第五話 翌日
翌日、ラニは本屋を訪れた。
本屋といえど、本は売り物の全体の二割にも満たない。
しかし、この村にここ以外に本を扱うところがないからここを本屋と呼んでいる。なぜならば、ここの村人の半分は読み書きができない。農業をするのに文字はいらない、それよりももっと読み取らなければならないことがたくさんある。例えばそれは天気であったり、作物の体調であったり。
しかし、貨幣経済、市場経済の波は末端の村にまで届いている。より豊かな生活をするためには作物をより多くのお金にしなければいけないし、いずれこの村も生きていくためには作物をより多くのお金にしなければなくなる。だから、年寄りよりも若者の方が文字を読めるし計算もできる。
それに近頃は、近隣の王都までいき仕事を見つけている者もいるらしい。本屋の店主がそう嘆いていた。
「なんでも、もう時期に戦争がおっぱじまるんだとさ。嫌な世の中になったもんだよ全く」
禿げ上がった頭を撫でながら、悪態をついた。ラニは膝みたいな頭だな、と思った。
「どうせこの村には関係ない」
「それがそうでもなくてな。最近は甲冑を着た大仰な奴らが、何かと金やら作物やら、この間は若者だって連れて行きやがった」
「そう、戦争だね」
「わしらみたいな女やジジイは、命以外の全部を持っていかれる。何が楽しくて戦争をするんだか」
「きっと楽しいんだ。そうでないと、こんなに戦争しない」
「かもしらんな。ああ嬢さん、それは銀貨二十枚だよ」
どこかの誰かの日記のような本が、十年は使えるクワと同じ値がするのか、とラニはおかしくて頬が緩んだ。
しかし、ラニには百年も使えるクワがあったからこの本を買った。
ここ最近では、お金は本にしか使っていない。ポンのところではお金以外のもので取引をするし、地図を書き換えるのにお金はかからない、情報もここではタダだ。
それにラニは本に対して本としての価値以上の魅力を感じていた。古今東西の人が、津々浦々の出来事を2枚の皮の間に収める。それに対して彼女は魔法を感じていた。あんなけったいで不気味なものではなく、こういうものこそ魔法であるべきだとも感じた。
しかしやはり銀貨20枚は高価であったので十四枚までまけてもらった。どうせ私しか買う人がいないのだから、と言ったら案外すんなりと折れてくれた。
本屋を出てから、地図を書き換えようか、それとも市場の方を見て回ろうか、と迷い広場の淵で座り込んでいたところ村中がざわめき始めたのに気がついた。ラニの座っている広場は、村の正門とされる簡素な門からまっすぐ北に伸びた道の先にあり、何も遮るものがないので、
人だかりが膨らんでいくのを見ることができた。集まった人々の顔はどれも険しく、歓迎されない者がきたのだなと察しがつくと同時に、さっきの本屋の話を思い出した。
戦争がやってきたのか。
街に軍需品を徴収のために王国騎士が訪れ、ラニにも本の供出を求める。
しかしそれを受け入れられない彼女は、魔法を使うことを決断した。
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第六話 魔法の発動1
第七話 魔法の発動2
第八話 決断




