表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/42

二十九話 漁に出る

 朝……目を覚ましたルリリアは、深夜の事を全く覚えていない様子で、何時ものように支度を済ませ朝の祈りを捧げていた。


「何か?」


 私の視線に気がついたルリリアが聞いてきたけれど、私も「あ、えっと……お祈りの邪魔してごめん」と言って部屋を出た。


 皆んなが揃って朝食を食べ終わり、昨日聞いた話が気になったので海の様子を見る為に港まで行ってみたけれど。

 港には、沖合を恨めしそうに見ている男の人が数人と、網を編んでいるおじいさん達の姿しかなかった。


「こんにちは」


 網を修理しているおじいさんに声をかける。


 おじいさんは、網を編んでいる手を止めて私達を見た。


「何か用かい?」


「用というか、魔物が出て漁が出来ないと聞いて。どんな様子なのか聞きたかったのですけれど」


 おじいさんは、私が腰に剣を下げているのをチラッと見て。


「冒険者か……この沖合にある暗礁付近にシーサーペントの群れが集まっておるんじゃ。その辺りが良い漁場になっとるんだが、近寄れんで皆困っておる」


「お前達! そんな事聞いてどうするんだ!?」


 私達がおじいさんに話を聞いていると、離れて海を睨んでいた男の人達が近寄ってた。


「冒険者だとは思うが、海にも出れない冒険者が何の役に立つって言うんだ!」


 何だか苛立っている、冒険者に何かあったのだろうか?


「お前達、いい加減にせんか! お嬢さん達も困っておろうが。それに、あの件とこのお嬢さん達は関係なかろう」


 おじいさんに諭されて、男の人達が舌打ちをして去ってゆく。


「おじいさん、あの件って何ですか?」


 おじいさんは、私の顔を見た後に首を振ってからポツリと話し始めた。


「シーサーペントが出て直ぐに、冒険者ギルドに依頼してシーサーペント退治をお願いしたんじゃ。それから冒険者が何人かやってきてくれてな、腕の立つ冒険者だと言っていたのでワシらも快く受け入れたのだが、何日経ってもアイツらはシーサーペント退治に出ようとはせず飲んでばかり。

 ある日、若者が一人冒険者共に早く退治に行けと文句を言ったんじゃ。そうしたら、アイツらは「俺たちではシーサーペントのいる場所には行けない、誰か舟を出せ」と言ってきた。

 そこで文句を言った若者が舟を出した訳だが、シーサーペントに襲われて舟は沈み、若者は巻き込まれて亡くなってしまった。

 それで、他の漁師達は冒険者を憎からず思っておるわけじゃよ。

 すまんな、不快な思いをさせてしまって」


 そこまで話すと、おじいさんが頭を下げる。


「いえいえ、頭を上げてください。私達は何とも思ってませんから。それにしても、そういう理由なら舟を出してとは言い出せませんね」


 海の方を眺めながら、そんな風に話していると。


「ボクがお舟になろうか?」


 スリリンがフードから飛び出してきてピョンピョンと跳ねながらそんな事を言ってくる。


「スリリン? 船ってあれだよ! あんなに大きくなれるの?」


 港に浮かぶ舟を指差すと、スリリンは大丈夫! と言って海へと飛び込んだ!


ザブーン!


 激しい波音と共に、スリリンの半透明な体が他の舟と変わらないくらい大きくなって海の上にプカプカと浮いている。

 

「すごーい!」「スリリン凄いニャ!」


 褒められて気を良くしたスリリンが、今度は凄い速さで海の上を疾走する。波を掻き上げてまるでモーターボートの様な速さだ。おじいさんも目をまん丸にして驚いている。


「これなら、沖まであっという間だし、シーサーペントにも追いつかれないでしょ?」


 戻ってきたスリリンが、顔だけ出して器用に話す。

 四人が乗っても大丈夫だと言うのだけれど、ティフィはお留守番、それと……


「ムリムリムリムリ!! 水の上に乗るなんてムリ!」


 と、ルリリアが水恐怖症だった。


 仕方がないので私とニヤでスリリンの舟に乗って、シーサーペント退治に出るとしますか!


 そのやり取りをポカンと見ていたおじいさんが。


「お前さん達、シーサーペント退治に行ってくれるのか?!」


「行ってくるねおじいちゃん。私達こう見えて結構強いから大丈夫だよ!」


「そうじゃない! あの沖合の暗礁にはシーサーペントより恐ろしいクラーケンも住んどるんじゃ! 普段は大人しくてワシらが漁をしていても見逃してくれとるが。シーサーペント共が暴れるとクラーケンも怒って暴れるかも知れん! くれぐれも用心しておくれ」


 おっと、シーサーペントと別にクラーケンまで居たとは。

 シーサーペントは大きい個体でも五m程の細長い魚。対して此処に住んでいるクラーケンは全長三十mにもなる大物らしい。

 けど、そんな大物だったらシーサーペントなんて簡単に追い払えるだろうけど、何故出て来ないんだろう……


 そんな疑問は置いといて、私とニヤは準備を終えて沖合に出る。

 港にはルリリアとティフィの他、騒ぎに気が付いた漁師の人達も集まって来ていた。


「さっ、スリリン行くわよ!」


 推進力はスリリンが海水を取り込んで、後方に勢いよく吐き出して進む、何とウォータージェット推進だったよ!


「すごーい!」「すごいニャ!」


 ものすごい速さで沖合へと進み、あっという間に暗礁のエリアへ辿り着いた。


 この辺からシーサーペントが出てくるのかな?


 速度を落として海面を眺めていると、ユラユラと水中から上がってくる影が見えた。


 ザバーン!


 水飛沫を上げながら海面へと顔を出してジャンプするシーサーペントが、次々に現れては舟の周りを囲みだす。


「ピギャーー!!」


「くるよ!」


 ニヤと二人、剣を抜いて待ち構える。

 縁からスリリンの腕が伸びて、私達が海に放り出されない様にしっかり捕まえててくれる。

 

「スリリンも捕まらないように走り回ってね!」


 次々に襲ってくるシーサーペントを、スリリンが間一発ですり抜ける。その隙に剣を振りシーサーペントに切り付けるのだけれど。


「ダメだ、間合いが遠くて剣が効かない」


 舟の中からだとどつしても届く範囲が狭くて、シーサーペントに深手を負わせられない。あまり近付きすぎるとスリリンが怪我するし……


 ガッ!!


「きゃあ!!」「ニャ!!」


 ボンヤリしていたら、一匹のシーサーペントに衝突してしまった。


「スリリン大丈夫?」


 スリリンを心配したけれど、スリリンには怪我はないらしい。それよりも……


 プカリと浮いて反応しなくなったシーサーペント。


「ぶつかった衝撃で気絶しちゃった?」


「ボクがぶつかった時に眠らせたんだよ」


 そうか!! スリリンは『エターナル・スリーピー・スライム』触れた相手を一瞬で眠らせるんだったね!


 シーサーペントにぶつかってもスリリンには何の問題もないと分かり作戦変更、今度はシーサーペントに向かって突進する。


 その状況は、側から見たら暴走事故? 海面に現れるシーサーペントにガンガンぶつかってゆくスリリンは正に暴走トラックだった。


「ピギャーー!」


 ぶつかったシーサーペントが悲鳴を上げて海に浮かぶ。


「よし! あらかた眠らせたかな?」


 プカプカと浮いたシーサーペントを今度はザクザクと刺して倒してゆき魔石と素材の切り身を回収。時々失敗した分が海の底に沈んでゆくけれど、まあ多少は仕方ないか。


 ひたすらその作業を繰り返し――


「やったー! シーサーペント討伐完了!」

「疲れたニャー!」

「帰ったらこの切り身で何か作って貰おう!」

「お魚ニャー!」


 舟の中に一杯になった魔石と切り身を見てホクホクしていると、突然周りの海の色が真っ黒に染まった。


「なに!?」


 ニヤと二人で抱き合って何事かと怯えていると。


「あかりお姉ちゃん、海の底から何か上がってくるよ!」


 とスリリンから警告が!


 ゆらりと海面が盛り上がり、舟になったスリリンの体が浮かび上がる。


「「きゃあーー!!」」


 目の前に、大きな丸い吸盤の付いた腕が出てきた。


 忘れてた! クラーケン!?


 クラーケンの腕に捕まったスリリンと私達は、そのままクラーケンに運ばれて浅瀬の方までやってきた。


 浅瀬まで来ると、クラーケンのその大きさが改めて分かる。全長三十mと聞いていたけど、これ五十mはあるんじゃない? 巨大過ぎてスリリンの舟も豆ツブみたく見える。


 そんなクラーケンが、浅瀬から砂浜にスリリンの舟を下ろす。


「あれ?」


 私達も舟から下りて砂浜に立つと。元の姿に戻ったスリリンがクラーケンに向かって何か言っている。


「えっ? ◯※△? ◻︎◯◯△! ありがとう!」


 スリリンが不思議な言葉でクラーケンと会話。今度は小箱を砂浜に置いて、そのまま海に戻って行った。


「何々、どうしたのスリリン! クラーケンと何話してたの?」


「クラーケンは海の中で卵を守っていたんだって! シーサーペントの数が少なければ自分でやっつけられたけど、数が多かったから困っていたので、やっつけてくれてありがとうって。魔石と切り身も子供達のご飯になるから助かるって。あの小箱は昔沈没した船から拾った宝箱、お礼にあげるってさ!」


 おー、クラーケンが出てこなかった理由は卵があったからかー。あれはお母さんクラーケンだったんだね。


 宝箱と聞いてニヤが小箱に駆け寄る。


「ニャー! 宝箱! さっそく開けるニャ!」


 待ってニヤ! 私も見たい!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ