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《人間地獄》  作者: 翔欸
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第五話:真の支配者

王国によって敵と定められた飛竜騎士団。


奴隷、血魔剤、地下闘技場、人体改造――。


そして、五年前に死んだはずの男「ティア」。


王国の裏に隠された真実を知ったエンたちは、もはや後戻りすることのできない場所まで来ていた。


仲間たちが囚われ、王国軍が迫る中、彼らはそれぞれの場所で戦うことを決意する。


しかし――。


すべてを見下ろす王、デイヴィ。


そして、その王を待ち受けていたブラックドラゴン。


「この国を支配しているのは――誰なのか?」


第五話、開幕。

放送が終わった――。


「おい! 今の声、誰が言ったんだ!」


エンは辺りを見回した。


「デイヴィだ! どうやら……俺たちの行動も計画も、完全にバレてしまったようだ!」


ダイゴウは拳を強く握りしめる。


「あの野郎……!」


その瞬間――。


ザ――ザザ――。


エンの通信機から突然、音が響いた。


「エン! エン! 聞こえるか!」


通信機の向こうから、ヨギの焦った声が聞こえてくる。


「アイヴェル……レノ……そっちは無事か?」


「うん! こっちは大丈夫! でも……一体、何が起きてるの?」


アイヴェルが問いかける。


その頃、別の場所では――。


レノがすべての奴隷たちを連れて、現場から撤退していた。


「まずい……マジェシ、カエサル、マンディの三人と連絡が取れない」


ヨギの声には、不安が滲んでいた。


「何だって……? あいつらが……?」


エンは歯を食いしばり、無意識に拳を握りしめた。


「くそ……俺が勝手に判断したせいで……」


後悔と悔しさが胸の奥から込み上げてくる。


しかし、次の瞬間――。


エンは突然、顔を上げた。


「……待て!」


全員がエンを見る。


「みんな、ちょっと聞いてくれ……」


エンは、自分が知っているすべてを、一つ一つ仲間たちに伝えた。


血魔剤。


奴隷。


地下闘技場。


人体改造実験。


王国の陰謀。


そして――ティア。


すべてを聞き終えた一同は、しばらく沈黙した。


「ティア……だと……?」


ブラックドラゴンが目を見開く。


「そんな馬鹿な……五年前、あいつは死んだはずだ!」


ヨギの顔にも、信じられないという表情が浮かんでいた。


「なるほど……」


レノは俯き、拳を強く握りしめる。


「闘技場が……そんな目的のために存在していたなんて……」


その時――。


ダイゴウがエンの通信機を手に取った。


エンは不思議そうに顔を上げ、ダイゴウを見る。


「ここからは……俺に話させてくれ!」


一同が息を呑む。


ダイゴウは通信機のスイッチを入れた。


「飛竜騎士団の皆……」


通信機の向こう側で、全員が静かに耳を傾ける。


「今の状況は、もう理解していると思う……」


「国王は、すでにお前たちを敵と定めた!」


「だが、これから狙われるのは……お前たちだけじゃない」


ダイゴウは、背後にいる仲間たちへ視線を向ける。


「俺たち全員が……王国に追われることになる!」


短い沈黙。


「だが……」


ダイゴウはゆっくりと拳を握りしめた。


「ここまで来てしまった以上……もう、退く理由なんてない!」


「お前……」


エンは顔を上げ、ダイゴウを見る。


「俺たちは、これから国王が何をするのかも分からない」


「お前たちの仲間が、今どうなっているのかも分からない……」


「それどころか……最後まで生きてここから出られるのかさえ、分からない」


ダイゴウは一度、言葉を止める。


そして――。


「だが、一つだけ……俺にははっきり分かっている!」


「これ以上、あの人たちを犠牲にするわけにはいかない!」


「奴隷たちを、これ以上闘技場へ連れて行かせるわけにはいかない!」


「血魔剤を、これ以上戦場へ流させるわけにはいかない!」


「そして何より――」


「この国が……これ以上、嘘で人々を騙し続けることを許してはいけない!」


通信機の向こう側――。


レノは黙っていた。


アイヴェルは、避難していく奴隷たちへ視線を向ける。


ブラックドラゴンは、ゆっくりと目を閉じた。


ダイゴウは深く息を吸い込む。


「だから……ここからは!」


ダイゴウは仲間たちを真っ直ぐ見つめる。


「俺たちがどこにいようと!」


「目の前に誰が立ちはだかろうと!」


「俺たちの目的は、ただ一つ!」


「この国に隠された真実を……暴く!」


「そして――奪われた人々の自由を……もう一度、取り戻すんだ!」


ダイゴウの声には、強い決意が込められていた。


⸻


――場面切り替え


一年前・王都監獄


冷たい牢獄の中――。


ダイゴウは、薄暗い隅に一人で座っていた。


王位を失った彼は、ここに囚われていた。


陽の光もない。


自由もない。


そして――自分がこの先、生きていられるのかさえ分からない。


その時――。


ドォォォン――!!!


激しい爆発音が、監獄全体に響き渡った。


「敵襲か!?」


「何が起きた!?」


「急いで状況を確認しろ!」


看守たちは、爆発が起きた方向へ一斉に走っていく。


炎が瞬く間に廊下を飲み込み、煙が辺り一帯へ広がっていく。


ダイゴウは顔を上げ、弱々しく牢の外を見つめた。


「こ……これは、一体……?」


その時――。


煙の中から、二つの人影がゆっくりと姿を現した。


「お前たちは……誰だ……?」


ダイゴウの声は弱々しかった。


そのうちの一人が牢の前まで歩いてくる。


そして――手を差し出した。


「国王陛下……我々には、あなたが必要です」


ダイゴウは差し出された手を見つめた。


長い沈黙。


そして最後に――。


ダイゴウもまた、その手を取った。


⸻


――現在


「だから……これからは……みんな、頼む!」


「俺たちと一緒に……戦ってくれ!」


短い沈黙の後――。


エンは両拳を握りしめ、胸の前で力強く打ち合わせた。


鋭い眼差しを浮かべながら、笑う。


「……あ? そんなの、当たり前だろ!」


その時――。


ブラックドラゴンがヨギから通信機を受け取った。


そして、ゆっくりと口を開く。


「みんな……もう、答えは決まっているんだろ?」


「問題ない!」


ヨギ、アイヴェル、レノが、それぞれ力強く答えた。


ブラックドラゴンが作戦命令を下そうとした――その瞬間。


ザ――ザザザ――。


通信機から突然、激しいノイズが走った。


「……?」


ブラックドラゴンが眉をひそめる。


「これは……?」


ザ――ザ――。


「……誰か……聞こえる……?」


通信機の向こうから、かすかな声が聞こえてきた。


全員が、一瞬で静まり返る。


「この声……」


アイヴェルが目を見開く。


「マンディ!」


「マンディ! お前たち、どうしたんだ!」


エンが焦ったように叫ぶ。


通信機の向こうで、マンディは声を抑えながら荒い息を吐いていた。


「いいか……よく聞いて……」


「今、マジェシとカエサルは……どこかへ連れて行かれた……」


「でも……一つだけ確かなことがある……」


「俺たちは……まだ全員、同じ場所にいる……」


「今……俺は……」


ザ――ザザ――。


「……」


ピ――――。


通信が途切れた。


「どうやら……捕まったようだな……」


ヨギは拳を握りしめる。


「マンディ……!」


エンの顔が青ざめる。


レノの表情も険しくなり、アイヴェルは言葉にならないほどの怒りを露わにしていた。


その時――。


ピピ――。


ピピ――。


ピピ――。


ヨギが通信機を見つめる。


「これは……座標だ!」


ブラックドラゴンは何も言わず、送られてきた位置情報を見つめる。


「……なるほど」


ブラックドラゴンの目が鋭くなる。


「森の外れだ!」


エンがすぐに反応する。


「そこって……俺たちが向かう予定だった場所じゃないか!」


「やっぱり、おかしいと思ったんだ!」


ブラックドラゴンが顔を上げる。


「ならば……行動開始だ!」


ブラックドラゴンが命令を下そうとした――その瞬間。


突然――!


グォォォォォ――!!!


遠くから、巨大な咆哮が響き渡った!


レノが顔を上げる。


「何だ……この音は……?」


次の瞬間――。


巨大な影が、空から一直線に降下してきた!


ドォォォン――!!!


凄まじい突風が吹き荒れる!


地面には巨大な亀裂が走り、大地そのものが激しく揺れた。


レノやアイヴェルたちは、両腕で顔を覆い、猛烈な風圧に耐える。


奴隷たちは衝撃に耐えきれず、次々と地面へ倒れていく。


やがて――。


強風が止む。


煙の中から、一人の屈強な男がゆっくりと立ち上がった。


そして、まっすぐに彼らの前へ歩いてくる。


その背後には――大量の王国兵が続いていた。


「チッ……本当に腹が立つな」


無精髭の男――ワトドは、破壊された闘技場を見つめる。


その顔から、笑みが消えていく。


「俺がちょっと離れている間に……」


ワトドは周囲を見渡す。


「随分と派手に俺の闘技場を壊してくれたじゃねぇか……」


「それだけじゃない……」


「俺の奴隷を連れて逃げようとするなんてなぁ!」


ワトドは顔を上げる。


そして――背筋が凍るような笑みを浮かべた。


「おいおい……お前ら、何か勘違いしてねぇか?」


「俺の縄張りで好き勝手やった挙句……」


「そのまま何事もなかったように帰れると思ってんのか?」


ワトドは拳を握りしめる。


「そんな都合のいい話があるわけねぇだろうがぁぁぁ!!」


レノが奴隷たちの前へ立ちはだかる。


全身から電撃が迸る。


アイヴェルもすぐさま両腕を構え、電磁砲を展開する。


奴隷たちは恐怖で全身を震わせていた。


「レノ! アイヴェル!」


通信機から激しい爆発音が響く。


ドォン――!!


バァン――!!


「くそ……!」


アイヴェルの声が通信機から聞こえる。


「副団長! こっちは足止めされた!」


「どうやら、俺たちはしばらく動けそうにない!」


レノの低い声が響く。


ブラックドラゴンは数秒間、黙っていた。


そして――ゆっくりと目を閉じる。


「……なるほど」


ブラックドラゴンはゆっくりと目を開いた。


その瞳には、凍りつくような鋭さが宿っている。


ブラックドラゴンはヨギから通信機を受け取る。


そして、全員へ向けて指示を下した。


「これから――」


「ヨギ! すぐに森へ向かい、エンと合流しろ!」


「エン……そして、そちらにいる人々を連れて、マンディが送ってきた座標へ向かえ!」


「レノ……アイヴェル……奴隷たちを絶対に傷つけさせるな!」


「了解!!」


ヨギ、エン、レノ、アイヴェルが力強く答える。


その時――。


「お前ら……そこで何をコソコソ話してやがる?」


ワトドが不機嫌そうに睨みつける。


「俺のものを返してもらうぞ!」


ワトドが叫ぶ。


次の瞬間――。


「かかれぇ!!」


その命令と同時に、背後にいた王国兵たちが一斉に突撃する!


「なあ、アイヴェル……」


レノがアイヴェルへ振り返る。


「お前も……俺と同じことを考えてるか?」


アイヴェルはすぐに意図を理解した。


「あなた……絶対に死なないでよ……!」


次の瞬間――。


レノが右手を掲げる。


無数の雷が、掌へ猛烈な勢いで集まり始める。


「――こいつら、全員ここに釘付けにするぞ!」


轟――!!!


巨大な雷光が、天へ向かって走り抜けた!


兵士たちは一瞬にして混乱に陥る。


「攻撃しろ!!」


「奴隷を逃がすな!」


「殺せ!!」


その瞬間――!


一筋の雷光が、人混みを一瞬で貫いた!


ドォォン!!


「うわあああああ――!!」


煙の中から、レノがゆっくりと歩いてくる。


その背後には――雷撃によって吹き飛ばされた兵士たち。


「……誰が、お前らに触れていいと言った?」


レノの背後には、アイヴェルが巨大な電磁砲を残していた。


そして彼女は、すべての奴隷たちを連れて、その場から離れていく。


一方――。


ヨギは風の力を使い、空を飛んでエンのもとへ向かおうとしていた。


「ん……? そういえば、副団長は?」


ブラックドラゴンは答えなかった。


ただ振り返り――。


遠くに見える城へ視線を向ける。


「ヨギ……」


「お前は、今の状況で一つ疑問に思わないか?」


「……え?」


ヨギは困惑した表情を浮かべる。


ブラックドラゴンは静かに続けた。


「相手は……どうやって、俺たちの居場所を知った?」


ヨギは答えられない。


その瞬間――。


ブラックドラゴンの足元から、巨大な黒い影が湧き上がった。


「……え?」


次の瞬間――。


ブラックドラゴンの姿は、まるで影に溶け込むように消えた。


⸻


――場面切り替え


王城・高塔


デイヴィ国王は、高塔の上から眼下に広がる混乱を見下ろしていた。


「ここまで来ても……まだ抗うつもりか……?」


デイヴィはゆっくりと振り返る。


「まあいい……どうせ、もうすぐゲームは終わる」


「すべては……私の掌の上だ!」


「ハハハハハハハハ!!」


デイヴィの高笑いが、高塔全体に響き渡る。


「――そうか?」


デイヴィの瞳孔が、瞬時に縮んだ。


冷たい汗が額を伝う。


身体が――動かない。


「な……何……?」


背後から、低く冷たい声が響く。


そこに立っていたのは――。


ブラックドラゴン。


「お前は……間違っている」


短い沈黙。


デイヴィはゆっくりと振り返る。


その目の前に現れたのは――紛れもなく、ブラックドラゴンだった。


ブラックドラゴンは、口元を僅かに吊り上げる。


そして――。


「最初から最後まで……」


一歩、デイヴィへ近づく。


「お前たちを支配しているのは――」


ブラックドラゴンは、静かに言い放った。


「――この俺だ!!」

第五話を読んでいただき、ありがとうございます!


今回は、ついに物語が大きく動き始めました。


エンたちが知った王国の真実。


ダイゴウが再び立ち上がった理由。


そして、捕らわれたマンディたちの救出。


それぞれの場所で戦うことになった飛竜騎士団ですが――その裏では、すべてを操っている存在がいるようです。


そして最後に登場したブラックドラゴン。


果たして彼は、なぜデイヴィの居場所まで辿り着くことができたのか?


そして――「この俺だ」という言葉の意味とは?


次回、物語はさらに大きく動きます。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!


よろしければ、感想や評価をいただけると励みになります。


次回もどうぞよろしくお願いします!

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