短編1 大助とジュニの騒がしい日常
自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
以前より予告していた通り短編集になります。
短編は偉大な作品の数々に倣い各キャラクターの過去編です。
週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。
以前より投稿ペースは落としています。
「大助とジュニには今日、オオスズメバチの駆除に行って欲しいのよ」
女性型機械人間のエリート、兎槍たまきが朝一番にそう言った。
ここは玖賀財閥本社ビルの一室、機械人間たちのフロアである。
「……そんなの業者に任せておけよ」
タイムカードを通したばかりの男性型機械人間、保志大助は鞄を机の上に置くと兎槍の要求を突っぱねた。
通常のサラリーマンなら上司から振られた仕事を拒否するなんて考えられないが、彼らは普通とは違っていた。
『まずは事情を聞かせて貰いませんと』
大助のサポートAIであるジュニが机上に設置された投影装置でホログラフの姿を現して尋ねる。
「だってあなたたちができるのって雑用くらいじゃない。計算はケアレスミスの連発、仕事に関する自主勉強はしない、同じミスを何度もするする、叱られても聞いているのか流しているのかわからない……まだあるけど聞く?」
「いえ……いいです」
『機械人間にもゆとり教育ってありましたっけ?』
兎槍が首を振った。
「これはもう本人の資質よ」
「……うぅっ」
『あ、泣かないでください大助!』
「だから今日から大助は雑用依頼専門にするわ。戦闘能力なら平均点だしね。というかそれもできなければスクラップなんだけど。どうする?」
大助はトイレに駆け込んだ行った。
『やらせていただきます』
そのあと大型二輪車を飛ばして依頼のあったコロニーに着く。
超能力者や怪物が闊歩する原因と考えられる災害によって街は壁に囲まれるように作られている。
「スズメバチ退治なんか機械人間のすることじゃない……」
『でもやらなければスクラップですよ』
「こんな仕事、いつか絶対やめてやる」
『その言葉も何度目ですか。それにしても大きい家ですね……』
先ほどから塀が続き、門が見えてこない。
「もし堅気でない家だったらどうする」
『ちょっと止めて下さいよ。そうだったら今回の仕事も失敗して大助だけスクラップですよ』
「オレだけ⁉」
『私は優秀なAIですから。あ、門が見えてきましたよ』
大型二輪車を表札の前で停める。
「……」
二人は無言で表札を読んだ。
『大助がフラグを建てるからっ‼』
「なっ、オレのせいじゃないだろ⁉ というか兎槍はわかっててオレを派遣したな⁉」
表札には業界では有名な団体の会長の名前が掘られてあった。
「どうする? 逃げるか⁉」
『逃げても戦闘専門の機械人間の追手に殺されるだけですよ! ダメ元で依頼をこなしましょう⁉』
「ええい、ままよっ!」
大助がインターホンのボタンを押した。
屋敷内は庭園が広がり、池には高そうな錦鯉が放流されており獅子おどしの音が響き渡る。
大助は屋敷に通されると大広間に通された。煌びやかな大広間の奥には老人が座っていた。明らかに堅気ではない雰囲気だ。
「く、玖賀財閥から派遣されてきた機械人間です……。害虫駆除だということで」
老人が手をあげて大助を黙らせた。
「男のお前たちは玉無しだと聞く。本当か?」
「は、はひっ! ……本当です」
老人は脇に控えていた側近に目配せする。側近が動くと周りに待機していた部下たちが立ち上がる。
いざとなれば機械人間の腕力と外で待機させてある大型二輪車をジュニに操縦させてもらって逃げ出す算段はできていた。だがそれは任務の失敗を意味する。
「あ、あの……」
大助が声を絞り出すと側近が冷たく言う。
「安心しろ。バラすとかそんなつもりじゃない。ただお前には裸になってもらうだけだ」
「オレにそんな趣味はありませんっ⁉」
「俺たちにだってないわボケッ!」
大助は部下の男たちに取り押さえられる。
「わっー! わかりました自分で脱ぎます! だから乱暴はヤメテッ‼」
大助は特殊スーツを脱ぐと裸で立った。それを部下と側近の男達から眺めまわされる。
「よし、もういいぞォ」
側近がそういうと老人の方へ報告しに行った。
「噂には間違いないです」
「そうか」
大助は特殊スーツを着直すと老人に向かって叫んだ。
「一体なんですかっ! 戦争するんなら絶対兵器で消しとばしますよっ⁉」
大助の物言いに部下たちがいきり立つが側近が一括すると収まった。
「お前に依頼があるのは間違いない。俺の娘に関してだ」
老人が説明をまとめるとこうだ。
ある日、突然娘の許婚がおかしくなった。
娘は縁談を嫌がっていたが許婚の方は乗り気だった。それが急に今回の件は断りたいといいだしたのだ。
こちらにも面子があり、なにより可愛がってきた一人娘が侮辱されたも同然の行為だ。
だがこちらが報復する前に許婚は「チャチャチャを極める」と言い出して海外に飛ぼうとしたところを政府組織に逮捕された。
制裁するためにに政府組織の化け物集団に戦争をふっかけるわけにもいかず、断念した。
そのあとも何人か見合いをさせた。しかし、「サルサを」「フラメンコを」「カタカリを」と言って無理やり渡航したのを政府組織に捕まった。
部下を娘の説得に向かわせても同じ結果だったが、母親と囲っている愛人に説得を任せたところ要求は突っぱねられたが異常はなかった。
「娘は異能に目覚めた可能性がある。女王蜂のような男を意のままに操る能力に。玉無し機械のお前なら娘を説得しろ」
老人は一歩的に大助に通告すると奥へと引っ込んだ行った。
「あの、交渉は専門じゃないんですけど……」
弱弱しく抗議する大助に側近が冷たく告げる。
「できなかったらお前は生きてこの屋敷から出られなくなるだけだ」
「へ?」
「当然だろ。この件はトップシークレットなんだ」
「それって成功しても帰れなくなるんじゃ……」
「ふん。成功したらお前は一生お嬢の世話係だよ」
呆然とする大助は部下たちに引きずられながら娘の部屋の前まで連れていかれた。
連れてこられたのは離れだった部下たちはすぐに帰ってしまった。
「……どうしようか」
意識会話で大助がぼやき、その場に座り込んだ。スクラップになることに恐怖はないが、明日をもう感じられないと思うと地面が崩れていくような感覚がある。
優秀なAIは見かねたアドバイスを大助に言う。
『簡単ですよ』
「え?」
『問題は娘さんにあるのでしょう? なら……』
意識会話で二人は相談を終える。
大助は力強く立ち上がった。その顔に自信が感じられる。意を決して扉を叩いた。
「大助、この前の依頼の件でお礼が来てるわよ」
兎槍が大助に手紙を持ってきた。手紙自体が珍しいがさらに直筆だった。
数日後、大助はいつものように出勤していた。幸いまだスクラップにはなっていない。
「えっとどれどれ……」
兎槍が手紙の封を開ける。
「あれ……それオレ宛の手紙じゃ……」
「あなたの自作自演かもしれないでしょう」
『信用されてませんね……』
「えー、――この度は家を解放してくれて感謝いたします。今回の件で古いしきたりを捨て、娘を新会長にし、組織を新しく生まれ変えることができました。これからのご活躍にも期待しています――ってこれだけ?」
兎槍が手紙と封筒を大助に渡す。
「でもまぁスクラップにならなくて良かったわね。取りあえず今日は街の清掃ボランティアに参加してきてちょうだい。詳しくはジュニに送っておくわ」
そう言って兎槍はこことは別にあるエリート用のフロアに戻ってしまった。
『ボランティアの日程表が届きました』
「清掃か……。この手紙の件よりマシかな」
『大助、私の感知したところによるともう一枚手紙が入っていますよ』
大助が封筒からもう一枚の紙を取り出す。ジュニが書かれていた女性の字を読み上げる。
『この件について他言無用。喋ればどんな手を使っても報復する』
大助はそっと手紙を封筒に戻すと引き出しにあったマッチで燃やした。
「女性は怖いね」
『あら、心外な』
大助とジュニの騒がしい日常は師走事件が起きるまで続いた。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。
気がついたら直しています。




