新たなる生
さて、と。
あたしは紫黒に目配せする。何するかは前もって説明してあるし。
ひとつ頷くと、讃美歌を詠いはじめた。
それによって、ここら一帯が神域になる。
そしてあたしも、魔術を詠いはじめる。
そう。長い文を詠いながら魔術として編み上げていく。
神々が使うものと同じ、創成のための魔術。
神域の中が魔力であふれ、そして爆発した。
もちろん、あたしも紫黒も無傷だけど。
あたしの腕のなかにいたリリスは、その姿を変えていた。
幼い、一歳くらいの女の子。
まあ、リリスって名前から男の子になったらたいへんかなー。
(うまくいったみたいだな)
「とうぜん。そのためにあの短剣作ったんだし」
あたしがリリスの胸に刺した短剣。
あれは、あたしの魔石で作ったもので、魂を固定化するための魔道具でもある。
あれで魂を固定し、肉体を新たに構成しなおす。
魂に刻まれた記憶も封印する。
これでリリスは新しい人生を、今度こそ幸せに過ごせるようにする。
そのための努力はこれから始める。
(終わったのなら、戻ろう)
「ん。だね」
あたしは再び魔術で創国の町の外に跳ぶ。
……さすがに町中には跳べません。
上空にはまだ長さんがいた。
あたしたちは急いで長さんのしたのあたりまで移動する。
「キキョウちゃん! 大丈夫⁉」
あわててマリーが駆け寄ってくる。
「もちろん。大丈夫だよ。……なんかそっちの方が大変だったみたいだね」
みると町中のあちこちが壊れている。
「まあな」
トキワ、シオン、コスモスちゃんが近づいてきた。
「キキョウたちがいなくなったあと、不定形の魔物が現れたんだよ。感覚から魔族が産み出したものだと思う。それが僕たちや兵の人たちをおそってきてね。ついさっき片付けたところだったんだ」
ああ、それはあれだな。
「魔族って、自分のからだの上に、魔力で作った殻をかぶって変身していたみたいなんだ。魔術消去の結界で、いったん剥がされたその魔力が結界がなくなったことでもう一度実体化しちゃったんだと思う。……ごめん。あたしのミスだね」
まさかそんな置き土産があったとは……。
「気にしないでください。このことは誰にもわからなかったことですし、最初から避難はすんでいましたから、兵士さんたちの一部に怪我人が多少出ただけですんでいます。私たちはけがもありませんでしたから」
「うん。コスモスはずいぶん活躍してたからね」
「……そんな」
うん。いちゃつくのはあとでね。
だけど、不定形の魔物で点の攻撃をする銃の攻撃は、あまり効果がないような気はするけど、うまく当てられればほかに被害は出ないしね。魔術と違ってあるいみ狙いやすいし、属性をつければ不定形でも十分なダメージを与えることは可能だったってことか。活躍したってのもわかるわ。
「それで、その子は?」
まあ気になるよな。
「この子はリリス。これから、あたしが面倒を見る予定の子だよ」
「……」
みんな顔を見合わせてる。うん。なんとなく見当ついてるか。
「大丈夫、なんだな」
「まったく問題ないよ」
「ならいい」
「そうね」
うん。これで神様の依頼も終了だな。
(なら、帰って休もう。なにをするにも今は頭と体を休めた方がいい)
疲れた感じはなくても、一眠りはした方がいいか。
ほかのみんなはほんとに疲れてるみたいだし。
「じゃ、帰ろ」
あたしの肩にいつもどうり黒羽が停まる。
紫黒には長さんが、シオンにはカラスさんが停まって毛繕いを始めてる。
マリーはあたしの腕からリリスを引き取って、ほおずりしてるし、コスモスちゃんも頭を撫でてる。
その様子を微笑ましく見つめながら、みんなで城に戻った。




