とある小説のあとがき
「身の丈に合わない賞を戴いた」というのがマキシマム文庫大賞受賞を知った際の感想でした。
応募する際は大賞受賞することを妄想していましたがあくまでもそれは妄想で現実には起こらないことだろうとも思っていました。ですから出版されることが決まり自身の作品が世に出て書店様や通販サイト様に並ぶことを想像すると自分は今長い夢を見ている最中ではないのか、ふとした瞬間にこの夢から覚めて原稿を賞の投稿フォームに打ち込む瞬間に戻されるのではないかと不安に怯える日々が続いておりました。ですが今こうしてこの作品ををあなたに読んでいただいているということは「これは夢ではない」という証人になっていただいたということになります。
小説というのはファンタジー、ミステリー、ホラー・オカルトなどいくつものジャンルがありますがその物語はいづれも作者の経験に基づいた着想によって紡がれていきます。超常現象的な力が全く存在しない日本を舞台とした本作品ならば作者の経験や思考がとりわけ透けて見えるのではないでしょうか。創作とは自分を曝け出す行為ではありますが出版され不特定多数の方に自身の作品を読んでいただくというのは差し詰め全裸で往来を歩いているかのようなものでしょうか。嬉しくも非常に気恥ずかしいものがあります。そこで気持ちの切り替えといいますか発想の転換とでもいいますか執筆する際は全裸になるというルーチンを行うようになりました。まずは形から、自身の内面を曝け出すのならもういっそのこと外面まで曝け出してしまうべきだというわけです。これが効果覿面で目に見えて作業効率が上がったように感じております。
最後になりますが出版するに当たって有形無形の多大な援助をしていただいた方々、そして読者であるあなたにこの場で感謝を述べさせていただきます。
早蕨 倫




