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三十二話 サービス終了のお知らせ

 ふとん屋を探しに西へと旅を続けた――


 違うよ?! 快眠アイテム探しが本当の目的で、あと魔王城も見つけられたら良いなって旅だよ!?


 今回も、新しい快眠アイテム『キング・マザー・ゴールド・グースの羽毛』という超貴重なアイテムを手に入れたから、それで思わずふとん屋さんあるかなって探そうかと思っていたのだけれど……


 なんと! ティフィがお裁縫上手だという事が分かりました。そうだよね! ティフィはブラウニーだったものね、家事、洗濯、お掃除なんでもお手のもの、何でも出来ちゃうスーパーメイドさん。


 という事で、日中は西に向けて移動しながら夕方からは屋敷を出して、ティフィには予備で作って貰っていた『クイーン・シルク・スパイダー』の糸で編んだシーツを布団に加工して貰っていた。


 早くお布団を完成して貰いたくて、早めに屋敷を出したりした結果。六日目にティフィから「完成しました」と聞いた時には、思わずティフィの手を取って踊っちゃったわよ。


 クルクル回りながら踊っていて、皆からジト目で見られた時には恥ずかしくなったけど、これでお布団も完成なのよ!


 早速、完成したという羽毛布団を見せて貰う。


 ふぉおおおおおーー!!


 この辺りはあまり寒くならないという事から、夏掛け布団ほどの羽毛の量にしたのだけれど。

 軽くて、ふわふわで手に持ってもまるで重さを感じないくらい。

 

 ジッと羽毛布団を見る。


『「キング・マザー・ゴールド・グースの羽毛」と「クイーン・シルク・スパイダーで編んだ布」で作られた布団。

 最高級ダウンを豊富に使用し、その軽さとは裏腹に睡眠に最適な温度を保ち、湿度を調節する機能を持つ。

 快適睡眠二時間』


「キタっ!」


 快適睡眠二時間! これでトータル九時間になった――


 ポンッ!


 仕様書をみて喜んでいると、久しぶりに新たな通知音が聞こえ仕様書の画面が切り替わる。


『夢乃あかり様


 快適睡眠九時間達成おめでとうございます。

 これまでの夢乃様の苦労が実った結果だと、当方も喜んでおります。


 また急ではございますが、これまでご利用頂いておりました下記サービスに付きましてご案内申し上げます。


 夢乃あかり様の快適睡眠補助サービス「眠りのダイス」に付いて。


 この度は、長期に渡り「眠りのダイス」のご利用ありがとうございました。

 当サービスは、夢乃あかり様が規定の状態をクリアされた事により、サービスを終了とさせて頂きます。


 夢乃様におかれましては、残り一時間の快適睡眠を必ずや達成して頂けるものと信じております。


 夢乃様の益々のご発展とご活躍の程、お祈り申し上げます』


 何これ?


 メッセージを確認した瞬間、マジックバッグから「眠りのダイス」が勝手に浮き上がってきた。


 フワフワと浮かぶ「眠りのダイス」が、空気に溶けるように消えてゆく――


「待って!」


 虚空に伸ばした手に、キラキラとした光だけが残る。


 ボーッとメッセージが残った仕様書を眺めていると、ティフィがそっと私の手を握る。


 そっか、仕様書は他の人には見えないんだね。


 せっかくティフィが作ってくれたお布団なのだから、素直に喜ばないとね!

 眠りのダイスが無くても九時間も眠れるのだから、ホントもうこれは奇跡だよ!


 ティフィをもう一度抱きしめてから感謝を伝え、お布団に包まってみる。


 シーツはシルクのように艶やかで肌触りが良く。中のダウンの柔らかさが体中を包み込む、思わず眠りそうになるけれど――


「ダメダメ! せっかくだから夜にしっかり眠らないとね」


 布団から出ると、ニヤ達のところに戻って夕飯の支度をする。うーん! 今夜が楽しみだ!


 ・

 ・

 ・


『夢乃あかりさん、よくここまで働いてくれました。

 貴女の献身的な務めにより、私への不眠の呪いの効果も薄れつつあります。

 そのお陰で、こうやって夢乃あかりさんの夢枕に立つ事が出来ました。夢乃あかりさん、残りのアイテムを集め、快眠睡眠の聖具として私に供えるのです。

 これま……で……※△……ザ……ザ……』


 何だか変な夢を見た。


 せっかく九時間の睡眠を満喫したかったのに、あの駄女神が出てきて尚且つ最後は何言ってるのか分からなかったし。

 

 モヤモヤしたまま起き上がって朝日を眺める。

 

 今までの……目が覚めたままベッドの中で外が明るくなるのを待つのではなく。

 目が覚めたら明るい朝になっている、なんと素敵な事でしょう。

 

「おはようございます」


 ティフィが洗面用のお水を持って部屋に入ってきた。


「ありがとう、素敵な朝ね」


 不思議な顔をするティフィ。


「ティフィが作ってくれたお布団のおかげで、朝までグッスリ眠れたわ」


 理由が分かったティフィが笑顔で応える。


 余計な事は言わなくてもいい、夢の話しなんて私だけが知っていればいい事。実際、朝まで眠れたのは本当の事だしね。


 顔を洗って、ティフィに手伝って貰って服を着替える。

 この着替えも、初めは自分でやると言っていたのだけれど、ティフィが哀しそうな顔をするので手伝って貰っていたら、今ではすっかり慣れてしまった。


「今朝のご飯は何?」


「パンにサラダ、コーンスープとベーコンですよ」


「好きなものばかりだ、ティフィ大好き!」


 そして、このパンも酵母を使ってフワフワになったパン。私が露店で見つけた果物を使って酵母を作り、パンを作ってみたもの。

 それをティフィが自分で工夫して、さらに美味しく焼いて毎朝出してくれている。


「今日中には次の街に着けるかな?」


 食事をしながら、ルリリアと今日の予定の確認。


「これまでの日数からすると、今日にでも街が見えると思いますよ」


 お布団が早く欲しくて、移動を早めに切り上げたりもしていたので、予定より二日ほど遅れているけれど。どうにか今日中には西の街「ウーエスト」に到着できるみたい。


 さて! 西の街はどんな所かな、賢者の塔は本当に見つかるのかしら?


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