強化して走り始める……


 せっかくだからハルと走りたいけど早いしなー

 エリッタと合わせよう……


 最初の2、3周は固まって走っていた集団が、徐々にバラ始める……


「ボンッ……」


 え?魔力弾?


「ペース落ちた人に撃ち込んでいきますよー、気をつけてくださーい」


 集団のペースが上がる……

「いいですねーその調子です。」


「もう無理……ダメ……」

 最後尾を走っていた青髪の女の子が倒れる。


 魔力切れかな……?

麗風の子(エウルリアス)、箱庭の癒し風」


 優しい風が青髪を揺らす……

「えっ……なにこれ……」

「これで走れるますねー」

 

「えっ」

 魔力を回復された青髪は全力で集団に合流する。


 その後も地獄が続いた……

 

「大丈夫です皆さん、先生の魔力もそろそろ切れるはずです。」

「そうですの……あんなスキルバンバン使っていたらすぐに切れるはずですの。」


「すぐって……いつ……よ」

 ……

「ルーアさーん」


「実は先生、回復得意なんですよー。魔力の心配はいりませんよー」


 話す前にルーア……回復してあげて……


 あと、私も適当に倒れとこ……


「はーい終了でーす!一旦お昼休憩ですよー。麗風の子(エウルリアス)、天空の癒し風。」


 クラスメイトを暴風が襲う。


「魔力、体力は充分回復しましたねー。午後は座学をするので教室に集合でお願いしますよー。では解散。」



 食堂にて

「クウキさん、何回倒れましたか?」

「覚えてない」


「エリッタは?」

「私も覚えてないですわ……」


「ハルとアリージュはあまり倒れてなかったですわね……」

「わたしは4回倒れてしまいました……」


「私もそんなもんね……」


「なんでしょう……ここは地獄ですわね……」


 ……

「そうね……」


 その後食堂には食器が鳴る音だけが響いた……


 ……


「午後……サボる?」

 ……

 ……

 ……

「アリージュ!なんてことを言うんですか!?」

「……サ、サボるなんて、とんでもないですの!」


「……あなた達……否定が遅いのよ……」

 

「……いいね」

「あなたも遅いのよ……」

 ……

「……否定しなさいよ」



 なんとか席に着き午後の授業が始まった。

 

「あれ!皆さん元気がないですねー。午前の授業で疲れちゃいました?」


「身体は大丈夫だと思うんですがねー。ちなみに1人でも寝たら皆んなで演習場に行くことになるので気をつけてください」


 え……なんで皆んな私を見るの?


 隣の席のハルが机をくっ付けてくる。


「一緒に頑張りましょうね!」

「う……うん」


 座学より走るほうがいいなぁ……

 寝たら怒られそうだから寝ないけど……


「クウキさん!、クウキさん!」

「クウキさん!寝たらダメですの!起きてですの!」

「クウキ!寝るんじゃないわよ」

 

「あっ……寝てないよ」


 ……


「クウキさん本来ならアウトですよー。今回は皆さんの必死さを買ってセーフにしますー」


「あと皆さん、授業中に必死で友達を呼ぶのも本来アウトですよー」



「では今日の授業は終了です。明日からこんな感じでいこうと思うのでよろしくお願いします。では解散。」


 ……

 

明日もランニングですか……



「遅刻した2人はこちらですよー」


 無言で先生について行く……

 

「はい着きましたよー」

 学園の端……薄暗い森の中に小さな小屋が一つ……


「ここが私の研究室でーす。」

 先生が扉を開ける……


「……え」

「これは……ひどいですの……」


 薬品の匂い

 蜘蛛の巣

 散らかった本

 山のように積み上がってるゴミ袋……


「ゴミ屋敷ですの!」


「これ以上汚すと先生、ここを追い出されるみたいなんですよー」

「……え……やだ入りたくない……」

「ダメですよ、クウキさん。遅刻した罰です!」


「私、こんなに汚い部屋を初めてみましたわ!」


 エリッタなんか嬉しそう……

 

「では2人ともお掃除頑張りましょー!」

「おー!ですの!」

「……おー」


「先生!ここに整理整頓の基本って書いてある本が落ちてますの!」

「あー、リィネさんから貰ったやつですねー」

「リィネと知り合いなんですのー?」

「リィネさんは学園時代の後輩ですよー。意外と仲良しです。」

「そうなんですの!」


「……仕事してよ」


 片付け始めて2時間……やっと床が見えた……


 もう絶対遅刻しない

 私はそう心に決めた……


「あっ……ゴキブリですの……」

「かわいいですよねー」

「え……きもいですの……」


「……おうち帰りたい」




読んでいただきありがとうございます

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