わたしと無気力な少女
わたしと無気力な少女
「あのー、同室の方ですか?」
違和感を確認のするため、すぐに扉を開けると涙目をした黒髪少女が立っていた。
「大丈夫ですか?ビックリさせてしまってすみません、中に入ってください」
(さっきの違和感は一体……)
「だっ大丈夫、私こそ驚かせてごめん、私はクウキ」
クウキさんは中に入るとわたしの隣で荷物の整理を始めた。
(なんか近いです……)
気まずい……
「そういえば、筆記試験は難しかったですね」
「そっ、そうだね」
「どこから来たんですか?」
「とっ、遠いとこだよ……」
なんかビクビクしててかわいい……じゃなくてわたしは実技試験に備えなければいけません。
(記念受験に構ってられません)
筆記試験の自己採点をすると言いながら寝る体勢に入ったクウキさんを置いて、運動場に向かった。
(試験中も寝ていたのに……)
遠くから来たらしょうか?
運動場に着くと多くの受験生で賑わっていた。
的に向かって魔法を打ち込んでいたり、受験生同士で模擬戦をして明日の実技試験に備えている。
「あら、ハルじゃない。こんなところで奇遇ね!」
「ルーアですか、久しぶりですね」
(めんどうな人に絡まれましたね……)
振り向くと先代剣聖の孫、ルーア・ダルクルが双剣を構えた立っていた。
「今回の試験で1位になって私のお爺様があんたの親より優れているって証明してあげるわ!」
(幼い頃からめんどうな子ですね……)
1年ぶりですが、ルーアも少しは強くなったのでしょうか?
鑑定させてもらいましょう。
ルーア・ダルクル、スキル「双剣術」「氷の担い手」、魔力3300。
(そういえばクウキさんと同じスキルでしたね……じゃなく相手になりませんね……)
「そうですか、頑張ってください」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「どうしたんですか?うるさいですけど……」
「模擬戦くらい付き合ってあげるわよ」
(運動にはちょうどいいですかね……)
「ではお願いします」
2時間後……
「ではルーア、わたしはこの辺で失礼します」
ボロボロになったルーアを跨いで部屋に向かう。
(たまたま跨いでしまっただけです……)
「ただいま戻りました。クウキさ……やっぱり寝てますね」
(さすがに1人でご飯に行くのはあれですかね……)
「クウキさん起きてください、ご飯の時間ですよ」
起きませんね……
クウキの顔を覗き込む。
(これは……今まで見たこともない幸せそうな寝顔です。)
もう少しよく見ようと顔を近づける。
(よく見ると幼い顔してますね……)
クウキの鼻息が頬をかすめる……
はっ!
わたしはなにをしているのでしょう……
「クウキさん起きてください」
そのままクウキさんを起こして夕食に行ったが、あまり覚えていない……
夕食後は1人で運動場に向かい無心で剣を振り続けた。
(ルーアを1回跨いだ。)
わたしはどうしてしまったのでしょう……
「ただいま戻りました。クウキさん」
「あぁ、おかえりハル」
(あっ……起きてましたか……)
「大丈夫ですか?クウキさん」
なぜか倒れそうなクウキさんを支える。
(お風呂上がりでのぼせてしまったのでしょうか?)
「おやすみなさい、クウキさん」
意識が朦朧としているクウキさんをベッドに運び、少しだけ寝顔を見てから浴室に向かった。
「なんですか……この魔力……」
異常なほど高い魔力濃度の浴室……ここで一体なにが?
クウキさんが実技試験の練習を……?
浴室がこんなになるまで?
記念受験ではなかった?
これがクウキさんの魔力……
少し長めのシャワーから出てわたしも眠りについた。
「心配だなぁ」
次の日クウキさんは実技試験が不安みたいで、あまり元気がなかった。
(確かに魔力700では少し厳しいかもしれません…)
「大丈夫ですよ、自分を信じていきましょう」
(もし試験に落ちてもわたしが使用人として雇って一生めんどうみます。)
闘技場には試験特有の緊張した空気が流れていて、さっきまで緩んでいたわたしの表情も引き締まる。
「長剣術、スラッシュ」
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(スキルを持っていれば入学できると思い込んでいる貴族の典型的なパターンですね。)
ろくに練習もせずに試験に臨んでいるに違いありません。
「いきます、炎の担い手ファイアーボール」
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炎魔法の中でも最弱の魔法をここまで成長させるとは並の努力では辿りつけない領域にいます。
(入学したらお友達になりたいです。)
その後は平均的な受験生が20人くらい続き、わたしの番がきた。
壇上に上がり、剣を構える。
父様が学生の時に出した記録が1200点……
わたしはそれを超えなければならない。
届かなかった師匠の背中を思い出す……
剣聖への執念が、わたしの剣を加速する……
「上級長剣術、シュレット」
最大限の魔力を込めて静かに振り下ろす。
音のない剣撃が盾を揺らした……
987……
視界から光が消える……
わたしには足りない
足りないから努力してきた
……でも届かない
悔しいですね……
「ハルって凄いんだね!」
(いや……)
「そうですか、ありがとうございます……」
「そうだよ。点数も凄かったし……構えとかスキル発動のフォームとかも凄かったし……なんか、こう……綺麗だった……」
スキルの感想で、綺麗……?
目の前にはキラキラした笑顔
理解できないその感想は、なぜかわたしの口角を上げた。
「最後1223番」
表情を隠すように俯いているとクウキさんが呼ばれた。
「頑張って」
笑顔でクウキさんを送り出す。
初めて見る真剣な表情クウキさん
……あれっ?
なんで?
見えないはずの魔力が
見えた気がした……
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