ちょっとしたハプニング
「う……うーん」
目を開けると視界がぼんやりする。はっきりとしない視界が急に暗くなる。
「お目覚めですか?ご主人様」
だんだんとはっきりとしてきた視界に映るのは、僕をのぞき込む野風だった。
「野風何をしてるの?」
「はい?ご主人様の看病ですが、ご迷惑でしたか?」
いや、迷惑かと聞かれると……。確かに僕の頭の下にあるやわらかい感触が絶妙に気持ちいいとか、下から見上げた時の大きな双丘が眼福であるとか、野風の顔がきれいだとか、そういうことを考えてるわけではなくて、その、単純に看病してくれてうれし………って僕はなにをこんなに言い訳しているんだ。
「いや、迷惑ではないよ。むしろまたしてほしいくらいだよ」
この際正直に言おう、誰だって嬉しいだろう?僕だって男なんだ。たかがゲームって思うかもしれないけど、ほんとにリアルなんだからね!
「そうですか、お申しつけてくださればいつでも致しますよ」
そう言いながらクスリと笑う野風の表情に少しドキッといたのは内緒だ。
「ところでグラン、僕はどれくらい気絶してた?」
僕は内心を隠すために近くで横になっていたグランに話を振る。
(
ふむ、大体三十分程度だな。どうだ体のほうは?)
そう聞かれて体を起こして動かしてみるが、どこも異常はみられなかった。
「うん、大丈夫かな。ところで最後のあれは何だったの?」
(それに答える前に少し聞いてもよいか?)
「まあいいけど、どうかした?」
(主は戦いについて何かしていたのか?)
「あぁ、そのこと。やってたよ。僕は武術の中でも刀術、つまり刀を使った戦闘スタイルが基本だね。でも他のこともある程度はできるよ。」
(ふむ、やはりか。戦い方が様になっていたからな。しかし、対魔物という点では少し勉強が必要だな)
「うん、それは僕も思ったことだったかな。今回の戦いは貴重なものだったよ」
(それで主が聞きたいことは、主との戦闘で最後に使ったものだな?)
そう、それだ。僕は最後の時何をされたのか全く分からなかった。これは戦闘において危険だ。知らないものがあればそれだけ敗北することが増える。そういった意味でもこのことについてはしっかりと知っておきたい。その意味では今回がグランとの模擬戦でよかったとも言える。
(我が最後に使ったのは、魔法だ)
「魔法?」
そういえばあったなそういうの。完全に忘れていた。
(そう魔法だ。その中でも固有魔法に属するものだな。効果は全てを飲み込み無効化するというものだ)
「ブラックホールみたいなものか」
しかし、そんな魔法があるのか。何だかずるい気もする。
(まぁこれは我にしか使えないものだからな。普通の魔法にも同じようなものはあるが、性能はかなり低いからな)
それはそうだ。こんな魔法をプレイヤーが使えたらそれこそバランスが崩れかねない。
「ところでご主人様、レベルが上がったのではないですか?それにスキルも手に入っているかと思われます」
確かにあれだけ濃い戦闘だったのだ、レベルが上がっていてもおかしくはない。
さっそくレベルとスキル確認するためにウィンドウを開く。
「……レベル十三?上がりすぎじゃないか?それにスキルもとれたのか」
ウィンドウに表示されていたレベルは十三。始めはみんなレベル一であることから相当上がっている。レベルはこんなに上がりやすいものなのか少し疑問を感じる。
これには訳があった。
本来レベルを上げるためには既定の値がおよそ決められている。一般には知られていないが種族や戦闘の濃さなど複数の要因がある上で得られる値が決まる。さらに格上であればあるほど得られる値も大きくなる。
ここでハルの場合を考えると、グランはどう考えても格上の存在。さらには、戦闘においては実際に当たってしまえば無事では済まないような攻防であったため、内容は非常に濃い。さらに種族の神は他の種族と比べて非常に成長しやすくなっている。
以上のことから今回の戦闘においてレベルが大幅に上がった理由は明らかである。
「スキルは、っと、意外にとれたな」
スキルの欄をみると意外にスキルがとれていた。
感知:敵の存在や殺気を感知する。範囲などには個人差がある。
殺気:殺気を出すことで相手をひるませたり場合によっては戦闘不能にすることも可能。
瞬歩:一瞬で一定の距離を詰めることが可能。
刀術:刀を使用するスキル。
「へぇ、結構便利だな」
スキルの説明を見ていると下のほうに種族スキルという文字があることに気づく。
「グラン、この種族スキルってさっきのグランが使ってた固有魔法と同じようなもの?」
(ん?そうだな、種族スキルはその種族固有のスキルだな)
グランの答えを聞き尚更興味がでた僕は、スキルの概要欄を見る。
種族スキル…神化:一時的に神として降臨する。
「うーん、なんか想像できないな。説明が曖昧過ぎてピンとこない」
こうなったら実際に使ってみるしかないか。
何だろう、いざ使ってみようと思ったら少し緊張してきた。やっちゃダメって言われたことをやろうとしているときのドキドキ感と似ている気がする。
「まあいいか、とりあえずやってみよう。『神化』」
とたんに辺りを光が埋め尽くす。いきなりのことにグランや野風が慌てる。
(なにがおきた?!)
「わ、分かりません。しかし、ご主人様がなにかしたとしか」
光が収まる。
収まった光の先にいたのはSSSランクをして高次元としか言えない存在だった。
その存在を確認したと同時にグランと野風はその場にひれ伏す。
その高次元の存在はそこにいるだけで万物をひれ伏させるだけの圧力を放っていた。その圧力は、声をだすこと、動くこと、息をすることさえ許されないと思えるほどだった。
「グラン、これが神化なのか?」
(お、おそらく、そうです)
「そうか、ところで今俺と戦ったらどうなると思う?」
(恐れながら、今の段階では私が勝つと思われます)
「ふん、そうか。まあレベルも低いことだしな。それにしても、野風少しこっちに来い」
「は、はい」
ハルに呼ばれた野風は圧力に押されたのか、はたまた高次元の存在に酔ってしまったのかおぼつかない足取りでハルに近づいていく。
「野風、お前は綺麗だな」
「い、いえそんな……」
近づいてきた野風にハルは一言言うと、野風は恥ずかしいのか頬を朱に染めながら視線をそらす。
そんな野風に嗜虐心をくすぐられたのか、野風の耳元に顔を寄せ
「お前を食べてしまいたいくらいだ」
それを聞いた野風はバッと顔を離し主人であるハルを見る。その顔はリンゴのように真っ赤である。
野風の顔をみたハルは何を思ったか、いきなり野風の耳を触る。
「っな、なにを……あっ、んっ…ひゃん…ん、はぁ…んあっ!」
容赦のないハルの手に腰が砕けてしまった野風は、地面にへたり込んでしまう。
「…はぁはぁ、んん……ひゃっ」
乱れた呼吸を整えて、落ち着かせようとしていた野風にさらなる追撃があった。
視界が暗くなったと思ったらいきなりハルがのしかかってきて押し倒されたのだ。
「ご、ご主人様、そ、そのまだ早いといいますか、その、いえご主人様が望まれるのでしたらその……」
野風はもはや受け入れOKですと言わんばかりに目をつぶる。しかし、待ってもハルが動く気配は微塵もない。不思議に思った野風は瞑っていた目をひらき、ハルの様子をうかがう。
「あ、あのご主人様?」
声をかけても返事のないハルに流石に違和感を感じ、体を起こすためにハルをどけてみる。
「スゥ……スゥ……」
(どうやら寝ているようだな)
「ふふ、そのようですね」
(完全に遊ばれたな野風よ)
「そうですね、しかしあの状態では仕方のないことだと思います」
(確かにな、しかし主のレベルであれだけの強さとは恐れ入った。それにまだまだコントロールできていない様子だったな。当分は使わないようにする他ないだろう)
「そうですね」
そう言いながら二人は先ほどまでのことを思い出す。
(野風よ何赤くなっとる)
「い、いえ。ですがやはりご主人様はかっこいいなと。いつもの優しいのも良いですが、今日みたいに強引なのも…」
そんな野風をみて苦笑するグランは思う
(これからどれだけ強くなるのか楽しみだ。願わくはあの方の助けになればいいのだが)
いつも一人称が僕のハルくんが俺と言っていますねぇ
これは間違いではないので気にしないでくださいね
それと!久々にブックマークを見てみると200件以上に増えていてびっくりです!
これからもNLSをよろしくお願いします
まだの方もしていただけると励みになります!
ではまた次回お会いしましょう




