第四話 少年カイノとの出会い2
「それにしても、なんでこんな村に置いていったかね」
「魔女の山の麓にあるから」
「わかったように言うじゃないか」
「魔女とはそういう生き物なんだ。実際にはそういう生き物じゃないんだけど、そういう生き物と思ってくれた方が簡単」
なるほどな。とポンは言った。今度こそわかっていない。
彼の口ぶりからポンが口外していないらしいことは推測がついたし、そうでなくとも魔女がラニのことを見つける方法はいくらか思いつく。ラニもまた、近くに住む魔女を探そうと思えば探すことができる。
なんせ、長生きであるから時間をかけられる。
「つまり、こいつはお前に引き渡せというメッセージみたいなものか」
「そうじゃないと思いたい」
「それは知らないな」
少年はようやく自分の運命を察したようで、もう一度ラニの黄色い目を覗き込んだ。今度は魔女としてではなく、親として、であった。
そして、その反応は好感触とは取れなかった。ラニは、自覚もしていたが、子育てができるような誠実さを持ち合わせていない。ただ、恩を反故にするような性格もまた持っていない。だから非常に迷った。
「ポンさん、私こういうの向いていない」
「知ってるさ。俺もお前には預けたくないが、魔女のことは俺らには無理だ。それにここに連れてきた女も、お前をご指名だから預けるしかない」
ラニも、魔女を人の手で育てることがいかに不可能であるのかを推し量ることができた。もし自分が人間に育てられたら、天と地をひっくり返してしまうかも知れない。
ラニは、その場に突っ立ってしばらく考えた。いや、答えなど一つであったのだが、それを答えと認めるまでにしばらく突っ立った。しばらく突っ立って、今すぐには腹を決められないことを自覚し、絞り出すような声で「三日」と言った。
「三日後、道具を受け取るときに返事をする」
「すまないな。面倒ごと押し付けちまって」
「ポンさんには無理だから、大丈夫」
「お前はたまに一言余計だよ」
「だからこういうのに向かないんだよ」
間違いない、とポンはまた笑った。
少年、どうする? 私とくる? ラニは尋ねた。声ではなく、目で。
少年は、「カイノ」と言った。
「僕の名前はカイノ。シスターがつけてくれた」
「カイノ、いい名前だ。君は私とくることになっても構わない?」
カイノは返事をしなかった。わからない、という返事だった。
「ポンさん、そういうことだから三日後にくる。それでもいい?」
「ああ。どのみち受け取りに来るだろ」
「うん、それじゃ」
ラニはカイノにもそれじゃ、と言った。カイノはうん、と頷いた。




