十一話 ニヤの一日
「う〜ん、むにゃむにゃ」
あかりが部屋を出て行った事にも気づかず、朝の微睡を堪能していたウチだったニャ。
あかりのこのベッドは最高だニャ。
たくさんの高級なアイテムが使われていて快適に眠るための環境が揃っているニャ。
おかげでこのベッドで眠るのは、依頼を受けない休みの前の日だけと決められているニャ。
今日も、スリーピー・オウルの羽根で作ったマクラが、キング・オークの毛とキング・ジャンピング・シープの毛で織ったクッションが、ウチを起こしてくれないのニャ!
こんなにベッドが快適だと、あの頃を思い出すニャ。
ウチがまだ小さくて、おニィやおネエが一緒に寝てくれていた時……
「ニヤは可愛いなあ」
「当たり前ニャ! 私の妹は一番可愛いのニャ」
「何言ってんだ? 一番可愛いのは俺のニヤだ!」
「おニィ、おネエ。どっちもニヤニャ」
「「そうだな、どっちも二人のニヤだ!」」
同じ布団に入って、他愛無い話しをしながら寝るのが楽しかった。
妹達が出来てからは、おニィは一緒に寝てくれなくなったけれど、おネエはお話ししてくれたり、添い寝してくれたりしてたニャ。
「ニヤーッ!」
村を魔物が襲ったのは、ウチが八歳になった時だった。
両親は、村を襲う魔物を倒すために武器を持って出て行き、おニィとおネェがウチと幼い妹達を家の中で守ってくれていた。
バキバキバキバキ!!
家の戸を破壊されて、中に入ってくるオーガ達。
布団の隙間から見たオーガの目が、コチラを睨んでいたのを思い出す。
「ニヤ、走って逃げろ。村外れの祠の裏穴、アソコまで走って逃げるんだ!」
「嫌っ! おニィ達と一緒がいい!」
「ニヤ!! おネエも妹達を連れて追いかけるから、お前だけでも先に逃げるんだ!」
おニィとおネエが私を先に逃し、後から追いかけてるくると言ったのを信じて思い切り走った。
その頃から足だけは早かったから、小さくてオーガにも見つかり難かったウチは、おニィに言われた祠の裏穴に入り込むと小さくなって震えながらおニィとおネェがやって来るのを待った。
翌日、誰も来なかった。
二日後、まだ誰も来ない。
三日後、お腹が空いた。
四日後、あまりにお腹が空いてフラフラと祠の裏から這い出した私は、信じられない光景を目にした。
火の手が上がり、煙が燻る村の建物。
誰もいない、おニィもおネェも、村の人も、オーガの姿も全てなくなっていた。
「ウチ、ちゃんと待ってたのに! おニィが待ってろて言うから、おネェが必ず行くからと言ったから待ってたのに!」
皆んなの家の燃え尽きた瓦礫の前で泣いて、泣き腫らした。
気がつくと、オーガの襲撃を知った冒険者の人に拾われて、街へと連れてこられて孤児院に入れられた。
十三歳になってウチも冒険者になった。
それから数年、Cランクになったウチはあの村へ行ってみた。
もう何の残骸も残っていなかった。
ふと、あの祠のあった場所へと行ってみた。
そこに……
「これは……おニィ? おネェ?」
昔、私に作ってくれた藁のお人形、その朽ちた物が祠に備えてあった。
おニィとおネェも来てくれたんだ……だけど私が居なかったから!
辺りを見回した、大声で名前を呼んだ、けど誰からも返事はなかった。
だけど!
きっとおニィとおネェは生きている!
生きてきっと何処かで生活している。
私は、朽ちた人形を手に取ると、代わりに着ていた服の端で作ったお守りを置いて帰った。
いつかおニィかおネェがまたここに来た時に、ウチも生きているよって、ウチも生きて冒険者として元気にしていると分かるように。
きっとまた会いに来てねって!
・
・
・
懐かしい事を思い出した。
「ただいまー」
外からあかりの声が聞こえた。
「ニヤ起きてる?」
部屋のドアを開けてあかりが顔を覗かせる。
「美味しいおやつ見つけてきたから、一緒に食べよ! 早く降りておいで!」
いま、ウチは幸せニャ
おニィやおネェ、妹達には会えていないけれど。
この家で、あかりとティフィと一緒に生活している。
街でも色んな人と仲良く過ごせてる。
兄妹の事も時々思い浮かぶけれど、今は幸せニャ。
きっといつか探しに行く、もしかしたら兄妹で会いに来てくれるかも知れない。
そう思って今を精一杯元気に過ごすニャ!
「ニヤー? 来ないと全部食べちゃうよー?」
「ダメニャ!? ウチも食べるニャ!」
そういうわけで、ニヤは元気ニャ! おニィおネェ、妹達をよろしく見守っててニャ!
あかりのバディ、ニヤのほのぼのとした一日と過去のお話しでした。
これから二人で活躍してゆく姿を楽しんで頂けたらと思います。
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