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自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。
以前より投稿ペースは落としています。
雨の町にチェック柄の傘が踊る。出勤してきた悠一の父親から借りたものだ。
小降りになった雨の中、悠一とコアは一本の傘に二人で入りながら街を歩いていた。
コアの保護者であるミスター・ポンドは二人に猶予を与えたのだ。
大助はレースの後、コアに呪いを解かせるとすぐに帰って行った。
二人は無言で雨の中を歩いていた。
互いにの肩が傘から出ないように体をくっつけ、短い間二人で過ごした場所を辿る。
魔法を使えば傘を差さずに歩けるが、二人とも黙っていた。
初めて出会った海岸、一緒にお使いに行ったスーパー、コアが見たいと言い出してこっそり忍び込んだ小学校、悠一の友達と一緒に遊んだ公園と駄菓子屋、長い階段を上って二人でアイスを食べた神社――。
…… ……。
やがて悠一の家の前に着く。ミスター・ポンドが待っていた。
「別れの挨拶は済ませたか?」
ミスター・ポンドが二人から顔を逸らしたまま聞いた。
悠一とコアは互いに顔を見合わせるとクスクスと笑いだした。
ミスター・ポンドが不思議に思って逸らしていた顔を向ける。
「……どうかしたのか」
「ううん。ただ私はここに戻ってくるだろうなって思っただけ」
「なに?」
「ほとぼりが冷めたらの話よ。クリーミィ・フレンズは世界を突破しようとする組織――ならこの国にもいつかは必要になるでしょ? その時の話」
ミスター・ポンドが悠一を見る。
悠一は
(きっと娘が彼氏を連れて来たら父親はこんな顔をするのではないか)
と思った。だけどそんなことは口にしない。
悠一はコアを引き寄せると傘を傾ける。
ミスター・ポンドからは傘で二人が見えなくなった。
数秒後、傘が真上に戻される。コアと悠一は頬を赤く染め、ミスター・ポンドは憮然とした表情になっていた。
「ユーイチ、またね」
「うん。また」
雨のカーテンが親子を隠す。カーテンが落ちると二人の姿は既になかった。
「また、きっと、会うんだ」
そう独り呟いた。
空を見上げるといくつもの雨粒が優しく降ってくる。
夕方にはきれいな虹の橋がかかるだろう。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。
気がついたら直しています。




