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《人間地獄》  作者: 翔欸
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7/14

第七話:反抗の狼煙

王都全域に、戦火が広がり始めていた。


競技場、森林、工場、城、そして街道――。


飛龍騎士団と革命軍の戦いは、王都の各地で同時に繰り広げられていく。


一人で王都軍を相手にするレノの前には、「噴火竜」の力を持つワットドが立ちはだかる。


一方、炎恩もまた、鬼化を発動させた強敵と激突することに。


そして工場内部では、マンディがついに囚われていた仲間たちと再会する。


その中で、血魔剤に隠された真実も少しずつ明らかになっていく。


さらに黒龍は、王都の中枢へと迫っていた。


これは、もはやただの戦いではない。


王都全体に広がり始めた反抗の火種。


その炎は、やがて大きな革命へと変わっていく――。


それでは――


第七話、『反抗の狼煙』。


お楽しみください。

(城壁の外――競技場周辺)


轟――――!!


巨大な爆発音が、競技場周辺一帯に響き渡る!


雷光が戦場を駆け抜け――


「うわあああああ!!」


数名の王都軍は、反応する暇すらなく吹き飛ばされた!


「早く! 奴を包囲しろ!」


兵士たちが四方八方から一斉に押し寄せる。


レノは周囲を見回した。


「人、多すぎだろ……」


バチバチッ――!!


瞬時に全身へ雷がまとわりつく。


次の瞬間――


轟――!!


レノの姿が、その場から消えた!


黄色い雷光が、人混みの中を高速で駆け抜けていく。


拳撃、蹴り、雷撃――


雷光が通り過ぎるたびに、数名の兵士が次々と地面へ叩き伏せられていく。


「左だ!」


「違う! 後ろだ――!」


ドゴッ――!!


叫び終わるより早く、レノの拳が兵士を吹き飛ばした。


反対側の兵士が、すぐさま武器を構える。


「攻撃!!!」


レノが勢いよく振り向く。


その視線の先にあったのは――


アイヴェルが残していった巨大な電磁砲。


レノは一気に電磁砲へ駆け寄ると、それを右腕へと装着し、素早く距離を取る。


雷が電磁砲へと集中していく。


バチバチバチバチ――!!


大量の電流が、一気に電磁砲へ流れ込む!


砲口が眩い光を放ち始める――


「な、なんだあれは!?」


レノは口元を僅かに吊り上げた。


「これは……お前らへのプレゼントだ!」


轟――――――――!!


巨大な電磁砲の一撃が、戦場を一直線に貫いた!


凄まじい衝撃が前方の兵士たちをまとめて吹き飛ばし、地面までもが大きく抉り取られる!


一瞬にして――


密集していた包囲網が、レノ一人によって強引に引き裂かれた。


「ば……化け物だ……」


残った兵士たちは目の前のレノを見つめ、思わず後ずさる。


しかし――


ズン――!!


巨大な足が、地面に倒れていた武器を踏み潰した。


ワットドがゆっくりと姿を現す。


彼は周囲に倒れている兵士たちを見渡し、それから目の前のレノへ視線を向けた。


「まったく……使えねぇ馬鹿どもだ!」


レノもまた、彼の存在に気づく。


二人の視線が――


初めて真正面からぶつかった。


「…………」


「…………」


次の瞬間――


轟――!!


ワットドの巨大な身体が、一瞬で消えた!


レノの瞳が大きく見開かれる。


「な――」


ドゴォ――!!


巨大な拳が、真正面から襲い掛かる!


レノは瞬時に身体を横へ逸らした。


拳が頬を掠め――


轟――!!


背後の地面が、粉々に吹き飛んだ!


レノは素早く距離を取り、電磁砲へ再び雷を集中させる。


「この体格で……」


ワットドが勢いよく振り返り、再びレノへ向かって突進する!


「こんなに速いのかよ!」


ドン! ドン! ドン!!


拳と雷光が次々とぶつかり合う!


レノはワットドの重い拳を何度もかわし、隙を見つけて反撃する――


ドゴォ――!!


「くっ!」


レノが歯を食いしばる。


ほんの一瞬の隙――


電磁砲の一撃が、ワットドの腹部へ直撃する!


しかし――


ワットドは僅かに半歩後退しただけだった。


腹部から煙が上がっているものの、致命的なダメージはまったく与えられていない。


「……!」


レノが顔を上げる。


ワットドは口元を大きく歪めた。


「……それだけか?」


レノは信じられないといった表情を浮かべる。


次の瞬間――


轟――!!


巨大な拳が、真正面からレノへ叩き込まれる!


レノは身を翻してかわした。


「どういうことだ……!?」


「どうして攻撃が効かない!?」


レノが疑問を抱いた、その時――


ワットドの両腕に異変が起こり始める。


その口元が、僅かに吊り上がった。


「坊主……お前、なかなかやるじゃねぇか……!」


「それに――」


「特等級の『素材』だな!」


(同時刻――北東部・森林内)


「今……俺たちを、速攻で片付けるって言ったのか……?」


ロックの顔から笑みが消える。


「俺たちを舐めるのも大概にしろ!」


翠峰は怒りに任せ、両手を大地へ叩きつけた!


轟――!!


地面が激しく揺れ動く!


無数の太い木の枝と蔓が地中から一斉に飛び出し、まるで巨大な蛇のように炎恩へ襲い掛かる!


次の瞬間――


轟――!!


炎恩が正面から迫る蔓を、炎を纏った拳で粉砕した!


「なんだ、お前ら……この程度なのか?」


その言葉が終わった瞬間――


シュッ――!!


数個の岩石が側面から高速で飛んでくる!


炎恩は身体を横へ逸らしてかわす。


ドン! ドン! ドン!!


岩石が次々と地面へ叩きつけられる!


「ちっ!」


炎恩は素早く後方へ飛び退く。


しかし――


「捕まえたぞ!」


翠峰が両手を強く握り締める!


轟――!!


炎恩の足元の大地が、一瞬にして隆起した!


巨大な岩石が四方からせり上がり、炎恩を完全に閉じ込める!


ゴゴゴゴゴ――!!


そして最後に――


巨大な岩石が上空から、炎恩目掛けて勢いよく落下した!


轟――――――――!!


土煙が一瞬にして森林全体へ広がる!


ロックは息を切らしながら、目の前を見つめた。


「……これで終わっただろ?」


翠峰は答えない。


二人は砕けた岩石の山を、じっと見つめている。


「……」


次の瞬間――


バチ……バチバチ――


岩石の奥から、僅かな音が聞こえてきた。


ロックが眉をひそめる。


「なんだ……?」


轟――!!


岩石の隙間から、眩い赤い光が漏れ出した!


「これは……」


カッ! カカカカ――!!


炎恩を押し潰していた巨大な岩石が、急速に赤く染まっていく!


温度がどんどん上昇していく――


岩石の表面までもが、溶け始める!


「まさか……!?」


轟――――!!


灼熱の炎が、一気に天へと噴き上がった!


溶けた岩石が、煮えたぎる溶岩となって炎恩の身体から流れ落ちていく。


そして炎恩は――


依然として、その場に立っていた。


全身を、凄まじい炎が包み込んでいる。


「……」


炎恩はゆっくりと顔を上げる。


「お前ら……まさか、これで俺を倒せると思ったのか?」


翠峰の瞳が大きく見開かれる。


ロックもまた、信じられないものを見るような表情を浮かべた。


「こいつ……一体、何なんだ……?」


炎恩は軽く肩を回す。


轟――!!


身体を包む炎が、再び大きく燃え上がる!


「まさか……この程度しかできないのか?」


翠峰とロックは互いに顔を見合わせる。


二人の表情が、同時に険しくなった。


次の瞬間――


轟――!!


二人の身体から、強大な力が同時に解き放たれる!


翠峰の身体に、凶悪な鬼化の紋様が浮かび上がる!


ロックの身体もまた、変化を始めた!


翠峰は炎恩を睨みつける。


『鬼化――開放!』


「なら――」


「本当の力で、お前をぶっ倒す!!」


轟――――――――!!


二人が同時に飛び出す!


「殺してやる!!」


ドゴォ――!!


炎恩は両腕を掲げ、二人の攻撃を真正面から受け止めた!


轟――!!


三人の力が激しくぶつかり合う!


森林の木々が、衝撃波によって根こそぎ吹き飛ばされる!


炎恩の口元が――


ゆっくりと吊り上がった。


「……ようやく本気になったのか?」


次の瞬間――


轟――!!


真紅の炎が、炎恩の身体から一気に噴き上がる!


「じゃあ、俺も――」


炎恩が顔を上げる。


その両眼の奥で、炎が燃え上がる。


カッ――!!


鬼化の紋様が、一瞬にして炎恩の全身へと広がっていく!


全身を炎に包みながら、頭部からはまるで悪魔の角のような二本の角が突き出す!


『鬼化――開放!!』


轟――――――――!!


(同時刻――工場内部・某所)


マンディは必死に走っていた。


その後ろから、大量の武装兵が追い掛けてくる。


「止まれ!!」


「逃がすな!!」


バン! バン! バン!!


何発もの銃弾が次々と飛んでくる!


マンディは素早く身体を横へ逸らした。


弾丸が頬を掠め、前方の壁へと深く撃ち込まれる!


「ちっ……人が多すぎるっての!」


マンディは素早く角を曲がり、脇にあった配管の陰へ身を隠す。


足音が急速に近づいてくる――


「どこへ行った!?」


「手分けして探せ! 逃がすな!」


マンディは口元を手で覆い、息を殺す。


数名の兵士が、彼女の隠れている場所の前を走り抜けていく。


やがて足音が遠ざかると――


マンディはゆっくりと顔を覗かせた。


「……ふぅ……」


周囲を慎重に見回す。


ここは工場というより――


巨大な地下施設そのものだった。


太い配管が壁に沿って無数に伸びている。


中央では巨大な機械が絶え間なく稼働し、その周囲には液体で満たされた巨大な容器が整然と並んでいる。


マンディの表情が、徐々に険しくなる。


「ここが……血魔剤の生産区域ってこと?」


「それにしても……この工場、デカすぎない……?」


彼女はそのうちの一つの容器へ近づき、中を覗き込む。


容器の中では、液体が絶えず蠢いていた。


「これを全部壊したら……」


マンディは頭上に張り巡らされた無数の配管を見上げる。


「この工場全体を止められるはず……!」


その時――


「見つけたぞ!!」


マンディの瞳が大きく見開かれる!


「なに!?」


遠くから、再び足音が聞こえてきた!


しかも――


一人や二人ではない!


「早く! この近くにいるぞ!」


「出口を全部封鎖しろ!」


マンディは歯を食いしばる。


「……もう、しつこいったら!」


彼女は素早く振り返り、再び逃げようとした。


その瞬間――


前方の廊下の奥。


牢獄の中に――


見覚えのある二つの人影が現れた。


マンディは思わず足を止める。


「……!」


そのうちの一人が、ゆっくりと顔を上げた。


「マンディ……?」


マンディの瞳が一瞬で大きく見開かれる。


「……マジェシーさん!?」


その隣では――


カイザーも顔を上げた。


「お前……どうしてここに……?」


「逃げ出してきたのか……?」


二人とも全身傷だらけで、鉄鎖によって拘束されている。


マンディは背後を見る。


迫り来る追手。


そして目の前の二人へ視線を戻す。


短い沈黙の後――


彼女は笑みを浮かべた。


「それ……こっちの台詞だよ!」


「二人とも無事で、本当によかった!」


遠くから――


「前だ!!」


「捕まえろ!!」


大量の足音が、どんどん近づいてくる!


マンディは歯を食いしばり、手にした銃を勢いよく構えた!


バン! バン! バン!


銃弾が一気に放たれる!


鉄鎖が撃ち抜かれ、二人を拘束していた鎖が破壊された!


「撃て!!」


兵士たちが三人へ向けて一斉に発砲する!


カイザーは手首を軽く回した。


「世話になったな……!」


一歩、踏み出す!


轟――!!


分厚い鎧が瞬時に上半身と両腕を覆う!


銃弾が次々と鎧へ命中し、甲高い金属音を響かせる!


キン! キン! キン!


「なに!?」


「怯むな! 攻撃を続けろ!」


さらに大量の銃弾が飛んでくる!


その瞬間――


マジェシーが勢いよく飛び出した!


「今だ!」


マンディも迷わず続く!


二人が左右から一気に距離を詰める!


ドン!


マンディが至近距離から一人の兵士の武器を撃ち抜く!


その隙を突き、マジェシーがもう一人の兵士へ飛び掛かり、勢いよく叩き倒す!


カイザーは二人の前に立ち――


轟――!!


正面から飛んできた攻撃を、真正面から受け止めた!


「ぼさっとするな!」


カイザーが怒鳴る!


「こいつらを全員片付けるぞ!」


マンディは素早く振り返り、連続して引き金を引く!


バン! バン! バン!


マジェシーは反対側から切り込み、マンディと挟み込むように攻撃を仕掛ける!


わずか数秒――


追手たちは三人によって完全に叩き伏せられた!


廊下に再び静寂が戻る。


マンディは荒く息を吐きながら、倒れた兵士たちを見下ろした。


「……やっと静かになった!」


マジェシーはゆっくりと立ち上がる。


「どうやって逃げ出したのかは知らないけど――」


「よくやった!」


マンディは頷く。


しかし、すぐに表情を引き締める。


彼女は振り返り、背後に並ぶ巨大な容器を見つめた。


「マジェシーさん、カイザーさん!」


「今はもっと重要なことがあります!」


彼女は周囲の巨大な機械を指差した。


「ここ……どうやら血魔剤の生産区域みたいです!」


カイザーの表情が、一瞬で険しくなる。


「……血魔剤だと?」


「はい!」


「しかも……原料はどうやら、人間から抽出されたものみたいです!」


マジェシーとカイザーの二人が息を呑む。


その瞳が大きく揺れる。


マンディは銃を強く握り締めた。


「だから……ここを全部壊すつもりです!」


「それと、ここに囚われている人たちも助ける!」


マジェシーはしばらく黙っていた。


そして――


ゆっくりと口を開く。


「そんなの……決まってるでしょ!」


カイザーも周囲を見渡す。


そして拳を強く握り締めた。


「やるぞ!」


マンディは二人を見る。


「じゃあ、決まりね!」


彼女は銃を持ち上げ、頭上に張り巡らされた無数の配管へ銃口を向ける。


「私たちで――」


「この工場を完全にぶっ壊す!」


その時――


轟――――!!


遠くから、巨大な爆発音が響き渡った!


地下施設全体が大きく揺れる!


三人が同時に顔を上げる。


「……?」


続けて――


轟―――!!!


壁から大量の埃が落ちてくる。


カイザーが爆発音の聞こえた方向を見る。


マジェシーも口元に笑みを浮かべた。


「どうやら……」


マンディは銃を強く握り締める。


「……外も始まったみたいね!」


(森林外――工場前)


「うわあああああああ!!」


無数の工場守備兵が、激しい突風によって吹き飛ばされていく!


ヨギが地面へ着地し、両足で数メートルにわたって地面を滑る。


周囲では、絶え間なく爆発音が響き渡っている――


「はぁ……はぁ……」


ヨギは顔を上げる。


工場の正門前――


大量の守備兵が、なおも次々と押し寄せてくる。


「人、多すぎだろ!?」


ダイハオが刀で迫ってきた兵士を斬り飛ばし、荒く息を吐く。


「はぁ……こいつら、俺たちを工場に近づける気がまったくないぞ!」


ヨギは答えなかった。


ただ戦場の向こう――


巨大な工場を見つめていた。


轟――!!


工場内部から、爆発が起こる!


ヨギが眉をひそめる。


「今の爆発……中から聞こえたよな?」


ダイハオが目を見開く。


「まさか……」


「どうやら……成功したみたいだな!」


ヨギは両手へ大量の空気を集める。


「よし!」


「一気に突破するぞ!」


(城内――高塔)


轟――!!


廊下の奥から、巨大な衝撃音が響き渡る!


数名の兵士が壁へ激しく叩きつけられ、そのまま地面へと落下した。


「ぐあっ……!」


「そんな……」


そのうちの一人が、苦しそうに顔を上げる。


目の前には――


黒龍が刀を振り抜いていた。


煙が晴れ、その中からゆっくりと歩み出てくる。


その服には、ほとんど埃すら付いていない。


倒れた兵士たちを見下ろし、黒龍は口元を僅かに吊り上げた。


「満足したか?」


周囲には――


彼を止めようとしていた者たちが、すでに全員倒れている。


一人の兵士が、黒龍を睨みつける。


「こ……こいつ……」


「まるで……化け物だ……」


黒龍は相手にしない。


ただ、ゆっくりと顔を上げる。


次の瞬間――


彼の足元から、黒い影がゆっくりと広がっていく。


まるで生き物のように、床を這いながら周囲へと広がっていく。


黒龍はゆっくりと目を閉じる。


周囲のすべて――


音。


気配。


足音。


そのすべてが、彼の感覚へと入り込んでくる。


そして――


黒龍は勢いよく目を開いた。


再び、笑みを浮かべる。


「見つけたぞ……国王陛下!」


轟――!!


黒い影が一気に爆発する!


同時に、黒龍の姿も消えた!


その場に残されたのは――


廊下にゆっくりと消えていく、煙だけだった……


(城壁の外――街道)


「逃げろ!!」


「軍隊が来たぞ!!」


街道では――


大勢の民衆や奴隷たちが、混乱しながら逃げ惑っていた。


泣き声。


足音。


爆発音。


すべてが入り混じり、街中に響き渡る。


「全員止まれ!」


「一人も逃がすな!」


大量の王都軍が、街道の向こうから一斉に迫ってくる!


その時――


轟――!!


一筋の電流が、突然地面へ落ちた!


王都軍の目の前の地面が、一瞬にして爆発する!


「うわあああ!!」


数名の兵士が衝撃によって吹き飛ばされた!


残った兵士たちは、思わず足を止める。


「なに……!?」


煙の中から――


一人の少女がゆっくりと姿を現す。


アイヴェルは機械の腕を掲げ、逃げる人々の前へ立ちはだかった。


「……ここまでよ!」


「これ以上、無駄な抵抗をするのはやめなさい!」


一人の兵士が彼女を睨みつける。


「飛龍騎士団だ!」


「捕まえろ!」


「こいつと、あの奴隷どもをまとめて捕らえろ!」


大量の兵士が一斉に飛び出す!


アイヴェルは後退しなかった。


ただ、一度だけ背後を振り返る。


そこには――


壁際で身を縮め、怯えている数人の民衆。


その中には、母親の服を強く握り締める小さな少女の姿もあった。


「ママ……」


アイヴェルは一瞬だけ沈黙する。


そして――


再び前を向いた。


バチッ――バチバチバチ!!


機械の腕へ強烈なエネルギーが凄まじい勢いで集まり始める!


「……怖くないわ!」


小さな少女が、呆然とアイヴェルを見つめる。


アイヴェルは腕を掲げる。


「私が……あなたたちを守る!」


轟――――!!


巨大な電流が一気に放たれる!


先頭にいた王都軍が、まとめて吹き飛ばされた!


「うわああああ!!」


「止まるな! 攻撃を続けろ!」


さらに大量の兵士が、四方八方から押し寄せてくる!


アイヴェルは素早く身体を翻す。


轟! 轟! 轟!!


次々と電流を放つ!


そのすべてが、背後にいる民衆を正確に避けていく。


しかし――


「さすがに……多すぎる……」


アイヴェルは荒く息を吐く。


機械の腕が、連続使用によって僅かに熱を帯びている。


彼女はそれを見下ろす。


「私……まだやれる!」


次の瞬間――


轟!!


街道の反対側から、さらに王都軍の一団が現れた!


「殺せ!」


「全員捕らえろ!」


アイヴェルはゆっくりと顔を上げる。


その瞳に、強い意志が宿る。


そして――


両腕を広げる。


すべての民衆を守るように、完全にその前へ立ちはだかった。


「ここを通りたいなら……」


バチバチバチバチ――!!


無数の電流が、彼女の周囲で激しく弾ける!


「まずは……私を倒してからにしなさい!」


轟――――――――!!


(城壁の外――競技場周辺)


轟―――!!!


雷光と巨大な影が、再び激しく衝突する!


「うおおおっ!!」


ワットドが巨大な爪を振り抜く!


ドゴッ――!!


レノは瞬時に身体を横へ逸らす!


巨大な竜爪が、レノの肩を掠める――


その直後、背後の地面が一瞬で引き裂かれた。


あまりの速度に、レノが反応しきれないその瞬間――


右腕の電磁砲が、無残にも破壊された!


「ちっ!」


レノは素早く距離を取る。


そしてワットドの両腕を見つめた。


先ほどまで人間のものだった腕は――


すでに巨大な竜の爪へと完全に変化していた。


太い腕には硬い鱗がびっしりと覆い、鋭い爪が冷たい光を放っている。


「それは……竜の爪か?」


ワットドは答えない。


次の瞬間――


巨大な身体が再び突進してくる!


「また来た!」


レノの身体が一瞬で雷光へと変わる!


ドン! ドン! ドン!!


二人の姿が戦場を高速で交錯する!


竜爪が次々と地面を引き裂く――


対して雷光は、攻撃の隙間を何度もすり抜けていく!


「速すぎる!」


ワットドが勢いよく爪を振り下ろす!


レノは低く身を沈めてかわす!


「今だ!」


レノが雷を纏った拳を叩き込む!


轟――!!


拳がワットドの胸部へ直撃する!


しかし――


ワットドは数メートル後方へ滑っただけだった。


鱗から僅かに煙が上がる。


「くそっ! またこれか!」


レノはワットドを睨みつける。


「攻撃が……まったく通らない……!」


その時――


ワットドが顔を上げる。


「悪くねぇ!」


レノが一瞬、動きを止める。


「……何?」


ワットドはニヤリと笑った。


「さっきからずっと……俺の攻撃をかわし続けてる!」


その両眼が、徐々に鋭くなる。


「それだけじゃねぇ……!」


「ちゃんと反撃までしてきやがる!」


レノは眉をひそめる。


「くだらねぇこと言ってないで――」


バチバチッ――!!


再び雷が全身へまとわりつく!


「お前の弱点を見つければ――俺はお前を倒せる!」


それを聞いたワットドは――


突然、大声で笑い始めた!


「ハハハハハ……!!」


「弱点だと?」


ワットドは大きく口を開く。


「だったら――」


「自分で探してみな!」


轟――――――――!!


恐ろしい炎が、ワットドの口から一気に吐き出された!


「な――!?」


レノの瞳が大きく見開かれる!


炎が一瞬にして地面一帯を飲み込む!


ゴォォォォ――!!


轟轟轟轟――!!


レノは雷光へと変わり、凄まじい速度で炎をかわしていく!


「こいつ……火まで吐くのか!?」


レノは背後の燃え盛る戦場を振り返る。


「お前……一体……」


ワットドは炎の中にゆっくりと立っていた。


「今さら気づいたのか?」


その身体が――


激しく変化し始める。


カキ――


カカカカ――!!


骨格が外側へ向かって膨張していく!


鱗が瞬く間に全身を覆っていく!


両腕。


両脚。


胴体――


そのすべてが、徐々に本物の竜の姿へと変化していく!


「お前が厄介な奴だってことは認めてやる……」


ワットドの声が、徐々に低くなっていく。


「だから――」


巨大な身体が、一気に膨れ上がる!


「俺も、もう遊びは終わりだ!」


次の瞬間――


轟――――――――!!


凄まじい衝撃波が、戦場全体を駆け抜ける!


炎が天高く噴き上がる!


煙の中から――


巨大な噴火竜が、ゆっくりと立ち上がった。


頭部からは凶悪な角が突き出している!


巨大な翼が大きく広がる!


分厚い鱗が全身を覆う!


口からは、絶え間なく灼熱の炎が漏れ出している。


「グォォォォォ――――!!」


レノは遠くから、その姿を見つめる。


そして初めて――


その表情に、明確な緊張が浮かんだ。


「ふ、噴火竜……!?」


ワットドがゆっくりと頭を下げる。


巨大な竜の瞳が、レノを真正面から睨みつける。


「さあ――」


「お前の限界を見せてみろ!」


その口元が、大きく吊り上がる。


「特等級の素材……!」


「俺を失望させるんじゃねぇぞ!!」


⸻


【人物・能力紹介】


糞髭――ワットド


魔鬼能力:「噴火竜」


鬼化することで、本物の巨大な噴火竜へと変身することができる。


レノはゆっくりと顔を伏せる。


両拳を、強く握り締める。


バチバチバチバチ――――!!


無数の雷が、レノの身体から一気に噴き出す!


黄色い雷光が、天へと突き抜ける!


レノがゆっくりと顔を上げる。


その両眼に――


雷光が走る。


そして――


鬼化の紋様が、レノの身体へと浮かび上がる!


カッ――!!


鬼化の紋様が、瞬く間に全身へと広がっていく!


雷が凄まじい勢いで身体を包み込む!


額から――


二本の凶悪な魔鬼の角が、ゆっくりと伸びていく!


轟――――――――!!


雷光が天へと突き抜ける!


レノはゆっくりと顔を上げた。


「なら……試してみるか!」


『鬼化――開放!!』

第七話、いかがでしたでしょうか!


今回は、ついに王都各地で戦いが本格的に始まりました。


レノ、炎恩、マンディ、ヨギ、黒龍、アイヴェル――


それぞれが別々の場所で戦いながらも、少しずつ一つの戦いへと繋がっていきます。


そして今回、個人的に特に描きたかったのが、ワットドの完全鬼化。


人間の姿から竜の爪へ。


そして炎を吐き――


最後には、本物の巨大な噴火竜へ。


それに対して、レノもついに鬼化を発動しました。


果たして、二人の戦いはどうなるのか。


さらにマンディたちは、マジェシーとカイザーと合流。


血魔剤工場の破壊作戦も、いよいよ始まります。


王都の各地で巻き起こる戦いは、少しずつ一つの大きな流れへと繋がっていきます。


そして次回――


戦いは、さらに激しさを増していく。


第八話も、ぜひお楽しみに!

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