十六話 ベッド
お世話になった宿屋のお姉様にも挨拶を済ませて、私達は早々にティフィの待つ屋敷へと引っ越すことにした。
引っ越しといっても、こちらは冒険者。いつでも移動出来るように荷物は纏めてあるし、そんなに荷物が多いわけでもないから移動も簡単なんだけどね。
荷物を持って、屋敷の入り口の門の前でティフィに呼びかける。
「ティフィ来たよー」
錆びた音を響かせて門が動くと、半分だけ開いて止まる。
たまたま通りかかった人がこっちを見て、門が開いたと驚いている。
この様子じゃ、ご近所さんにも挨拶とかした方がいいのかな?
門を通って玄関前に到着すると、そこにはティフィが待っててくれた。
「ティフィ、今日からよろしくね」
「よろしくなのニャ、ティフィ」
ティフィが二人の荷物を持ってくれて部屋へと案内してくれる。前回来た時にお互いの部屋は決めてあったのでそこに荷物を運び。
「前回も話したけれど、後で家具屋さんがベッドを運んで来るから入れてあげてね。この部屋まで運んで貰えたら大丈夫だから」
ティフィが黙ったまま頷く。
客間に戻ってお茶をしていると、来客を知らせるベルが鳴る。と同時に、ティフィも玄関の方へと動き出した。
これ、ベルが鳴らなくても門の前に立ったらティフィには分かるんだろうな。
誰も居ないのに門が開いた事に驚いている家具屋さんが荷車を押して玄関へとやってくる。
「お客様! ご依頼の品を運んで来ました。何処までお持ちしましょう」
家具屋の目は、誰も見た事のない屋敷の中が見られるといった好奇心で溢れていた。
ティフィが荷車の横に立ち「……私が運ぶ」と言って指をひと振りすると。
「「「?!」」」
目の前で大きなベッドが消えた!?
ティフィは家の妖精。
家に関する物ならば、何でも魔法で出し入れ出来るのだそうだ。ただし、一度この敷地に納めた物に限られるので門の外では使えないそう。
ティフィはそのまま寝室へと移動して、ベッドを再び出してセットしてくれた。
屋敷の中が見られなかった家具屋のおじさんのしょんぼりした背中が寂しそうだったけど仕方ないわよね。
寝室に、これまで集めた快眠アイテムも並べて――
「これで、ベッドも完成!」
『スリーピー・ウッド』のベッド
『スリーピー・オウル』のマクラ
『キング・ジャンピング・シープ』の毛布
『キング・オーク』の毛のクッション
快適睡眠の環境が揃ってきたわね。
まだ、マットレスや布団、シーツ類が揃っていないけれど、取り敢えずこの屋敷で使っていたそれらを使ってベッドの形は整った。
んふふー、今夜の睡眠が楽しみだ。
部屋の用意が終わると、ニヤと二人で屋敷の中を案内して貰った。いやー、こんなにたくさん部屋があるだなんて!
私が日本で住んでた一DKのマンションとは大違いだよ、まあ最後は殆ど帰ることも無かったんだけどね。
そう言えば、あの部屋の荷物とかどうなってるんだろ? あー、まぁ両親も親戚も亡くなってたし、適当に処分されちゃってるんだろな。
既に思い出も何も薄れてきている過去の事は忘れて、私はこの世界でいかに快適に眠るか――
一応、あの女神の為にも快適睡眠の宝具集めを追求するけれどね。
寝室にベッドを並べて、その他の準備もオッケー! あとは寝るだけ――なんだけど。
まだ昼間だし、せっかく新しい家に引っ越しだのだから、引っ越しパーティしたいよね。
と言ってもパーティに呼べる相手なんて居ないのだけれど、念のため声を掛けた相手がいる。
その相手とは……
リンゴーン!
入り口の呼び鈴が鳴った。
「来たかな!?」
ニヤと二人で玄関まで迎えに出る。ちなみにティフィは料理やお部屋の準備中。
「いらっしゃーい」
「いらっしゃいニャ」
玄関を開けると、扉の前で固まっている人物が。
「リリアさん? 何で固まっているの?」
「おっちゃんも、何でそんな赤くなっているのニャ?」
・
・
・
「いやですよ、もー! 私は有名なブラウニーのいる家に招待されて緊張していただけですってー」
リリアさんは長年オーランドの街でも有名だったこの家の中に入れるとあって緊張していただけで、対して防具屋のおじさんは、冒険者ギルドで器量良しと有名なリリアさんと一緒だと知ってデレていた。
「それにしても……中がこんなに素敵だったなんて知らなかったです。お二人はこんなお部屋に住めるだなんて幸せですね!」
そうなのだ。ティフィが管理するこの屋敷は、外観こそ古びた感じであるものの。中はとても綺麗に掃除され家具もピカピカ、品の良い調度品などが程よく並んで海外の高級ホテルのような雰囲気になっていた。
「ティフィはお掃除も得意だし、さらにお料理もとても美味しいしね。私達も住み始めたばかりだけど、住む事を許してくれたティフィには感謝しているわ」
私もニヤがティフィを見て感謝を述べると、ティフィがとても綺麗なカーテシーでお辞儀をする。
「おっちゃんは静かだニャ」
おじさんは、ひとり黙々と料理を食べていた。
「一人もんだからな、こんな美味い料理はなかなか食べられない。食える時には腹一杯食っとくもんだ」
おじさんが、何とも品のない言葉を吐きながら美味い美味いと言って食べている姿には、ティフィも満足そうに微笑んでいた。
「そう言えば、王都にあるドルミール教会からこの街に大司教が派遣されてくるらしいですよ」
「何だよ大司教って、いまこの街にいたのは司祭だったよな? 何だって司教飛び抜かして大司教なんだ?」
それは……と言い淀んだリリアさんが私の顔をチラッと見る。
それを見たおじさんも「ああ」と何故か納得顔。
何ですか?! 私、何もしてませんよね!?
それなのに何でそんな顔で私を見るの?!
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『スリーピー・ウッド』のベッド 快適睡眠x2時間
『スリーピー・オウル』のマクラ 快適睡眠x30分
『キング・ジャンピング・シープ』の毛布 快適睡眠x30分
『キング・オーク』の毛のクッション 快適睡眠x30分
快適睡眠、合計3時間半
新しいお家に新しいベッド、快適睡眠の環境がどんどん揃って来ました!
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