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十八話 森の教会

 結局、彼女の依頼を受けてスリーピー・ホロウを見つけた森まで案内する事になったのだけれど。


「改めて自己紹介させて頂きます。ドルミール教のシスターでリルルラと申します。こちらの二人は、教会騎士のアルとカル、魔物相手も出来ますが主に私の護衛とお考えください」


 リルルラに紹介されて、爽やかな笑顔で挨拶をしてくる教会騎士のお二人。何故だろう、間違いなくイケメンなのに全く興味が湧かない。


 リルルラも華麗に挨拶をする姿はシスターというより何処ぞのご令嬢か夜の蝶にも思えた。


 リルルラは修道服に防具を組み合わせた独自の服を着ているのだけれど、とにかくある部分が激しく主張しており。移動中の馬車の揺れに合わせて激しく揺れている。


 以前だったらそれだけで嫌悪感を持っていたのだけれど……


 馬車に乗る前。ニヤのマジックバッグからキングオークの毛のクッションを取り出したところ。リルルラも似たようなクッションを用意していた。


 そして、私達のクッションを見て「あら? そのクッションはスライムジェルのクッションとは違うようですね?」と聞き捨てならぬ事を言ってきた。


「私達のはキング・オークの毛を使ったクッションです。リルルラのは……スライムジェル?」


 キング・オークの毛と聞いて少し引いた顔をするリルルラ。そっと私のクッションに手を伸ばし、その程よい固さに何か納得した様子。


 馬車が動き出した時に、お互いのクッションを交換して分かった。スライムジェルは硬めのウォーターベッドなのだ!


 これはこれで良いけれど、少し柔らか過ぎて落ち着かない。こういう馬車移動のクッションにはキング・オークの毛の方が硬めでピッタリだ。スリーピー・ウッドで作ったベッドには是非スライムジェルのマットレスを用意しよう!


 三日間の移動でリルルラともすっかり馴染み普通に話せるようになった。私が眠るための寝具に特段の拘りがある事を知ったリルルラは、特に貴族の間で流行っている寝具。

 その材料になる糸を出す魔物の情報や、布団に使う羽毛の最高級素材となる鳥の魔物の情報など教えてくれて、私の欲しいものリストは満杯になっていた。


 何だよもー、快適睡眠十時間もこの調子なら余裕じゃない!? このままじゃんじゃん魔物を倒して、快眠アイテム手に入れてやろうじゃないの!


 村に到着し、馬車を預けて森に入る準備をする。

 この時、私は少し浮き足立っていたのかもしれない……


 ニヤを先頭に森の中を彷徨い歩く、前回はそこまで出会わなかった魔物が今回は何故か多い。気になったのでリルルラに一度戻ろうと提案するが「スリーピー・ホロウの痕跡を見つけるまで」と懇願され、私も弱めの魔物ばかりだから何とかなるかと先へと進んだのが良くなかった。


 藪から飛び出してきたハウンドウルフに対応している間に、背後に現れた二体のオークの発見に遅れて護衛だった教会騎士の一人が怪我を負ってしまう。


「すみませんリルルラ様、お手を煩わせてしまって」


 リルルラが回復魔法を使ってキズを治そうとするが、何故か魔法の効きが悪い。

 

 仕方なくニヤの回復薬も併用して何とか持ち直した。


  ◯◯◯


 私とニヤがハウンドウルフに対応している間、リルルラは護衛に守られながら後方で私達の事を観察していた。


 その時。背後からオークが現れ、一体がアルを襲撃。もう一体がリルルラに向けて振り上げた棍棒を下ろそうとした瞬間!


「チッ! 守れ!!」


 リルルラが叫ぶと、一瞬だけオークの腕が止まったように見えた。その間に主を庇うようにカルがオークの前に立ち塞がり、棍棒をその体で受け止めた。


  ◯◯◯

 

 カルの怪我もある程度回復出来たものの、体力が低下して村までは戻れそうにもないと、森の中で一晩過ごすつもりで適当な場所を探していたところ……


「なに……これ……?」


 森の中、崖になった斜面の影に建物の姿があった。いや、狩人や木こりの人が何かの備えに小屋を建てるってのは聞いた事あったけど、目の前にあるこの建物は……


「教会?」


 ニヤとリルルラも建物に気が付いて近寄ってきた。


「ずいぶんと古い教会に見えますね」


 建物自体も蔦に覆われてかなりボロボロだ、入り口に張り付いている蔦を切り落として扉を開けると。大きな音と共に扉が落ちた。


「ごめん、大丈夫だった?」


「あかり、気をつけるニャ」


 落ちた扉を避けたニヤがやれやれといった感じで両手を広げる。

 

 中に入ると、礼拝堂だった場所は天井からも蔦が垂れ下がり所々空も見えていた。それでも屋根が無いよりはマシと眠れそうな場所を探す。


 礼拝堂の一番奥、そこにソレはあった。


「どっかで見た事あるような?」


 私は、その像の姿に何となく見覚えがある気がしたのだけれど……


「これは女神ユメリアの像。と言う事はここはユメリア教の教会だったようですね」


 いつの間にか隣に立っていたリルルラがボソリと呟く。


 女神ユメリア!? 最初に白い部屋であったあの駄女神か! そう言えばこの世界にきて、あの女神の教会って見たこと無かったな。


「珍しいですね。ユメリア教は我々ドルミール教が広まった百年程前から廃れていたはずなのに」


 勇者が魔王を倒した後、不眠の呪いをその身に受けた女神ユメリア。その信者もまた呪いの影響を受けて不眠になる事から信者が減り。

 その代わりに台頭したのがドルミール教、現在はこの教会が大きな勢力を持っている。


「この教会は壊れているけれど、百年も昔の建物には見えないわよね」


「ええ、せめて五十年ほどでしょうか」


 二人で建物の様子を見回す。


「向こうに部屋がありそうですね」


 別の扉を見つけたので、私とリルルラで調べてみる事にした、ニヤは晩御飯の用意だ。


 扉を開けると通路があり、奥にはいくつかの扉が並んでいた。


「手分けして様子を見てみましょう」


 特に魔物とかの気配は無かったので室内の様子を調べるのに手分けする事にした。壊れていなくて眠れる部屋があると良いのだけれど。

 

 扉を開けて中を覗く、埃臭い以外はシンプルな作りの部屋。ベッドと机だけが並んでいるのが見えた。


 中に入り机を触ると、長年使われていなかった埃が積もっていた。私は女神に関する物が何かないかと引き出しを開けてみた――


「何もなし」


 が、隣の部屋の引き出しを開けた時に本を見つけた。かなり古い物なのだろうけど、引き出しに入っていた事で劣化を防げたのだろうか。


「あかりさん、そっちはどうでしたか?」


 リルルラがこっちに声を掛けてきたので思わず本をマジックバッグへ入れてしまった。


「こっちの二つは使えそう、掃除は必要だろうけど」


 流石にあれだけ埃まみれだと少し動かすだけで、鼻水出そうだしね。


「そこは私の魔法にお任せ下さい。こっちの部屋も既に対処済みです」


 リルルラさんはクリーンの魔法で部屋の中の埃や汚れをキレイにしてくれた。

 私も覚えたいと言ったら「ドルミール教に入信して、祈りを捧げる修行を続けられますか?」と素敵な笑顔で勧誘されました。


 取り敢えず寝る部屋の確保も出来たので、ニヤの所に戻って食事にしましょう。


 と、二人で元の部屋へ戻ろうとした時――


「ンニャーーーーー!!」


 ニヤの悲鳴が聞こえてきた!


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