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三十一話 西へ

「西へ行くよー!」


 ルートは幾つかあるそうだ。一旦北へ向かって元の街オーランドから西へ向かうルート。

 このまま北西に海沿いを歩いて、途中から川を遡り西へ向かうルート。


 そして、この川というのがこの国を代表する大河「イエーロ」

 河口付近では対岸が見えないくらい広くて、全長も国を縦断する程の長さだとか。地球でもアマゾン川やナイル川がそんな感じだよね(本物は見たことないけど)。

 とくれば、見たくなるのが人情というものでしょう。


 と言うわけで、私達は海沿いを北西に向けて歩き「イエーロ川」の河口を目指すのでした。


 ・

 ・

 ・


「ほへー」「これが川?」「本当に向こうが見えないニャ」


 四日間、海沿いを歩き到着したのが「イエーロ川」の河口の町「イエーロ」。

 いや、だって町の人がそう話しているんだもの!


「イエーロ川の町、イエーロへようこそ! ヒャヒャヒャヒャ!」って感じなのよ!


 けど、言うだけあって賑わっている。

 川幅の広さもあって、対岸と行き来する船が一日に何隻も到着する。

 そんな人達が集まって、小さな町の規模とは思えないくらい人が多いかった。


 だけど対岸に渡る事が出来ない私達(約一名が水恐怖症の為)は、船には用がないという事で上流へと歩いて向かうのでした。


 二日ほど上流に向かうと、中州を挟んで橋が掛かっている場所があり、そこなら何とか渡れそうだとルリリアも言うので橋を歩いて反対岸へと渡り、そこから改めて西へと向かいました。


 無事に川を渡り終わり、西へと向かいはじめた私達でしたが、そこでキラリと反射する光が目に入りました。


「なに?」


 よく見ると、独特な並びで隊列を組んで飛んでいる鳥。何となくガンに見えたので、ルリリアに聞いてみると。


「あれは……もしかすると、あかりさんの希望が叶うかも知れませんよ」


 やっぱりそうか! 最高級羽毛が取れる鳥『ゴールド・グース』

 そのダウンで作られた布団に包まれると、永遠に眠り続けられると言われるほど。


「行くわよ!」


 私はすぐに『ゴールド・グース』が飛び去ってゆく方向へと走り出した。


 暫く追いかけていると、クルリと旋回を始めて下降を始める鳥たち。


「あそこに降りるわよ!」


 地上に降りたと思われる場所に近づいたので、ゆっくりと歩く。逃げられないように、静かに一歩ずつ。


 草陰に隠れながら、そっと覗いた先に見えたのは――


 池に降りて休んでいる『ゴールド・グース』の群れ。

 パッと見でも百羽以上は居そうな雰囲気。


 だけど……その中でも一際異彩を放っている存在がいる。


「でかい」

「何ニャあれ?」

「あれは鳥ですか?」

 

『キング・マザー・ゴールド・グース』


 頭に特徴的な冠を付けたゴールド・グースの王。

 キングなのにマザーとは? って感じだけれど、マザーグースは親鳥って意味もあるから、一応合ってるのかな?


 とにかく、その『キング・マザー・ゴールド・グース』が池の真ん中にドーンと鎮座している。

 そして何より目立っている理由が……


 他のゴールド・グースが体長四十センチ程なのに『キング・マザー・ゴールド・グース』と来たら、どう見ても二メートルは超えている。


 そんな『キング・マザー・ゴールド・グース』が。

 ――もう面倒いから『マザー』でいいよねっ!


「何であの図体で飛べるのよー!」


 ヒッソリと見ていたのに見つかってしまい。只今絶賛追われています。


「ガァー!!」


 大きな口を開けて、襲いかかってくる『マザー』


 あっ! ダメよ、ニヤが食べられちゃう!


 仕方なく剣を抜き、向かってくる『マザー』に剣を振るう。


 大切な羽毛布団の材料、特にダウンの部分には傷ひとつ付けてはいけない!


 その図体からは想像出来ない程の素早さで襲ってくる『マザー』に剣を合わせる。


 キィン!


 クチバシや爪が鋭く、それに他の『ゴールド・グース』が時々邪魔をしてくるのでタイミングが合わせにくい。


「あかりさん離れて!」


 ルリリアから声が飛んできて、慌てて後方へと避ける。


 パリッ――


 鋭く激しい雷鳴が鳴り響き、その轟音で脳が揺らされ光で視界が真っ白になる。


「――っく」


 暫くして耳と目が慣れてきた頃、目の前には地面に落ちて痙攣している『ゴールド・グース』と、同じく地面に降りて動けないなっている『マザー』がいた。


「あかりさん、今です!」


 ルリリアに言われてハッと我にかえる。


 思わず手放していた剣を拾い『マザー』に向かって走り出す。『マザー』も弱々しくも体を動かしてコチラを睨んでいる。


「その羽毛布団! 置いてゆけーー!!」


 私の願望の全てを込めた一撃が『マザー』の首を切り落とした。


 振り返るとそこには大きな魔石と、山になった羽毛が積み重なって残っていた。

 

 ニヤが痺れて動けなくなっている『ゴールド・グース』にトドメを刺して回っている。こっちは魔石に肉時々羽毛といった感じでアイテムが残る。


 ニヤは羽毛より肉が残った方が嬉しいらしく、拾うたびに尻尾がフリフリしている。


「ルリリアありがとう。さっきの魔法は?」


 マジックバッグに羽毛を入れ終わり、ルリリアとティフィが待っていた場所へと戻る。


「光属性の魔法なのですが、加減が難しくて失敗してしまいました。すみません」


「いえいえ、苦戦していたので助かりました」


「あかりー! お肉ニャ! お昼にするニャ!」


 腹ぺこニヤは、拾ったお肉が食べたいと早速竈門を作って火を起こしていた。


「鳥肉ニャ! 取り敢えず焼き鳥にするニャ!」


 ルリリアの魔法も気になったけれど、ニャが美味しい匂いを漂わせるのでお昼になった。

『ゴールド・グース』のお肉、鳥肉ならではのサッパリした味わいにプリプリ脂の美味しさが塩だけで焼いたとは思えない旨さを醸し出す。


「美味しいニャ!」

「美味しいね」

「美味しいです」

「おいし」


 お昼を食べ終わった後は。


「この羽毛どうやってお布団にしよう」


 やっぱりキチンとした職人さんに作って欲しい。オーランドまで戻ればおじさんに頼んで作って貰えるけれど、戻るのはちょっとね……


 仕方ない、この先の街に向かってそこで腕の良い職人さんが居れば頼む事にしよう。


 んふふー、また楽しみが増えちゃった!

『キング・マザー・ゴールド・グース』の羽毛で作った布団。

 何時間眠れるようになるのかな。もしかしてこれで十時間達成しちゃったりして!?


 私はウキウキしながら、西の街とその先にある賢者の塔を目指すのでした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『キング・マザー・ゴールド・グース』

『ゴールド・グース』の王であり親鳥となる個体。

 その羽毛は保温力に優れ、かつ湿度は逃す構造により快適な環境を保つ。特にダウンは最高級品で高額で取引される。


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