第十三話:新たな戦局
皆さん、こんにちは!
今回の更新は、少し間が空いてしまいました。
現在、作者は新しい仕事に変わったばかりで、以前よりも執筆に使える時間が少なくなっています。
そのため、これからもしばらくの間は更新ペースが少し遅くなるかもしれません。
ですが――
『人間地獄』の更新をやめるつもりはありません。
どれだけ時間がかかっても、この作品を最後まで描き続けたいと思っています。
この作品は、作者にとって大切な夢の一つです。
アクセス数を時々確認していますが、
たとえ読んでくださる方が一人だけだったとしても――
その一人が読んでくれている限り、僕はこの物語を諦めません。
読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます。
これからも少しずつですが、必ず更新していきます。
『人間地獄』を、どうかこれからも応援していただけると嬉しいです!
それでは、第十三話をお楽しみください!
(グラポメディ王都――事件終結後)
戦いが終わった王都――
そこには、かつてないほどの静寂が広がっていた。
かつて栄えていた街並みは、今や見る影もない。
崩れ落ちた建物。
砕けた石畳。
そして、戦闘によって残された巨大な爪痕。
そのすべてが、先ほどまで繰り広げられていた激戦の激しさを物語っていた。
しかし――
これまでとは、何かが違っていた。
この街に、もう恐怖はない。
人々は、身を隠していた場所から少しずつ姿を現し始めていた。
奴隷。
平民。
兵士――。
誰もが恐る恐る、かつて王権の象徴だった城を見つめている。
そして――
その城の中では。
ダヴィが正式に拘束されていた。
かつて絶対的な権力を握っていた王は――
今や、そのすべてを失った。
グラポメディ。
ダヴィの暴政によって支配されていたこの国にも、
ついに変化の瞬間が訪れたのだ。
しかし……
この土地に生きる人々にとって――
本当の変化は、
まだ始まったばかりだった。
(事件から三ヶ月後――アイニルア国境)
(飛龍騎士団・総本部――会議室)
広々とした会議室。
その中央には、一枚の巨大な地図が広げられていた。
そこには各国、都市、山脈、そして街道が記されている。
そして――
地図の最深部。
そこには、一際目立つ赤い円が描かれていた。
『盤古城』
ダムは会議テーブルの最前列に座り、
両手を組みながら地図へと視線を落としていた。
その隣には――
ブラックドラゴンが静かに座っている。
そしてテーブルの両側には、
東・南・西・北――
四つの軍の軍隊長たちが、すでに全員揃っていた。
それぞれ――
東軍隊長――ビスリー。
腕を組み、険しい表情を浮かべている。
右頬には、はっきりとした傷跡が残っていた。
「みんな……本当に久しぶりだな……」
南軍隊長――ロドマン。
大柄な身体。
短い茶髪。
口には煙草を咥えている。
そして――
左腕は、もう存在しない。
「そうだな……俺たちが全員同じタイミングで戻ってくるなんて……珍しいこともあるもんだ……」
西軍隊長――京騰栄次郎。
笠を深く被り、
その傍らには薙刀が立て掛けられている。
「それで……俺たち四人を呼び出したってことは――」
「戦争でも始めるつもりか?」
北軍隊長――ルア。
整った軍服を身に纏い、
穏やかな表情を浮かべている。
しかし――
その瞳には、外見からは想像できない鋭さが宿っていた。
この場にいる唯一の女性でもある。
「どうやら今回は……みんな忙しくなりそうね!」
ダムはしばらく黙っていた。
そして――
ゆっくりと、テーブルの向こう側へ視線を移す。
「……ロドマン」
ロドマンがゆっくりと顔を上げる。
「その腕……」
会議室が――
一瞬、静まり返った。
ロドマンは自分の空いた左袖へ目を落とす。
そして右手で、ゆっくりと左肩に触れた。
「ああ……これくらい、大した傷じゃない……」
「……そうか」
ダムは、それ以上何も聞かなかった。
なぜなら――
その腕が、あの事件によって失われたものだと知っているからだ。
しかし――
傷以上に気になっていることがある。
あの事件以来――
未だに答えが出ていない、もう一つの問題。
ダムの表情が、徐々に険しくなっていく。
「それでは……」
「情報が漏洩した件は……?」
誰も答えなかった。
東、南、西、北――
四つの部隊の隊長たちが互いに視線を交わす。
ブラックドラゴンも、ただ黙って座っている。
ロドマンの表情も、険しくなっていた。
(場面は三ヶ月前――南方戦線)
轟――――!!
戦場の至るところで、爆炎が次々と炸裂する。
「ロドマン隊長! 敵に包囲されています!」
一人の兵士が、慌てた様子で通信機に向かって叫んだ。
「敵軍が左右両側から同時に現れました!」
「何……?」
次の瞬間――
「うわあああああああ!!」
戦場の各所から、次々と悲鳴が上がった。
兵士たちは強制的に乱戦へと引きずり込まれ、
それまで保たれていた陣形は、瞬く間に崩されていく。
ロドマンは目の前の光景を見つめながら、
頭の中で何度も同じ疑問を繰り返していた。
「……なぜだ?」
「今回の作戦を知っていたのは……
軍内部でも、ごく一部の上層部だけだったはずだ……」
それなのに――
敵はまるで、
最初からこちらがどこから現れるのかを知っていたかのように動いていた。
「まさか……!?」
ビスリーが低く呟く。
「一体、どこから情報が漏れたんだ!?」
「危ない!」
ロドマンの瞳が大きく見開かれる。
次の瞬間――
轟――――!!
ドンッ!!
無数の砲撃が、一斉に襲いかかった。
(回想終了――現在)
数秒の沈黙の後、
ロドマンがゆっくりと口を開いた。
「団長……現在も、手掛かりはありません」
「情報に接触した可能性のある者をすべて調べ、
当時の情報の流れも、もう一度確認しました」
「ですが――」
ロドマンは煙を吐き出す。
「それでも……見つからない!」
ビスリーが眉をひそめる。
「つまり――
今も俺たちの内部にある問題は、解決していないということか」
その言葉が落ちると――
会議室は再び静寂に包まれた。
誰も口を開かない。
なぜなら――
もし本当に裏切り者がいるのなら。
このテーブルを囲んでいる全員が、
疑われる可能性を持っているのだから。
ルアがわずかに眉を寄せる。
「でも……もし私たち自身でさえ、
情報がどこから漏れたのか分からないのなら……」
栄次郎が腕を組み、ダムを見る。
「それなら……これからの作戦は、本当に問題なく進められるのか?」
「無理だ!」
ダムは迷うことなく答えた。
全員の視線が――
一斉にダムへ集まる。
ダムは手を伸ばし、
地図の上に描かれた赤い円を指差した。
「だからこそ、この件は引き続き調査する」
「だが――」
指先が、地図へ強く落とされる。
「今は……その問題以上に……」
「目の前の問題を片付けなければならない!」
会議室の空気が――
一気に重くなる。
「この三ヶ月間で、
俺たちは血魔剤の生産拠点を突き止めた!」
「そして――
市場に流通している武器の供給元も判明した!」
「そのすべてが――ここから来ている」
『盤古城』
ダムの目が鋭くなる。
「そして――
かつて地下世界の王と呼ばれた男……」
「帝牙が、ここを支配している!」
ダムの言葉が響いた。
しかし――
会議室の誰一人として、
すぐには言葉を返さなかった。
数秒後。
ロドマンが眉をひそめる。
「待て……」
ゆっくりと顔を上げる。
「今……帝牙と言ったのか?」
「そうだ」
「だが……」
ロドマンの眉間に、さらに深い皺が刻まれる。
「あいつは……もう死んだはずだろ?」
会議室の空気が――
一瞬で変わった。
ビスリーも、しばらく黙り込む。
「それは俺も聞きたい!」
「確か……あいつが死んだのは五年前――」
「帝牙は……あの戦いで死んだはずだ!」
栄次郎が笠を押さえる。
「それなら――」
「なぜ今になって、あいつの名前が出てくる?」
ダムはすぐには答えなかった。
その代わり――
ブラックドラゴンが、ゆっくりと顔を上げた。
「俺は……あいつと直接話した」
「本人に間違いない!」
「帝牙は……生きている」
全員の視線が――
一斉にブラックドラゴンへ向けられた。
ブラックドラゴンは、しばらく黙っていた。
(二ヶ月前――総本部・地下牢獄)
薄暗い部屋の中。
ワッタードは壁際に拘束されていた。
身体には重傷を負っている。
それでも、その顔には――
相変わらず人を不快にさせる笑みが浮かんでいた。
その目の前に、ブラックドラゴンが立っている。
長刀を地面へ突き立てたまま――
「おい! 火を吐くトカゲ!」
「さっさと答えろ――」
「帝牙……本当に生きているのか?」
「一体、何が目的だ!」
ワッタードは答えない。
ただ――
小さく笑い始めた。
「ククク……」
「俺は、あいつが一度死んだことすら知らなかった……」
「俺はただの……商売仲間に過ぎないんでね!」
ブラックドラゴンの目が、わずかに細くなる。
「お前……本当は知っているんだろ?」
「あいつは――」
ワッタードが顔を上げる。
その笑みが、徐々に歪んでいく。
「俺は、あいつの野望を気に入った」
「そして――
あいつの思想にも共感した!」
「だからこそ、俺はあいつと手を組んだ!」
「お前たちは本気で思っているのか?」
「工場を一つ潰して、俺を捕まえただけで――
あいつを止められると?」
「ハハハハハ……!」
ワッタードの笑い声が、さらに大きくなる。
「冗談じゃない!」
「帝牙様は――」
「お前たちが想像している以上に……」
「狂っているぞ!」
ワッタードの手が――
ゆっくりと服の内側へ伸びていく。
「この世界は……」
「もうすぐ――」
しかし、その瞬間。
キィン――!!
閃光のような斬撃が走った。
ワッタードの動きが――
止まる。
胸元から、ゆっくりと血が流れ出した。
ブラックドラゴンが視線を落とす。
ワッタードの服の内側に隠されていた手。
そこには――
一本の血魔剤が握られていた。
『血魔剤』
「……」
ブラックドラゴンの目が、冷たくなる。
「俺は……あいつを止める!」
ワッタードの身体が――
ゆっくりと崩れ落ちていく。
そして――
最後まで語られることのなかった言葉は、
暗い牢獄の中へと消えていった。
(回想終了)
会議室。
ブラックドラゴンは、ゆっくりと視線を戻した。
「少なくとも……」
「帝牙が生きているということだけは……」
「俺は確信している」
ブラックドラゴンの言葉が落ちる。
会議室は、しばし沈黙に包まれた。
やがて――
ダムがゆっくりと立ち上がる。
「……」
その目は、机の上に広げられた地図へ向けられていた。
「ならば――もう迷う必要はない!」
ダムの指が、
あの鮮やかな赤い円へと向けられる。
『盤古城』
「大まかな情報は、すでに揃っている」
「俺たちが今やるべきことは――」
『盤古城を制圧し、帝牙を再び討つ!』
全員の表情が――
一気に引き締まる。
ダムは、その場にいる全員を見渡した。
「だが、その前に――」
「一つだけ、覚えておいてほしい」
「今回の作戦では――」
「俺たちは……互いを信じなければならない!」
誰も口を開かなかった。
「情報漏洩の件……」
「俺は、みんながまだ疑問を抱いていることも分かっている」
「さっきだって、互いを疑っていた」
「だが――
真実が明らかになるまでは……」
「疑うことを理由に、
仲間を否定しないでほしい!」
ダムの声が、徐々に低くなる。
「俺たちは、帝牙が何を準備しているのか分からない!」
「この先、どれだけの犠牲を払うことになるのかも分からない!」
「だからこそ――」
「こういう時だからこそ!」
「俺たちは――
互いへの信頼を失ってはいけない!」
ロドマンは、自分の空いた袖へ目を落とした。
そして――
小さく笑う。
「……分かった」
ビスリーが頷く。
「俺は自分の部下を信じる」
「そして――お前たちも信じる!」
栄次郎は、静かに笠を下げる。
「なら……言うことは何もない」
ルアも、淡い笑みを浮かべた。
「うん……問題ないわ」
ブラックドラゴンは何も言わない。
ただ――
静かに頷いた。
ダムは、目の前にいる仲間たちを見つめる。
「よし……」
「それじゃあ――」
再び地図へ視線を落とす。
「次にやることは――」
「帝牙との戦争だ!」
第十三話、最後まで読んでいただきありがとうございました!
今回は、王都での戦いから三ヶ月後――
物語が新たな局面へと進みました。
そしてついに明らかになった――
帝牙の生存。
さらに、未だに解決していない情報漏洩の問題。
果たして、飛龍騎士団の中に裏切り者は存在するのか。
そして――
帝牙が支配する盤古城で、彼らを待ち受けているものとは……?
次回から、いよいよ大きな戦いが始まります。
レノとエンたちのその後や、
戦いに向けた準備なども描いていく予定です。
ここから『人間地獄』は、さらに大きく物語が動いていきます。
更新には少し時間がかかるかもしれませんが、
これからも一歩ずつ、この物語を描いていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
これからも『人間地獄』をよろしくお願いします!




