魔族との闘い
なにもない平原。
結界もナシ。
というわけで、魔族の子は本領発揮とばかりに襲いかかってくる。
町中での動きから、もともと身体能力が優れてるのはわかってる。
いまはそれに加えて、自身の能力である変身の力を最大限に使ってるよう。
不定形になってて、触手で攻撃してきてる。スピードも速い。大きさはあたしより少し大きいくらいで常に動き回る。
どうやら余剰分は魔力を物質化したものらしく、いくら攻撃しても意味ないよう。ときどき、紫黒のほうにも攻撃はいってるみたいだけど、こっちもうまく捌いている。
って、ひとのことは言えないか。
あたしも至近距離ですべて捌いてるわけだし。
正直これくらいのスピードならたいしたことない。
ときどきやってる紫黒との組手の時の方がスピード速いし。
動体視力には自信あるし、身体能力も魔術で補える以上、避けるのは難しくない。ってか、これで大体6割の力しか使ってないし。
いやー。ほんとあたしって規格外だね。
って自分に呆れてる場合じゃないか。
「なぜ、当たらない!」
「いや、これくらいたいしたことないし」
「ふざけるな!」
スピードをあげてくるけど、そのぶん攻撃は軽くなったか。
……じゃそろそろいこっかな。
『魔力消去』
「な!」
一瞬、局地的になら、魔道具なしでも魔力を消すことはできる。
本性に戻った瞬間、間合いを詰めて首筋に太刀を当てる。
「勝負あり、だな」
ふん、と魔族は鼻で笑う。
「いったはず、我を滅ぼせるのはかみ。あなたにはできない」
「……なぜ、滅びを望むんだ?」
たぶん、魔族の望みはこれで間違ってないはず。
「なぜ、だと? 当然だろう。永遠の孤独など誰が望む? 他の者を滅ぼしたのに、なぜ我だけが生きている? なぜ、神々は我も滅ぼしてくれなかったのだ!」
孤独、か。寿命がなく、死もなく、永遠を与えられて滅びを望むか。
「……できなかったんだよ。君は罪を犯さなかった。なにもせず、その場での負の感情を探して得ていただけで、負の感情を自分で作り出そうとはしなかった。他の魔族と違ってね。だからこそ、滅ぼすことなどできなかった。それに、ただ一人とはいえ元の世界から共にきた存在を消したくなかったというのもあるだろうね」
「……」
罪を犯さないものを裁くことなどできないからな。
「……君は神に成る気はある?」
「! なにを!」
「神になれば、神々と共に在ることができる。孤独ではなくなると思うけど?」
この子を救うための方法のひとつ。
もともとあたし自身、神になれるといっていた以上、この子が神に成ることも可能だろう。
「我は滅びを望む。神々に伝えろ。我を滅ぼせ、と」
そっか。ならばもうひとつの方法をとるか。
「ならば、魔族でなくなる気はある?」
「は?」
まあその反応は当然だな。
「あたしは君を魔族ではなく、ひとに変えることができる。さて、どうする?」
「はい⁉」
呆然としてるよ。まあ、これこそ神の御技ってやつだろうし。
でもできちゃうんだよね。この世界の魔術の法則を完璧に理解できちゃってるあたしには。
「どうする?」
「……そうすれば、寿命も来るし、死も在るということか?」
「望むなら、記憶も消せるよ」
「……なら頼む。孤独の記憶はいらない。魔族であることもいらない……」
「わかった。叶える」
あたしは懐から短剣をだすと、その子の胸に刺した。
「訊いていい? 君の名前は?」
「我は、リリス……」
「そうか。それじゃおやすみ、リリス」
「うん」
リリスは静かに眠りについた。




