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スピンアウト!  作者: スックブ
第二章 少女アニマート(後編)
20/32

10

自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。


週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。

以前より秋応募用の作品も書き始めたので投稿ペースが落ちます。

(詳しく知りたいという方は活動報告に書いてあります。見なくても問題ありません)


今回の投稿は長い上に誤字脱字の確認が不足しています。明日、明後日を使って見直したいと考えています。

(2014/06/25追記:編集しました)

 サルベージ組合本部の正門が開くのは午前七時からだ。門が開くまではあと一時間ある。

 戦闘服姿の大助は大型二輪車に腰を掛けてレースの対戦相手を待っていた。

 大型二輪車には外付け装備がしてあった。黄色い球がいくつかと飛行機のエンジンを小型化したようなものが車体側面に二つずつ付けられていた。

 空は曇天。湿った風が吹き、夏にしては肌寒い気温だ。

 しばらくすると大助の目の前にファンシーな音楽と共に光の渦が発生した。

「派手な登場だ」

 大助がぼやくと渦の中から一人の少女と少年が現れた。

「魔法少女は可愛さが命なのよ」

二十歳(はたち)超えてもやるつもりか」

「道理を知らないの? 大人になった少女は魔女になるのよ」

 コアは相変わらずの軽装だった。髪も結んではいない。

「コースとルールは電報で送った通りだ。破るのは勝手だがその場合は俺の勝ちだな」

「ふん。安っぽい挑発!」

 コアが鼻を鳴らして答えた。


 大助が規定したルールは以下の通りである。

・定められたコース上を移動すること

・二十メートル以上の高さは飛ばない

・瞬間移動またはそれに準ずる行為は禁止

・直接的な妨害の禁止

 例:相手に向かって粘着ビームを撃つ、相手をカエルに変える など

・間接的な妨害には制限を設けない

 例:罵詈雑言を浴びせる、物に命を与えて妨害する など

 コースは以前戦闘した道をなぞることになる。サルベージ組合本部前からスタートし、廃墟の街で折り返す。ただ折り返した後は行きとは別の高速道路を使ってスタート地点に戻るようになっている。


「俺が勝ったら身体を元に戻してもらうぞ」

「はん! なら私が勝ったら、そうね、バイクに一生乗れない呪いをかけてあげるよ」

 大助はヘルメットを被り、コアは箒を召喚し、跨った。

「……」

「……ちょっとスタートの合図はどうするの?」

 大助は口ごもった。

「あー、そうだな……」

『考えていませんでしたね……』

「そういうことなら私に任せてもらおう」

 悠一のものではない渋い男性の声がした。

「この声、ポンドさん?」

 悠一が辺りを見まわす。

 地面にできた平面の影が三次元に盛り上がった。その影の膜を破り登場したのはトレンチコートとサングラスをかけた壮年の男だった。

「異論はないかね? アンドロイド君」

 国内指名手配中のミスター・ポンドが堂々と姿を見せた。彼も確保対象だが今は自分の身体がかかったレースの方が大切だ。

「……まぁ、ないな。落ち度はこっちにあるし」

「よろしい。ではこの国の風習に倣った合図を切ろう」

 大型二輪車が大きく唸り、箒は宙に浮く。


「位置について……よーい、――ドンッ‼」

 先に動いたのはコアだった。いや、既に動いていた(・・・・・・・)。

 後輪と設置するアスファルトが溶かされ、タイヤを巻き込んで固まっていたのだ。

 大型二輪車のパワーによって難なく脱出はできたが一拍出遅れたことによりコアとの距離が開いてしまった。

 大助は固まったアスファルトから抜けると共に左手に持った起爆装置を押し、捨てる。

 コアがカーブを曲がると同時に道路の両脇に仕掛けられた爆弾が爆発した。

 爆風とタイルやレンガの破片がコアを襲う。

(そんな攻撃、通らないよ!)

 コアの周囲に張られた空間断絶膜によって危害を加える現象は一切彼女には届かない。煙が晴れない中、コアは魔法で映し出した地図を見て箒を飛ばす。

(何かおかしい……)

 しばらく順調に飛行していたがそれが逆に引っかかる。

(……バイクの音が聞こえない。 スタートダッシュしても馬力は向こうの方がある。とっくに追い付いてもいいはずなのに……)

 コアは魔法をソナーのように撃って大助の生態波動を探る。大助の現在位置が魔法で写した地図の上に表示された。

(やられた!)

 地図上には無数の反応が移動している。おそらく動物や捨てられたゴミに大助の生態波動を発する機械を仕掛けていたのだろう。爆弾を設置していたことから入念に準備されていたことがわかる。

(もう! いつまで真っ暗なままなのよ!)

 コアが突風を巻き起こし煙幕を晴らす。飛行高度を二メートルから十メートルまで上げた。

上空から煙幕を確認するとコースの先から風に乗って流れてきていた。

「まさかっ――」


『飛行体が高度を上げるのを確認――。どうやら煙幕の仕掛けに気づいたようです。予想より遅かったですね』

 ジュニの音声が骨伝導をして大助に届く。

 大助は右足の指に力を入れて“肯定”の返事をする。

 意識会話を封じられ、代わりとして左右の足の指に電極を付けた。それにより“否定”/“肯定”の簡単な返事ができるように対策をとった。

『《カタル・スパゲティア》を格納します』

 《カタル・スパゲティア》は水陸両用の煙幕発生装置である。水中ではイカ墨のように、地上では黒い霧を発生させる。

 だが煙幕だけでは大型二輪車の発生させる大音量でコアは自分が追い抜かれたと知ることができたはずだ。

 秘密はジュニがスタート直後に消音機能を使ったことだ。さらにスタート前にエンジンをふかすことでコアに大音量を意識づけたこともある。

 場面は街を出て廃墟へと向かう高速道路へと移った。


『油断は禁物ですよ、大助』

 ジュニの言葉に“肯定”で答える。

 身体のスペックが落ちても最高速度は空飛ぶ箒よりこちらの方がまだ速い。しかし、距離を開けてもあちらには魔法があり、こちらは脆弱な人間の身体だ。

『感知。後方にエネルギー力場が発生……消滅。なんらかの魔法を発動し終えたと推測します――』

 ジュニの報告が続く。

『――こちらに接近する飛行体を感知。大助は運転に集中してください。迎撃は私が行います』

 ジュニは大型二輪車の後方タイヤの上から管腕(チューブアーム)に繋がれた歪曲した刃《尻尾の振動カッター》を展開、さらにと外付け装備の一つである車体両脇に設置された黄色いダンデライオンを車体からパージして次々と落としていく。

 球は割れ、中から綿毛のようなものが飛び出し空中に漂った。

『飛行体、来ます』

 瓦礫に天使のような羽が生えた物体が飛んでくる。瓦礫は綿毛に触れると次々と爆発した。《ダンデライオン》は空中機雷を散布する外付け装備なのである。機雷原を掻い潜った瓦礫も《尻尾の振動カッター》に切り裂かれる。

『エネルギー反応感知! 路面が凍ります‼』

 後方から路面が凍っていく。大型二輪車も追い抜かれた。

(ぐっ!)

 一瞬氷にタイヤが滑ったが立て直す。

『《圧力光線》を展開します』

 車体の両脇から管腕がそれぞれ三本ずつ展開し、路面に向かって光線を発射する。光線は補助輪の働きをし車体が安定した。だが速度は落とさざるおえない。

『第二波、来ます! これで《ダンデライオン》は最後です!』

 最後の空中機雷をばら撒く。だが羽の生えた瓦礫は大型二輪車を無視して前方に見えてきた廃墟の街へと飛んで行った。

 廃墟の街が揺れる。ビル群にファンシーな手足が生え大地に立った。

(これは……)

 大助はヘルメットの中で上唇を舐めた。


 コアが廃墟の街へ入ると既に三体のビルが大型二輪車によって砕かれていた。

 直接指揮を取れなかったためビル群は統率のとれた動きができないでいた。

(捉えた!)

 だが大型二輪車を足止めをするには十分だった。残り七体の意思を与えられたビルが大助を襲う。

 コアはすれ違った大型二輪車には槍と尻尾が生えているのを見た。

 大型二輪車は粘着する液体を腕の生えたビルの拳に発射する。ビルに振りほどかれ宙に投げ出された。

 スローモーションで再生されるかのように二人の視線が交わった。

(笑った⁉)

 ヘルメットは黒ガラスで覆われているため表情は見えなかったが魔女の予感が働いた。コアは特殊防御壁魔方陣で周囲を覆う。

 地響きが起きた。

 地面が割れ、二本の足で立っていたビル群はたちまちにバランスを崩した。他のビルを巻き込んで倒れていく。

(大人げないっ‼)

 大助はコアに勝つために街一つ沈めるほどの爆弾を仕掛けていたのだ。

 大型二輪車が地面にいくつかの光線を当てながら着地する。コアの見たところ着地によって車体が破損した様子はない。

 崩れ落ちる街を背後に二人は平行に並んだ。

 コースは折り返しに入る。最後のコースは大きく弧を描く高速道路だ。途中にあるトンネルの数は来た道より多い。

(トンネル内で何か仕掛けられても山を越えて飛べばいい。それか土の中を透過して突っ切れば私の方が前に出られる――)

 そう考えているとコアの鼻先に冷たい雫が落ちた。

(な――っ‼)

 コアが上空を見上げると小粒だが雨が降り始めていた。数分もしないうちに大雨になるだろう。

 雨が地面に吸い込まれ土が泥状になっれば透過するのに魔力を大幅に消費する。

 コアが大型二輪車を見た。距離がじわじわと離されていくのがわかる。

 雨によって顔にひっつく髪が鬱陶しかった。

 コアは風圧や飛んでくるゴミを避けるために前方にシールドを張っている。それを横殴りで飛んでくる雨を防ぐため身体を覆うバリヤーの形にしていた。なのでどうしても集中力と魔力を防御に傾けることになる。

 大型二輪車の両側面から伸びていた管腕の照準がコアに向けられた。

 反射的にコアは空間断絶膜、タイムスロー、ワキナ・クー・デュラダの結界の特級三重防御壁魔法陣を展開させた――が管腕を向けられたのはブラフだった。

 コアは一瞬の虚を突かれ、反対に大型二輪車はさらに加速をした。先ほどコアに向けられ照準は地面に向けられており大型二輪車は安定した走行をしていた。

(このままで終れるかっ!)

 ジュニの眼が据わり精神と魔力を高める――。


 天気は大雨になっていた。

『上手くいきましたね、大助』

 雨が降り出したのは偶然ではない。大助はあらゆる天気予報を確認し、今日をレースに選んだのである。

(結果は始まる前から決まっていたのさ)

 それでも大助は加速を緩めなかった。また後方から瓦礫が飛んでくるかもしれないし、用意した外付け装備の最後の一つは人間の身体には負担が大き過ぎる。できれば使いたくなかった。

『後方でエネルギーが収束しています! 今までにないほどの数値です‼』

 大助は機械人間コールドマンの時には体感したことのない、冷や汗が流れるのを感じた。


 大型二輪車が見えなくなるとコアは箒から両手を離し、魔力を集中させていた。

「右手に雫、左手に島――」

 コアにとって呪文とは精神を高揚させるための暗示でしかない。

「かのものは蛇。かのものは海の底――」

 だから言葉はその瞬間、最も思い入れのある言語を使う。

「守り神四神をもって防ぐ術なし――」

 コアの奥底にこの国で出会った少年の顔が思い浮かぶ。暗示に組み込んだ。

「魔女は少年を受け入れ約束を必ず果たす――」

 ここに呪文が完成する。

「世界蛇のあくび(ヨルム・ンガンド)ッ‼」


『あわわわわわわ……! 無茶苦茶ですっ! 無茶苦茶ですよっ⁉』

 ジュニの取り乱した音声が大助の骨を通して響く。大助はジュニに“否定”の合図を送った。

『津波ですっ! 高さは五十メートルを超えていますっ‼』

 異能者や元未確認生物が発生する前触れとなった災害において五十メートルの津波は珍しくもない規模だった。だが絶対兵器が使えない現在では恐るべき脅威だ。

『津波の中に反応を確認っ! 三十メートルほどの大きさ! まさか――この生態波動はグラビトンっ⁉』

 ジュニは迫り来る津波の中で蠢く影を感知した。影の視線が明確にこちらを追っているのがAIである彼女にも感じ取れた。

『《イオンエンジン・ブースター》起動させます‼』

 外付け装備の《イオンエンジン・ブースター》の効果はシンプル、すなわち爆発的な加速だ。

 大助はジュニに《マジックロープ》で身体を固定され衝撃に備える。


――風景が背後に消し飛んだ。


 ギリギリで保たれた意識の中ジュニの音声が聞える。

『ファーストエンジン、パージします』

 ジュニはトンネルの中で左右一つずつ外付けエンジンを切り離した。

『あの津波はこの山を越えられません』

 コアが発生させた津波はこのトンネルを掘られた山にぶつかって勢いを落としていた。トンネル内に濁流が迫ってくるが残った加速力を落とさなければ追い付かれることはない。

 トンネルを抜け、雨空の下に出る――やけに暗い。

 大助が空を見上げる。そこにはグラビトンの巨体があった。波乗りの要領で山を飛び越えていたのだ。

『ラストエンジン、始動っ‼』

 大型二輪車は再び加速をする。

 グラビトンの直下の高速道路は破壊され、地面がトランポリンのようにはずんだ。

 連鎖的に高速道路は崩れていき《イオンエンジン・ブースター》を始動したため大型二輪車は宙で錐もみ状態になり落下した。

『――っ‼』

 ジュニは《イオンエンジン・ブースター》をパージすると各種武装を急展開させた。

《圧力光線》を各方向に撃ち、地面のバウンドによって打ち上げられた瓦礫に照準を合わせ車体のバランスを取る。

《マジックロープ》を着地地点に放ちクッション作る。

《尻尾の振動カッター》で飛んでくる大きい瓦礫を弾くと同時に反動で車体の向きを変える。

《分子チェーンソーの槍》を《マジックロープ》で作成したクッションに突き刺し、勢いを殺す。揺れが治まるとスイッチを入れクッションを弾き飛ばした。

『飛行体、接近!』

 コアが大助の真上を過ぎていく。

 見るとコアの上空の雲が裂け、彼女を導くように光の道を作っていた。

ジュニは展開していた武装を全て収納した。余計な機能も切る。雨の影響を受けなくなったコアに追い付くには少しでも空気抵抗を失くし、計算をシンプルにしなければならない。

『瓦礫は前輪で弾き飛ばします』

 最後の直線勝負が始まった。

 整備された道ならともかく、オフロードを走るには大なり小なり専用の訓練が必要とされる。

(粗大ゴミの島と変わりはしない)

 大助が住み、電気スライムと戦う場所はいつも粗大ゴミで溢れていた。

 コアは迫り来る大助の気配が魔法を使わずとも感じられた。

 彼女は津波を発生させた後、雲を割る光の階段の魔法を使い極度に疲労していた。

 魔力の消費を抑えているため低空飛行に移ってはいるがいつ底をつくかわからない。それでも速度は緩めなかった。

 二人は同時に街の門をくぐる。

 ここにきて二人は並んだのだ。

 サルベージ組合の本部が見える。門は既に開かれており悠一とミスター・ポンドの傘を差した姿がある。

 ここで大助はほんの少し、コアに幅寄せをした。コアは速度を落とさず横に避けるがその直線上には――悠一の姿があった。

「――っ‼」

 コアは急ブレーキをかける。

魔法使いは慣性の法則によって箒から投げ飛ばされるが空中でミスター・ポンドに抱きかかえられた。

 大型二輪車は門をくぐりタイヤ痕を残しながら減速する。

 完全に静止すると大助はヘルメットを脱ぐと静かに宣言した。

「俺の勝ちだ」

誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。

発見しだい随時修正していく予定です。


気がついたら直しています。

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